「男女の恋を追いかける」はもう古い? 2022年の恋愛番組はどうなる? 恋愛番組座談会【2021年版・後編】

2021年恋愛番組座談会【後編】

 男女の共同生活やデートの様子を観察し、揺れ動く恋模様を追いかける「恋愛番組」。昨今はSNSを中心とした出演者に対する誹謗中傷の問題、コロナ禍での撮影の難しさから模索する状態が続いていたが、2021年からは少しずつ変化が訪れている。リアルサウンドテックでは、様々な媒体で恋愛番組についてのコラムの執筆、出演者へのインタビューなどを行っているライター陣、Nana Numoto、佳香(かこ)、於ありさと座談会を実施。前後編にわたって2021年の恋愛番組市場を紐解いていく。

『バチェラー・ジャパン』“複数人とのキス問題”は黄皓以外は不可能? 2021年恋愛番組座談会【前編】

『オオカミには騙されない』シリーズ人気の訳とは?

ーー新作だけでなく、シリーズものの作品も含め、改めてみなさんが感じた2021年の恋愛番組の特徴を教えてください。

佳香(かこ)(以下、佳香):単純に男女の恋愛を追いかけるリアリティーショー よりも『私たち結婚しました』(ABEMA)『18禁の恋がしたい』(Paravi)などドラマ仕立てのものなど、演出ありきの作品が増えた感じはしました。

Nana Numoto(以下、Numoto):たしかに。心理戦というか、ゲーム性が強くなりましたよね。視聴者側も観察するという視点から、考察するという見方に移り変わりつつあるのかも。ドラマも最近でいうと『真犯人フラグ』(日本テレビ)や『最愛』(TBS)などSNSで考察が話題になるようなものが人気ですしね。

於:恋愛番組は、誹謗中傷を引き起こしやすいことから、最近は「演出ありきです」ということを作品そのものが打ち出すようになりましたよね。視聴者が増えたことで本気で信じてしまう人が出てきて、誹謗中傷の増加にも繋がったと思うんですが、作品自体が演出を盛り込むことで本気で叩く人は減った気はします。

ーーなるほど。それはたしかにそうですね。そこをちゃんと気を付けて番組を作っているんだなという制作側の意図は感じます。

Numoto:恋愛番組を単に消費していくというよりかは、育てる・守る姿勢も感じます。ABEMAでは恋愛番組の出演者が今度はABEMAのドラマに出ていたりだとか、ほかの番組のゲストに出ていたりだとか、コンテンツ内で人材を育てて、ABEMAから人気をつくっていく仕組みがあります。それは愛があるなと思いますね。

ーー先日ABEMAの2021年度の年間総合視聴ランキングが発表され、1位に『恋とオオカミには騙されない』(以下、『恋オオカミ』)、3位に『虹とオオカミには騙されない』(以下、『虹オオカミ』)と『オオカミ』シリーズが圧巻でした。今年から『オオカミちゃん』『オオカミくん』と以前は明かされて「オオカミ」の性別が伏せられるようになりましたが、このルール変更についてはみなさんいかがでしたか?

Numoto:メンバー全員がより一層疑心暗鬼になってて、良くも悪くもぐちゃぐちゃになったんじゃないかなって。これまでのオオカミは序盤で良いなと思った人に最後まで一途で想い続けるパターンが結構ありましたけど、今年からは全然なかったですね。

ーー中間告白後のどんでん返しがすごかったですよね。

Numoto:『恋オオカミ』のTakiちゃんとそら(井上想良)くんとか。中間告白前はあんなに良い感じだったのに……。

佳香:たしかに。すごく素敵でしたよね。

Numoto:『恋オオカミ』は最後に「裏切られた!」と強く思いましたね。男女どちらにいるか分からなくなったことで、好かれれば好かれるほど疑ってしまう気がします。不信感と恋のせめぎ合いになってました。

佳香:恋愛要素ももちろんありましたけど、心理戦の要素がより強くなった気がする。「オオカミどっちにいると思う?」って話し合う回数が増えてましたよね。

Numoto:あとは女性同士、男性同士で結託しなかったこともある意味新しい風でした。だからこそTakiちゃんとちょこ(りゅうと)くんみたいな男女の友情もありましたし。

ーー今年は『恋愛ドラマな恋がしたい~Kissing the tears away~』(以下、『ドラ恋』)ではアユリ(吉永アユリ)ちゃん、『虹オオカミ』はTakiちゃんと「継続メンバー」が増えましたよね。

於:『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)『恋する♥週末ホームステイ』(以下、『恋ステ』)などの高校生が主役のコンテンツは「継続メンバー」がルール化していたりしますよね。『恋ステ』はうたなちゃんが3連続で出てましたし、『今日好き 花梨編』は継続メンバーが6人もいて。

Numoto:『テラスハウス』(フジテレビ・Netflix 以下、『テラハ』)もせいな(島袋聖南)さんは登場回数が多かった。恋愛番組の中で光る才能を持っている、タレント性を持っている人は、番組側が面白くしたいが故に再び出演してもらうという意図はもちろんあると思いますけど、視聴者も何回も観たいし待っているところはありますよね。

ーー『バチェラー・ジャパン シーズン4』(Amazonプライム・ビデオ 以下、『バチェラー』)の黄皓さんの登場はまさに待ってましたというもので、タレント性でいうと『虹オオカミ』のTakiちゃんは期待通り番組を掻きまわしてくれましたもんね。

佳香:ほんとに。Takiちゃんはすごい。ストーリーテラー。

ーー『オオカミ』シリーズの人気は止まるところを知らないというか。ここまで評価されている理由は一体何だと思いますか?

