TVCMにも出演中「旅する喫茶」玉置氏に聞く、クラウドファンディングの理想的な成功形と“拠点”を持つ意味
クラウドファンディングサイト『CAMPFIRE』のTVCM「成功者の声」が新たに放映開始中。同CMに出演しているのが、全国を旅しながら営業している喫茶店『旅する喫茶』の玉置直樹氏だ。tsunekawa氏とともに同プロジェクトを立ち上げ、ご当地の食材を使ったクリームソーダやカレーがSNSを中心に話題となった『旅する喫茶』は、昨年末に東京・高円寺に実店舗をオープンさせるためのクラウドファンディングを実施。目標金額の200%を上回る6,695,600円の支援を集めサクセスした。
今回はそんな玉置氏に『旅する喫茶』のヒストリーや、クラウドファンディングで成功を収めるまでの過程、コロナ禍で実店舗を運営するうえでの課題や今後の展望を聞くインタビューを実施。支援する・挑戦する側、双方の立場にとって参考になる話が盛り沢山だ。(編集部)
実店舗オープンから半年 「旅する喫茶」が拠点を持つ意味とは
ーーまずは「旅する喫茶」を始めたきっかけを教えてください。
玉置:始めたのは2019年の4月からで、ちょうど2年半前のことです。きっかけは、僕の家で主催していた「カレー会」ですね。友達を呼んでカレーをふるまうっていう身内向けの会で、そこでtsunekawaとも知り合いました。彼がそのときからクリームソーダを作っていて、2人で何かやったらおもしろいんじゃないかと始めたのが「旅する喫茶」です。
ーー1番最初の取り組みとして、新高円寺の古民家を借りてイベントを開催。それが大盛況だったんですよね。
玉置:そうですね、たくさんの方に来ていただきました。
ーーそこでもカレーが好評だったということですが、料理はどこかで学ばれたんですか?
玉置:調理の学校を卒業してはいるんですが、お菓子系だったので直接は関係なくて、独学ですね。カレーを作り始めたのは会社員になってからです。昔から食べ歩いたりはしてたんですけど。
ーーなるほど。そこから高円寺だけでなく、全国を旅していくというコンセプトはどこから?
玉置:僕もtsunekawaも旅が好きなので、いろんなところでやって、いろんな人に会えたら楽しいよね、ということで全国をまわることにしました。地方に行くと食材などもそうですが、その場所にしかない良さがあって、それをカレーやクリームソーダに反映していこうという意味で、活動のコンセプトを「旅する喫茶」にしました。
ーーそこでは地元の人との交流なども生まれたと思いますが、実際に触れ合ってみていかがでしたか?
玉置:これまでの僕らの活動は「食を通じて人と繋がる」という側面が強くて、カレーやクリームソーダも、人や地域と繋がるためのツールなんです。それを介して地元の方たちと触れ合う機会が増えてすごく刺激的ですし、地元の方の声を聞くのは大事なことだなと実感します。挑戦的な試みではあるんですが、アルバイトの方もいつも現地で採用してるんですよ。
ーー地元の方だと土地勘もありますしね。
玉置:本当にそうですね。食材にも詳しいですし、おいしい食べ方なども教えてもらっています。
ーーそのご縁はそこで終わるのではなく、ゆくゆく新たな挑戦をするときにも繋がってきそうですね。
玉置:働いてくれていた人たちがお店に遊びに来てくれたり、仕事を辞めてこっちにコミットしてくれるケースもあります。人とのご縁は大事にしていますね。
ーー玉置さんは当時会社員と両立していて、かなり忙しかったと思います。そこから会社を辞めて「旅する喫茶」にフルコミットするきっかけはなんだったんですか?
玉置:もちろん時間的な問題はありましたが、気持ち的にも、副業として中途半端にやるのではなく、もっと真剣に取り組みたいと思い始めて、会社を辞めました。会社員をやりながらだとやりたいことにも制約ができてしまうので、1本に絞ったことでいろいろやりやすくなりましたね。そこから「旅する喫茶」自体も加速していったと思います。
ーーその流れを汲むようなような形で、昨年お店を高円寺にオープンしました。CAMPFIREでのクラウドファンディングは11月30日にスタートしましたが、どれくらい前から計画自体は進んでいたのでしょうか?
玉置:以前からお店を出したいと話してはいたのですが、コロナや諸々の事情もあり遅れていたんです。クラウドファンディングも本当はもっと早くやりたかったくらいで。
ーーコロナ禍でお店を構えるのには不安もあるでしょうし、「旅する喫茶」の良さはいろんなところに移動することでもあると思うのですが、店舗を構えた方が良いと考えられたのはなぜですか?
