スケートボード文化を変えたビデオカメラ「Sony DCR-VX1000」 発売から26年経った今でも愛され続ける理由とは?

スケボー業界に愛されたビデオカメラ「VX1000」

 オリンピックをきっかけに「競技」として一般的に注目されることになったスケートボード。もちろん大会やコンテストもスケートボードカルチャーにとって重要な要素であるが、ストリートのビデオなしでは語れない文化である。一度でもストリートで撮影されたスケートビデオを見たことがあれば、その撮影スタイルや躍動感が印象に残ったであろう。下からアングルをつけ、スケーターを追って撮影するスタイルや、階段や地面スレスレのところから撮影するスタイル。スケートビデオにとって、スケーターと同じぐらい重要なのが、フィルマーと撮影方法なのである。

DGKのYouTube

 そんなスケートビデオの定番とされ、発売から26年が経った今でも愛されているビデオカメラがある。それが1995年に発売された「Sony DCR-VX1000(通称:VX)」である。こちらのビデオカメラの文化的貢献度は計り知れず、「スケートビデオの質感=VX」というイメージを持っている人も多いだろう。そんなVX1000がどのようにして広まり、どのようにしてスケートボード業界の定番となったのか? そしてなぜ発売から26年、生産完了から20年経った今でも愛され続けているのかを考える。

(画像=Sony)

 映像のプロフェッショナルたちの間では、1980年代後半にはデジタルビデオカメラがすでに使用されていた。しかし当時のデジタルビデオカメラは非常に高価であったため、予算のない中小企業やアマチュア映像クリエイターたちは手が出せない状態であった。しかし、1995年に初のコンシューマーレベルのデジタルビデオカメラとして登場したVX1000によって、イノベーションが起きたのである。

 今までのデジタルビデオカメラに比べ小型であったVX1000は、外で撮影する必要があるニュース番組やレポーターなどをターゲットに開発されたものであった。高画質の手持ちビデオカメラVX1000が登場し、自然災害など、野外レポートのハードルが一気に下がったのである。また、アマチュア作家によるドキュメント映像も、このカメラによって増えたという。

 そんななか、いち早くこちらのカメラを導入したのが、アダルト業界であった。当時、同業界の企業が密集する南カリフォルニアのサンフェルナンド・バレーから大量のオーダーが入ったとJenkem Magazineでは報じられてる。それを皮切りに、映像クリエイターたちはこのカメラの自由度と表現性を知ったのだ。クオリティの高い映像、ローライトでの性能、スムーズなズーム、様々なアングルでの撮影を可能にしたサイズなど、「動き」の表現をキャプチャーするのに最適なカメラであり、それはまさにスケーター達が求めていたものであった。

 また、1990年代前半、スケートボード業界は大きな問題を抱えていた。業界内でビデオの記録媒体が統一されていなかったのである。8mmやHi8など、様々なフォーマットのカメラが使用されており、業界のスタンダードというものがなかったのだ。SDカードなどで記録し、デジタル映像を編集ソフトに取り込める今と違い、記録媒体によっては、映像を編集する際に必ず画質の劣化が起こるものもあった。映像にグリッチが入る可能性もあり、様々なフィルマーがスケートビデオに関わるなか、業界のスタンダードがないというのは大きな問題であった。

(画像=World IndustriesのTrilogyより)

 そんなスケート業界にとって、miniDVとFireWireを搭載したVX1000はソリューションとなったのだ。VX1000を初めて採用したスケートビデオはGirl Skateboardsの「Mouse」だと言われている。さらに、1998年にCentury Opticsから発売されたMk-1(通称:デスレンズ)という巨大な魚眼レンズとの組み合わせることにより、スケートボードの臨場感とスピード感が映像で伝わるようになったのだ。1999年の終わりには、ほぼ全てのプロスケートフィルマーがVX1000とデスレンズで撮影をするようになり、業界のスタンダードとなったのだ。言うならばスケートビデオの天下統一である。

Century OpticsのMK-1レンズ(画像=JenkemのYouTubeより)
VX1000とMk-1で撮影された映像の画角(画像=BAKER 3より)

 VX1000がスケート文化に及ぼした影響は計り知れない。スケートビデオ黄金期と呼ばれる2000年から2007年に生まれた「Alien Workshop – Photosynthesis」、「Emerica – This is Skateboarding」、「Girl – Yeah Right!」、 「DC – The DC Video」、「Baker -Baker 3」、「Lakai – Fully Flared」などの名作はVX1000で撮影されており、1999年から2009年に発売されたビデオは、ほぼVX1000で撮影されていると言ってもいいだろう。その後HDが当たり前になった現代でも、VX1000を好んで使用するスケーターたちがいるのだ。

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