佳香:10代〜20代くらいの子たちのなかで、いわゆるインフルエンサーはその上の世代でいう芸能人のような存在じゃないですか。前半でも話しましたが芸能人同士の恋愛はやっぱり気になるわけで、若い子たちの間でもそれは共通なんだと思います。あとはコンテンツとして一番ちょうどいいのかも。『今日好き』『恋ステ』だと少し身近すぎるけど『ドラ恋』だと少し大人向けすぎる。そのちょうど中間くらいが『オオカミ』なのかなって。

Numoto:憧れている子の恋愛をする姿が見たいという気持ちは誰しもありそう。あとは出演しているインフルエンサーたちもやっぱりプロだから話し慣れてる子が多くて言葉に淀みがない。伝わりやすくて見やすいのもポイントなのかもしれないです。

於:インスタグラムを眺めてる感覚と近いんですよね。綺麗な子たちがオシャレなデートスポットに行ったりするのが。

Numoto:たしかにチームラボボーダレスなど、『オオカミ』で使われたスポットは話題の場所を抑えてますよね。みんな参考にしてそう。

於:なにより、『オオカミ』は編集技術が高い。月・太陽LINEやオオカミ投票など、ルールがたくさんあるのに1話観ただけでスッと入ってくる。そこから続きが気になって追いかけ続けちゃうんですよね。予告の作り方もすごく気になるように作られてますし。

スタジオMCの技量がコンテンツの面白さにつながる

ーースタジオMCの技量も番組の面白さに関わってくると思います。個人的には『オオカミ』スタジオMCの横澤(夏子)さんが頻繁に泣いてくれるので、感情移入しやすくなっている部分はあります。

於:『オオカミ』のスタジオMCはみんな「オオカミ予想」がしっかりしてますよね。ちゃんとロジカルに考えてる。

佳香:しかも意見が被らない。

於:そうそう。予想が特定のメンバーに集中しないからより分からなくなるし、そこも盛り上げ要素になっていますよね。

Numoto:スタジオMCの女性率が高いから女子会っぽくなっているのも、参加しているみたいで楽しくなります。そこに神尾(楓珠)くんがいて、冷静に男性としての意見をコメントしてくれて。それが女性陣の話を盛り上げているのも面白い。

於:互いに「それはないわ~」って言い返せる空気感もつくれていますし、横澤さん、滝沢(カレン)さん、飯豊(まりえ)さんのバランスが良くて、『オオカミ』はMC陣のキャスティング含めいろいろ上手ですね。

ーー『オオカミ』は横澤さん、『恋ステ』はおかずクラブのゆいPさん、『今日好き』はNONSTYLEの井上(裕介)さんなどスタジオMCに芸人さんがいると心強いですよね。

於:『恋ステ 2021秋 沖縄』にレインボーの池田(直人)さんがゲストで出演していてすごく感じました。池田さんの盛り上げ方は芸人さんならではで、高校生たちの恋愛模様を観て感想言うことだけでなく、場を盛り上げるということにも意識が働いているんだなと。

Numoto:『バチェラー』の藤森(慎吾)さんもそうですね。空気読みながら次の話題をさりげなく振ったりとか、バラエティ番組で鍛えられた能力が発揮されてる。

於:本当にそうなんですよ。『恋ステ』では池田さんが自身のキャラクターも兼ねてきゃぴきゃぴした役回りをすれば、ゆいPさんとDa-iCEの工藤(大輝)さんがヒール役にまわって調整したりしてて。

佳香:ヒール役でいうと『テラハ』のスタジオメンバーも秀逸でしたよね。スタジオの意見が聞きたいから「副音声あり」で本編を観ている人も多かった気がします。

於:『今日好き』の井上さんもこっちが思ってても言えないことを言語化してくれて流石だなと思います。かつそれを面白く言ってくれる。

佳香:視聴者に指摘や批判されないように先回りして突っ込んであげていますよね。まだ半分素人でもある出演している高校生たちを守ってあげようという優しさが井上さんやゆいPさん、工藤さんに感じられる。

ーーたしかに。それは誹謗中傷を防ぐことにも繋がりますよね。

Numoto:あとは番組の内容を整理してくれる役割も担ってくれますよね。複数人いていろんな方向に恋が動いたり、展開が早かったりすると気持ちが追いつかないことあるじゃないですか。そういうのをスタジオに戻してMCの人が整理してくれることで理解しやすくなっていると思います。

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