玉置:僕たちは実店舗を「拠点」と呼んでいて、ここがあることによって旅が成り立つというか、さらに良い形で回していけると思ったんです。それまでは荷物の置き場所すらなかったですし、出張するのにも費用がかかりますから。実店舗があることでできることも増えましたね。
ーー1店舗目は高円寺にオープンされましたが、はじめからこのあたりで探されていたんですか?
玉置:高円寺メインで探していました。tsunekawaと出会ったのも、最初の「旅する喫茶」も高円寺で、僕たちにとってゆかりある街なのですごく気に入ってます。
ーー高円寺は玉置さんから見てどんな街ですか?
玉置:なんでもウェルカムで、肩に力を入れなくてよくて、自分らしく暮らせる街です。そういうところでお店を開いたら良い形になりそうですよね。僕はお酒が好きなんですが、高円寺にはお酒好きな人が多いので、今はコロナでお酒は出せないんですが、今後はそういう人もターゲットにできたらいいなと思っています。あとはカレー激戦区でカレー好きが集まっている街なので、だからこそ出店してみたい気持ちもありました。それもあって、スパイス屋さんが多いんですよ。そこは結構大事なポイントでしたね。
「CAMPFIRE」のCMにも起用 クラウドファンディングの理想的な成功例
ーー玉置さんご自身は、もともとクラウドファンディングの利用経験があったんですか?
玉置:以前、別のプロジェクトで触れたことがありました。その経験があったので、クラウドファンディングを使うのは自然な流れでしたね。
ーー使う前と後で、クラウドファンディングの印象は変わりましたか?
玉置:使う前はちゃんと集まるか不安でした。でもいざやってみると応援してくれる方が多くて、いつも目標金額を超えられています。
ーーSNSを通じた濃いファンも多いですしね。
玉置:たしかに僕たちは少し特殊なケースで、もともとファンの方がいらっしゃるのは大きいですね。それでも期待以上の結果が残せました。
ーー昨年末のプロジェクトは、わずか14時間という圧倒的な早さで目標金額を達成しました。
玉置:びっくりしましたね。初日は大事だと聞いていましたが、これは相当早いと思います。
ーープロジェクト開始前のアナウンスもしっかりされてましたし、後日のストレッチゴールを設定されてからもすごくマメに発信されている印象を受けました。今回クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」のCMにも起用されることになりましたね。
玉置:僕らの支援者の多くは、「旅する喫茶」に訪れたことがある方なんですよ。活動を見てくれていた人たちや、ファンの方たちともう一度関わるきっかけを作ることこそ、クラウドファンディングの成功にすごく大事なことなんです。それを理想的な形で実現できていることが、起用された理由だと伺っています。リターン(金額に応じたお返し)も、支援者さんが“一緒に作り上げている感”を味わえるものにしていて、ご好評いただいてます。
ーー「旅する喫茶」のリターンは「店舗の壁を一緒に塗装出来る権利」など、ユニークなものが多かったですよね。どのように決定されたんですか?
玉置:回数券とかは定番ですが、そればかりだとおもしろくないですよね。味気ないというか。僕は“体験型”に価値を感じるタイプなので、友達のプロジェクトを支援するときも、「1日店長ができる権利」といったものを選んじゃいます。支援者の方々も、回数券よりも原価がないものを支援することに価値をかんじてくれるんじゃないかと思い、リターンを決めました。
ーー体験型のリターンって、そのときじゃないと一生経験できないことですからね。「旅する喫茶」のコンセプト自体もユニークですし、お2人は性格的に、ただ普通のことをやるのではつまらないと考えるタイプなのかなと思いました。
玉置:そうですね。本当はもっといっぱいアイデアがあったんですけど、人と会うことが制限されている時期でもあったので、こういう形になりました。
ーー実際にお店を構えてみて、感じたことはありますか?
玉置:今はコロナ禍ということもあり、なかなか集客が難しい部分があったりしますが、そんな中でも常に発信し続けるなど、今の自分たちに出来ることしっかりと続けていれば、おのずとお客様は付いてくれるんだなと感じました。既に何回も来ていただいてるお客様も結構いらっしゃっていて、本当に嬉しい限りです。
ーーTwitterやInstagramなど、いろんなSNSを駆使されてますよね。
玉置:今はコロナの影響で当日予約制にしているので、なるべくSNSをみてきていただく方を増やせるようにSNSで発信を続けています。