『スーパードンキーコング3』の陰に隠れし不思議な力作『ドンキーコングランド』 発売25周年を機に振り返る

陰に隠れた力作『ドンキーコングランド』

パッケージに説明書、タイトル名などに見られた不思議な特徴

 このように力作と評してもなんら不思議ではない『ドンキーコングランド』。だが前述の通り、発売日が本家の新作と被ったのもあって、あまり陽が当たらず世に出てしまったのが改めて惜しまれる。

 また、いま振り返ってみると、『ドンキーコングランド』にはゲーム内容外の所に2つの不思議な特徴を持つ作品だったことに気付かされる。

 ひとつにパッケージと説明書。ゲーム内の様子を紹介した画像(スクリーンショット)が1枚も掲載されていない。載っているのはゲームの特徴を紹介する文章と、ディディーコングとディクシーコングを始めとする、登場キャラクターたちのCGイラスト数点。しかも、その多くが原作『スーパードンキーコング2』の流用となっている。

 スクリーンショット掲載はもちろん、新規のCGイラストも存在した前作『スーパードンキーコングGB』を思うと、妙に感じてしまう特徴だ。

 前作のこと、『スーパードンキーコング』というゲームを全然知らない視点に立って見れば、アクションゲームという以外のことは遊んでみないと分からないので、若干のギャンブル感もある。当時、ゲームボーイのタイトルに限らず、パッケージ裏や説明書にゲーム内の様子を映しだしたスクリーンショットの掲載は当たり前のようになっていた。そんな中、このようなものが出たというのは、何とも不思議に感じてしまうものである。

 なぜ、情報が伏せられたデザインになったのかは謎のままだが、もしかしたら『スーパードンキーコング3』の宣伝に予算を割いたことによる反動だったのかもしれない。当時、比較的近い時期に発売された『ヨッシーのパネポン』、本作の後に発売された『カービィのきらきらきっず』といったゲームボーイ向けの新作は、スクリーンショットなどが掲載されたデザインとなっていたため、案外考えられる話ではある。

 しかし、こんなファミリーコンピュータ時代を思い起こさせる、情報を伏せたパッケージのゲームが発売されたのも珍しい話。今に思えば、結構稀少な特徴を持つタイトルと言えるだろう。

 なお、当時出回っていたゲーム雑誌にはスクリーンショット掲載の上での紹介がされている。コマーシャルも『スーパードンキーコング3』と一緒、かつわずかな扱いに留められていたが、ゲームが動いている様子が紹介されたのは前述の通りだ。また、任天堂公式サイトにも単独の紹介ページが開設されていて、2021年現在も閲覧ができ、こちらにはスクリーンショットも多数掲載されている。なので、それなりにゲーム情報を追いかけていれば、おおよそのあらましは確かめられるタイトルだったことは補足しておく。

 もうひとつの不思議な特徴は『ドンキーコングランド』への名称変更だ。前述の公式サイトにも『スーパードンキーコングGB』の続編と記されながら、純粋に『スーパードンキーコングGB2』としなかったのは、改めて思い返すと妙な話である。もしかしたら当時、本作が『スーパードンキーコングGB』の続編と気付かなかった人も少なからずいたかもしれない。

 ただ、『ドンキーコングランド』とは『スーパードンキーコングGB』の海外版の名称。言わば、本作から日本版も海外版と同じ名前に合わせられたのである。だが、海外版の本作の名称は『Donkey Kong Land 2』で、ナンバリングが付けられている。前作が『Donkey Kong Land』なので、それも当然の話だ。

 ところが日本語版だと前作は『スーパードンキーコングGB』なので、『Donkey Kong Land 2』とは付けられない。ゆえにナンバリングは外されたが、海外から見た場合、前作を指すタイトルになってしまった。前作との繋がりも(名前だけ見れば)分かりにくいどころか、別の新作と認識されかねないものになっている。

 結果的に日本と海外との認識の差を生じさせ、順番のズレまで起こしているのには苦笑いを禁じ得ない。きちんと1~3と順番通りに展開されている本家の『スーパードンキーコング』シリーズを思うと歴然である。

 ちなみに本作の後にもゲームボーイの『スーパードンキーコング』シリーズは発売されたが、続く3作目は『ドンキーコングGB ディンキーコング&ディクシーコング』、その次の4作目は『ドンキーコング2001』と連続してタイトル名を変えている。

 『ドンキーコングGB ディンキーコング&ディクシーコング』に関しては当初、『ドンキーコングランド2』の名での発売が予定されていた。しかし、1998年の『ゲームボーイカラー』誕生を受け、カラー化を実施して新規に発売される形になった経緯から、前述の作品名に改められて発売に至っている。もはや前2作の時に付けられた名称も何もない。

 そもそも、改題前の『ドンキーコングランド2』も、露骨に海外版とズレているのだが。(※海外では『Donkey Kong Land III』名義である)

 こうして見ると、ゲームボーイのシリーズは随分と統一性に欠けたラインナップである。とは言え、『スーパードンキーコング3』以降のシリーズはナンバリング表記がなくなって、それぞれ異なる名称が付けられている。

 また、さかのぼれば『スーパードンキーコング』シリーズの世界では「クランキーコング」の名で登場している”元祖”ドンキーコングが暴れ回り、マリオが立ち向かった初期のシリーズも、続編の名称はバラバラという実態がある。

 長らく『スーパードンキーコング』シリーズの展開がなかったころに発売された関連タイトルも同様だ。唯一、ナンバリングで統一されていたのは、リズムアクションゲームの『ドンキーコンガ』(2003年、ニンテンドーゲームキューブ)シリーズぐらい。それ以外にシリーズ化されたものでは『ぶらぶらドンキー』(2005年、ゲームボーイアドバンス)があったが、これも2作目にして『ドンキーコング ジャングルクライマー』(2007年、ニンテンドーDS)と、名前を丸ごと一新している。

 そのような歴史を思うと『ドンキーコングランド』は、シリーズが名前を統一しない方針へ寄っていく起点となる作品だったのかもしれない。当時こそ、ある種の混乱を招いた改題だったが、いま見ると現在の命名規則の先駆けになっている部分もある。ここから、以降がナンバリングで命名されない傾向となっていったのを思えば、実はシリーズにとって貴重な位置づけの作品であると言えなくもないだろう。

 結果論である上、ドンキーコングに限らず任天堂のゲームはマリオやゼルダなど、ナンバリングで統一されないシリーズタイトルが多いので、そう取り立てて珍しい出来事だった訳でもない。ただ、いま思うと「あれ?」と思うものが本作にはあるのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる