特集:ゲーム×ファッションで生まれる、新たな可能性
「#FR2」石川涼×yunocy eスポーツブランド「RAMUNE JANKIE」が構想する、ファッション×ゲームの未来
アパレルブランド「#FR2」などを運営するせーのが、eスポーツブランド「RAMUNE JANKIE」を2021年7月にスタートした。ラムネでブドウ糖を取り、エナジードリンクで脳を覚醒させるという、eスポーツプレイヤー独自のカルチャーがブランド名の由来となっており、スエットのセットアップやアームカバーなどのアイテムを揃える。
ブランドのアンバサダー兼イメージモデルには、ゲームストリーマーのyunocyを起用。今後はyunocyとのコラボレーションアイテムの受注販売を予定しているほか、AV機器の展開も視野に入れているという。
これまでも新しい視点からブランドを立ち上げ、成功させてきたせーの社長の石川涼氏は、ゲーム領域にファッション業界からどのように切り込んでいくつもりなのか。そして、yunocyはブランドの”顔”として、どのようにファッション×ゲームの領域に踏み込んでいくのか。両業界の先陣を切ってきた2人の対談から、ファッション×ゲームの可能性に迫る。(石塚 振)
目指したのは「世界で戦えるブランド」
ーー「RAMUNE JANKIE」を立ち上げた理由を教えてください。
石川涼(以下、石川):もともとは、新しいカルチャーにフォーカスしたブランドをいくつか立ち上げよう、というプロジェクトを構想していました。例えば、ゴルフウエアブランドの「#FR2GOLF」だったり、スニーカーカルチャーをフォーカスした「THE NETWORK BUSINESS」だったり。「RAMUNE JANKIE」もその一つです。
ーーeスポーツのカルチャーには、いつから注目していたのでしょうか?
石川:僕は普段からずっとゲームをしているんですよ。僕がやっているのは「スーパーマリオ」や「ドラクエ」なんかで、yunocyたちがプレイしているようなゲームではないけれど。そういった中で、いつかゲーム領域でアパレルブランドを立ち上げられたらいいな、とはeスポーツが盛り上がる以前から漠然と考えていました。
さらには、世界で戦えるブランドにしたかったというのもあります。中でもゲームは、ネットで世界中の人たちと繋がれる環境が整っていて、構想ともフィットしていた。yunocyも海外の人と交流することは多いんじゃない?
yunocy:そうですね。配信の視聴者や、インスタグラムのフォロワーには、海外の方が非常に多いです。
あと、私が配信で使っているTwitchというサービスでは、”Raid”と呼ばれる、自分の視聴者を他の配信者に紹介・誘導するような機能があるんですけど、そこで知らない海外のストリーマーの方から急に紹介してもらうことも多々あります。
石川:そんな機能があるんだ。yunocyがすごいプレイをしていたり、注目されたりしているから紹介するってことなの?
yunocy:そういうパターンもありますし、「この子が面白いから見て」といった形でRaidしてもらうこともあります。英語やポルトガル語、中国語とかでコメントが溢れかえったこともありました。視聴者さんたちも、私の配信に対して「この子が何を言っているのか分からないけれど、みんなで見よう」といった形で、言語の壁を超えて仲良くなっている印象がありますね。
ーーいつ頃から海外の視聴者が増えたのでしょうか?
yunocy:ここ最近ですね。特にストリーマーとして活動するようになってファッションに気を使ったり、配信環境を整えたりして以降、海外の視聴者の方が増えてきているような気がします。
石川:そもそも、yunocyがストリーマーになった理由はなんだったの?日本のゲームマーケットが面白いから?
yunocy:純粋に好きなストリーマーやゲーマーがたくさんいて、憧れていたというのが大きですね。私以外にも、そういった人は多いと思います。憧れているストリーマーと同じ機材を使ったり、名前を寄せたりする方も結構います。私も、「DeToNator」という、プロゲーミングチームのユニホームを買ったりしていました。
ーーyunocyさんがゲームの配信を見るようになったきっかけはあるのでしょうか?
yunocy:もともと自分がゲームをプレイすることもあって、YouTubeのゲーム実況などは中学生の頃からずっと見ていました。Twitchでの配信は、インテリアや服、ゲーマーの部屋などに興味を持ち始めてから、参考にして見るようになりましたね。
石川:今の話を聞いていると、ゲーム配信を公開ラジオみたいにしたイベントとかも良いかもね。オシャレなゲーム実況部屋をガラス張りにして、路面に作って、実況している風景をファンがリアルに見られるようにする。
yunocy:面白そうですね。いつもの配信だと画面越しで、特定の位置からしか見えないので、ファンの方にとっては新鮮かも。
石川:ファン同士は密になりそうだけど(笑)。場所とタイミングさえ合えばすぐにでもやりたいね。
せーの初のアンバサダー起用の理由とは?
ーー「RAMUNE JANKIE」では、yunocyさんをアンバサダー兼イメージモデルとして起用されていますが、どういった経緯があったのでしょうか?
石川:実は、有名人を1人立ててブランドを作るといったことは僕らとしても初なんですよ。「#FR2」をはじめ僕らは普段、ターゲットの人たちの活動を見て、自然に入り込めるようなブランドの設計をしています。アームカバーに「いつも腱鞘炎」と書いてあるのもそのためで、ゲームをしている人が付けていた場合、周りから「何これ?」と自然にコミュニケーションが生まれることを狙っています。
そのため、ゲーマーの活動には注目していたけれど、誰かゲーマーをブランドの顔として起用するということは最初は考えてもいませんでした。yunocyを起用したのも偶然、「#FR2」関連の撮影でモデルになってもらって以降、彼女と知り合いだったから。ただ、僕もeスポーツのことをよく知っているわけではないし、初めての試みも面白いかもな、と考えました。最終的には、彼女と一緒に考えていく中で、ブランド名やコンセプトが決めていきましたね。
ーーブランドのアイテムに関しても、yunocyさんの意見はかなり反映されているのでしょうか?
yunocy:部分的ですが、例えばアームカバーは欲しい、という話はしていました。FPSのゲームをプレイする時、私の場合は腕がすごく擦れてしまうので、長時間ゲームをするのがしんどくて。それを軽減するためにも、アームカバーは必要だなと思っていました。
石川:個人的には、yunocyには今後もガンガン関わって欲しいな、と思っています。その中で、例えば「RAMUNE JANKIE」をyunocyのブランドにするなど、彼女のポジションを変えていっても良い。そういったことはプロジェクトを進めていく中で運営していければいいなと思っています。
ーー7月にブランドをスタートしてからまだ日が浅いですが、手応えは感じていますか?
石川:始まったばかりなので何とも言えないけれど、パーカーなどは完売しているし、yunocyの配信を見てそのままアイテムを買ってくれるユーザーもいると聞いています。今後もアイテムの発売頻度を増やしつつ、ゲーミングチェアやAV機器なども出して反応をみていきたいですね。
また、個人的にはEC上で完結するアパレルには興味がなかったのですが、ゲームとの親和性は高いのかな、と実際にブランドを始めてから感じました。ゲームのマーケットはネットの中だけでも成立できていて、ネット空間こそがある種のストリートになっている。従来は原宿などに店舗を持って、観光客が自然発生的に来店することを狙って行かないと、海外でも勝負できないと考えていたのですが、ゲーム領域では意外とECの中だけでの活動でも戦えるのでは、と考えています。
もちろん、フィジカルなイベントができる空間を作れれば、他のブランドとの差別化にもなるので、積極的に仕掛けていきたいと思っています。