ゲーム実況から卒業発表まで……乃木坂46がYouTube「乃木坂配信中」を持つ意義と、他chとの差別化について考える
もっとも、それぞれに特色がみえてきた各チャンネルだが、必ずしも相互干渉のない、ただのすみ分けである必要もない。乃木坂46の映像コンテンツを振り返れば、複数のメディアをクロスオーバーしながら映像作品が作られる例を見出すこともできる。山下美月にとって初の個人PVとなった「山下美月の二重奏」(監督:山田篤宏)では、YouTube公式チャンネルの予告編と、CD付属の個人PV本編(現在は「のぎ動画」でも配信されている)の2つのメディアを同時再生することで、初めてダイアローグが成立する仕掛けを忍ばせていた。タイプの異なるチャンネルを多く持つからこそ、それらをいかに連関させていくかという想像力もまた広げることができる。
さらにいえば、乃木坂46が個人PVをはじめとして大量の映像作品を制作してきたのは、所属メンバー個々に表現者としての機会を持続的に確保するためでもあった。平素のマスメディア露出や楽曲選抜とは異なる回路を用意し、外向きの場に頻繁に立つメンバー以外にもクリエイティブを投入して活路を拓く、乃木坂46はそうした豊かさを持ちうるグループである。Web上に設置された複数の映像発信の拠点が、メンバーそれぞれにスポットを当てるための場としても定着できれば、その意義はいっそう大きくなるはずだ。