社会人が直面する“積みゲー問題” 新しいゲームに挑戦できない心理を専門家に聞く

 小さいころは親から「ゲームは1日1時間」とルールを設けられ、「大人になったらいっぱいゲームするんだ!」と考えた人は多いだろう。とは言え、歳を重ねると新しい挑戦に躊躇しやすくなり、どうしても“積みゲー(ゲームを買ったもののプレイしないこと)”が増えてしまい、かつてのゲームに対する熱意のギャップに困惑している人は結構いる。

 そもそも、なぜ歳を重ねると積みゲーが増えるのだろうか。早稲田大学文学学術院教授で発達心理学・パーソナリティ心理学を専門分野とする小塩真司氏に、積みゲーが増加する理由、30歳以降のゲームの向き合い方など、話を聞いた。

若い時は好奇心旺盛

――歳を重ねると積みゲーが増える心理的な理由はありますか?

小塩真司(以下、小塩):思春期や青年期という時期は一般的に衝動的で、強い刺激を求める“刺激希求性”の傾向が高まります。裏を返すと、この時期は衝動性や刺激希求性が高まる一方で、これらを抑制する機能があまり発達していません。そして、年齢を重ねると次第に衝動性や刺激希求性を抑制する機能も発達していき、落ち着いた雰囲気を見せる、所謂“大人”になる人が増えます。

早稲田大学文学学術院教授の小塩真司氏

――若い時のほうが好奇心に身を任せやすいんですね。

小塩:はい。衝動性や刺激希求性の高さは、新しいことに興味を抱く原動力になります。若者は衝動的にあれこれと目移りすることで、多くを学び、新しいことを身につけることが可能です。その帰結として、これまでの世代ではなかった文化や流行を生み出し、若者自身の成長も促されます。

環境の変化も大きい

――衝動性や刺激的希求性の落ち着きだけでなく、積みゲーが増加する要因は考えられますか?

小塩:年齢を重ねると、生活そのものの内容も変化します。仕事や家庭生活、子どもの対応など、一人の生活を取り巻く出来事はどんどん増え、特定のことに割ける時間が限定されてしまう。単純に“年齢を重ねると時間がなくなる”、ということが積みゲー増加の要因として考えられます。

――時間以外にも環境的な要因は想定されますか?

小塩:若い世代と年長世代の明確な違いとして、人間関係が挙げられます。若者ほど、友人や知人からゲームが紹介されて取り組む機会が多く、ゲームが話題の中心になることも珍しくない。仕事を始めると人間関係は希薄化し、次第に友人からゲームが紹介されて一緒にやる、という機会が少なくなり、同時にゲームに対するモチベーション自体も減少します。

 また、 子ども時代は、「せっかく買ってもらったゲームだから最後までプレイしよう』という意識が強い。これは“プレイできるゲームが少ない”という単純な理由です。一方、大人になれば経済的に余裕があるため、簡単にゲームを購入できるようになり、一つのゲームに対する希少性を覚えにくくなったことも積みゲーの要因の一つと言えます。

自分のニーズを見極める

――積みゲーしないために大切なことはなんですか?

小塩:暇つぶしなのか、スキル向上をなのか、最後までクリアを目的としているのかなど、ゲームをプレイする目的は十人十色。短い時間で暇つぶしをしたいのにクリアまで時間がかかるとか、それほど難しいことをしたくないのに高度な判断が求められるとか、自分が楽しみたい内容とズレたゲームであれば、すぐに取り組まなくなるでしょう。まずは自分がゲームに何を求めるのかを自覚し、そこから逆算すれば積みゲーは少なくなります。

――30歳以降に向いているゲームのジャンルはありますか?

小塩:オススメできる特定のジャンルはなく、各自のライフスタイルに合致しているかどうかが重要です。ゲームは生活の中の貴重な時間を費やすものです。各自の生活の中で、どれだけの時間が空いているのか、どれだけの時間を費やすことができるのか、費やすに足る価値があるのかなど、様々な要因を吟味して判断するしかありません。

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