映像作家・林響太朗が語る『おかえりモネ』OP&主題歌MVの制作秘話

映像作家・林響太朗が語る制作秘話

『竜とそばかすの姫』の挿入歌MV 

映画『竜とそばかすの姫』劇中歌/Belle【はなればなれの君へ Part1】MV

 細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』では挿入歌「はなればなれの君に」を担当。こちらは不思議なくらい短期間で作ることになったと制作を振り返る。もともと(主人公・ベル/すず役の)中村佳穂とは、スペースシャワーTVでの仕事を受けていた縁で知り合いだったという。

 MVの公開まで10日くらいしか残されておらず、発注を貰ってから2週間もなかった気がする、と林は振り返っている。そこから企画書を出し、その場でプレゼン。楽曲は、すずが仮想空間の中で、素顔をさらけ出し歌って聞かせるという、決死の覚悟の瞬間の曲。そこに至る経緯、竜を救おうとする決意がどうやって生まれたのかを考えていった。

 林は、すずの母が川に取り残された見知らぬ子を、必死になって助けに行った様子と重なると思ったという。その心はどういうように育まれたのか。きっと(作中の舞台である)高知にそういう景色があるのではないかと思って、実際に探しに行った。

 スタッフには「本当に高知に行くんですか?」と聞かれたが、5日間くらい行って毎日撮影して、途中から編集を始めるかたちで作業を進めた。自分以外にもカメラマンが3人参加しており、彼らが撮る画をピックアップして編集を進めた。興味深かったことは、カメラマン全員が同じ場所にいるのに、壮大な景色を撮ってる人がいたり、カエルを撮ってる人がいたり、子どものスイカ割りを撮ってる人がいたりと、いろんな景色の中にいろんな視点があったということ。

やっぱり編集は楽しい 今後チャレンジしたいこと

 林が、編集や撮影、カラコレを自分で担当する理由は、単純に好きだから。Premiereでカラコレを終わらせてしまうこともあるという。自分の中で、ある程度イメージができているのであれば、自分でやった方がいいのではというのが林の持論だ。しっかりと言語化できるレベルに噛み砕けていない場合、「こんな状態でお願いしていいのか」という気持ちもあるという。

 なんとなく自分が考えているときは、自分が撮ることを前提としていて、どうしても最近は(自分でやることが)増えてきてしまう。割と編集は自分でやってしまうことが多い。自分で手を動かしてみないと正しい意見を言えないような気がしているから、あまり「こういうふうにしたい」と完全に任せるようなやり方はしないようにしている。

 やっぱり編集は楽しい。気をつけているのは、分かりにくくならないようにすること。よく昔からやってしまうが、なんとなく雰囲気でつないでいると楽しくなって、気持ちよくなる。でき上がった気がするが、3日くらいして「何の編集をしているんだ」となるときもある。

 MVや映像を作りたい人に対して、偉そうなことは特に何も言えない。強いて言うなら、音楽をたくさん聴くべきと説く。自分は聴くだけではなく、ドラム、チェロ、ピアノを実際に演奏していたが、そうした楽器に触れることも必要だと語る。

 MVみたいに予算が多くなく、1人で頑張らないといけない場合、いろんなスキルが必要になってくる。もしかしたら楽器やったりダンスしたりするのだけでなく、写真を撮るなど、やってみるだけでなく、良いものを知るのも大事で、本を読んだりして常に吸収する姿勢を忘れないこと。

 今後チャレンジしたいこととしては、映画はやってみたい。あと空間演出とか、もっと携わっていきたい。演出全体としてその空間をどのように構成していくのかにも興味があるし、できる機会があったらやっていきたいと思っていると締めくくった。

林響太朗が紡ぐ世界 アーティストに共鳴するクリエイティブ
https://www.adobe.com/jp/max/2021/sessions/kyotaro-hayashis-creative-work-resonates-with-musi-mb122.html
Adobe MAX
https://maxjapan.adobe.com/

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