鬼滅、ジョーカー……「悪役」の背景に魅了される理由 人間の悪を描く『酒癖50』から紐解く

 本人の素因と社会の相乗効果によって“酒癖モンスター"が生まれる構図は、悪役を生み出した社会に目を向ける昨今の作品傾向と一致する。『鬼滅の刃』に登場する鬼たちが人間時代の記憶を抱えていたり、売れない道化師が大衆を扇動するヒールになる映画『ジョーカー』のように、善悪の問題を単純な二分法で終わらせずに、普通の人間が悪に堕ちるまでを心理的な経過と周囲との関係から探求する作風である。そこにあるのは善悪どちらにも染まる人間観と、その境界が自分自身の中にあるという洞察だ。

 「酒を飲んで忘れたい」という欲求や周囲への不満は誰もが持ちうるものだ。胸に手を当てて考えれば、その場の空気に流されたり、言うべきことを言えなかった経験に思い当たるだろう。『酒癖50』を他人事としてスルーできないのは、私たち自身の痛いところを絶妙に突いてくるから。誇張して描かれたエピソードの中に、私たちは日々直面する現実の矛盾や自身の弱い部分を発見する。それは酒が映し出すもう一つの真実である。

■ABEMAオリジナルシリーズ新作ドラマ『酒癖50』 放送概要
放送チャンネル:ABEMA SPECIAL
放送URL: https://abema.tv/video/title/90-1537

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