ベータ版1000万DL超、『Splitgate』のヒットでアリーナシューターは復権へ?

『Splitgate』のヒットがもたらすもの

 『Splitgate』のアイディアは、冒頭で紹介したIan Proulx氏が、まさにリリース当時に『Portal』と『Portal 2』をプレイし、その「ポータル」というコンセプトに惚れ込んだことで生まれたものである。卒業プロジェクト時代、(当時の)本作を検証するために友人たちに「45分だけ遊んでくれ」と頼み込んで集めた結果、集まった人々が45分どころか5時間以上も遊んでしまったという出来事に可能性を感じたIan氏は、本作をリリースするために1047 Gamesを立ち上げるにいたった*1。同社はあくまで冒頭で述べたような大型タイトルをリリースするような会社とは比較にならないほど小規模な会社であり、人気が爆発した2021年7月の時点で開発者がわずか4人しかいないことが明かされている。

 だが、『Splitgate』に触れた多くの人々はIan氏と同様に、本作に大きな可能性を抱くようになり、2021年6月末には当時343 Industriesで『Halo 5』のマルチプレイヤー運営に関わっていたBlaze Lightcap氏をリード・レベルデザイナーとして1047 Gamesに招くに至っている*2。2019年の初リリースから2年という月日を経ての大ブレイクも、本作に魅力と期待を感じる人がプレイ続けたからこそ実現できたものだろう。そして、本作に対する期待を象徴する最たる出来事とも言えるのが、9月15日に発表された「1047 Gamesが1億ドルもの資金を調達」というニュースである。自身のTwitterにて発表されたこのアナウンスのなかでは、あくまで他の大企業に自社を売却するのではなく、独立性を保ち、コミュニティの意見を第一に運営していきたいという想いを強調していた。そして、そのためにこの資金を開発者の雇用に充てていきたいと語っており、現在も1047 Gamesでは非常に積極的に開発者の募集を実施している。一人の人物が考えた一つのアイディアが、今や想像もできなかったほどの規模にまで膨れ上がろうとしているのだ。

 『Splitgate』は華々しい成功を記録したが、目の前に『Call of Duty』や『Battlefield』、そして『Halo』の新作のリリースを控えている今、必ずしもこの成功が続くと約束されているわけではない。だが、少なくともIan氏が本作に感じた可能性は正しかったのだ。そして、その野心を原動力に、今後も『Splitgate』はさらなる進化を遂げていくことだろう。長らく不遇の時代が続いていたアリーナシューターというジャンル、そしてその中で新規タイトルであるにも関わらず大きな成功を収めた『Splitgate』と1047 Gamesについて、Ian氏は次のように語っている。

「人々はこれらのゲームをプレイして育ってきました。そして、市場が壊滅してしまったのは、もう人々がそれを愛さなくなったからではありません。誰もこの針を動かすことができなかったのは、そこに革新が、そして大衆に受け入れられるものが無かったからです。『Quake Arena』は素晴らしい作品ですが、あまりにも難しすぎる。きっと12歳の『Fortnite』のプレイヤーが遊ぶことは無いでしょう。我々は、その隙間を埋めることができるのです」*3

〈Source〉
*1 https://venturebeat.com/2021/09/14/1047-games-raises-100m-at-1-5b-valuation-after-13m-splitgate-downloads/
*2 https://twitter.com/BlazeDillon/status/1410003731874263045
*3 https://techcrunch.com/2021/09/14/1047-games-raises-100m-on-the-runaway-success-of-its-debut-title-splitgate/

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