『8K』はいつ普及する? フルHDの16倍高精細な次期規格の魅力と課題

「8K」はいつ普及する?

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。本連載はこうした用語の解説記事だ。第8回は「8K」について。世間では4K TVの普及が進み始めたところだが、ハイエンドな世界ではすでに8Kに突入する準備が始まっている。超高解像度の世界について紹介しよう。

8Kに至る長い長い解像度の歴史 

 話はアナログ時代のカラーテレビ放送に、ブラウン管の走査線(縦方向の解像度)が525本(NTSC)・625本(PAL/SECAM)だったことからスタートする。これをさらに高解像度化しようという動きが1960年代からスタートし、1980年代に日本のNHKが「アナログハイビジョン」として実用化した。この時の走査線数は1125本だった。

 この後、世界的に高解像度TV(HDTV:High definition television)の規格を決定する際に、コンピュータ用ディスプレイとの親和性なども考慮されて高解像度放送(HDTV)のアスペクト比(縦横比)を16:9とし、横方向の解像度を1920ドット、縦方向の解像度を1080ドットとすることが決まった(走査線数は1125本)。ちなみにHDTVに対する「標準画質」を「SDTV」(Standard definition television)と呼び、こちらは720x480ドットと、DVDビデオの解像度に相当する。またHDTVにはやや低解像度な1280x720ドットの規格があるのだが、区別のために1280x720を「HD」、1920x1080を「フルHD(FHD)」と表記することがある。

解像度の解説図

 ところで、よくFHDのパネルの解像度を表記するのに「1080p」とすることがあるが、これは縦方向の解像度である1080と、画面の書き換え方式である「プログレッシブ方式」(全体を一度に書き換える)を表す「p」が加わったものだ。これに対して以前は「インターレース方式」(半分ずつ画面を書き換える)を表す「i」を加えた「1080i」という規格もあり、実は地上デジタル放送は1080iの信号で送受信されている。これは放送の際に帯域を節約しつつ素早い書き換えで動きの滑らかさを実現するための手法で、ブラウン管との相性もよかったのだが、画面書き換えがプログレッシブ方式である液晶パネルが一般化したこともあり、表示方式としての1080iは廃れていった。ブラウン管が廃れた今、現在は「p」の表記にはほとんど意味がないものの、なんとなく慣例で使い続けられている。

 さて、高解像度放送の規格が決まろうとしている頃、NHKはさらなる高解像度化を目指して「スーパーハイビジョン」の開発をスタートさせていた。この時の目標は「人間の視覚能力の限界を超える」といったものであり、走査線を4000本クラスにすることを決定。これが国際的な企画となって「UHDTV」(Ultra-High definition television)と呼ばれるようになった。UHDTVは垂直解像度が2000本クラスの「4K UHDTV」と、4000本クラスの「8K UHDTV」に分かれるのだが、ここでようやく「4K」「8K」という単語が登場した。

 これは、それまでの規格で注目されていた縦方向の走査線数ではなく、横方向の解像度に着目した表記として登場したもので、4Kの場合3840ドット=およそ4000ということで4000=4K(K=キロ)という表記になった。4K=3840x2160ドット、8K=7680x4320ドットだ。おそらくはデジタルカメラの画素数で「M(メガ)ピクセル」という言い方をするのを見て、消費者向けとして、これに似たキャッチーな表現を考えたのではないかと考えられる。

 4K・8Kに対して従来のFHDは1920︎=およそ2000ということで「2K」と呼ばれることもあるが、これにはQXGA(2048x1536)やWQHD(2560x1440)、WQXGA(2560x1600)なども含まれ、範囲としては曖昧だ。また3Kパネルもあるにはあるが、マイナーなので実質ほとんど使われていない。2K〜3K前後についてはスマートフォンの超ワイドパネルがその大半と言っていいだろう。

 PCでは4Kのコンテンツをフル表示しながら操作用インターフェースが表示できるということで、ハイエンドな編集環境向けに4Kを超えた「5K」(5120x2880)や「6K」(6016x3384)のディスプレイが登場している。なお、横方向だけ4Kで、縦方向はFHD並みというウルトラワイドディスプレイというのも登場しているので、注意が必要だ。

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