最終章から新たな世界へ。RADWIMPS『SHIN SEKAI “nowhere”』が示す“次世代バーチャルライブ”の可能性

『SHIN SEKAI "nowhere"』が示す“次世代バーチャルライブ”の可能性

 RADWIMPSの有料バーチャルライブ『SHIN SEKAI “nowhere”』が7月16~18日の3日に渡り、開催される。

 7月12日にはこれに先駆け、東京都内で『『SHIN SEKAI』先行プレイ体験会』が実施され、RADWIMPSメンバーの野田洋次郎、桑原彰、武田祐介と『SHIN SEKAI “nowhere”』の開発を手掛けたクリエイティブ集団・PARTYの眞鍋海里氏と梶原洋平氏の5名によるトークセッションも行われた。

 『SHIN SEKAI』はRADWIMPSとPARTYがタッグを組み、モバイルデバイスの専用アプリ上で展開されるバーチャルパークシステム・VARPを舞台に開催されるバーチャルライブ。RADWIMPSの楽曲をモチーフにした世界を探検しながら、RADWIMPSが挑戦する新しい音楽体験である“ロールプレイングミュージック”を楽しめるライブコンテンツは、昨年末にそのプロローグ版を無料開催。世界各国のファンを対象にした同イベントは12月29日の初回に1万1000人が同時参加するなど、大きな話題になったことも記憶に新しい。

野田洋次郎(RADWIMPS)
野田洋次郎(RADWIMPS)

 トークセッションで野田は、「昨年の緊急事態があって僕らのドームツアーがなくなって、その後のアジア、ヨーロッパ、北米ツアーが段階的に中止になって。どん底を味わう中でも僕らの音楽を絶やさずに届けたいという想いがあって、友達にPARTYを紹介してもらいました。こういう形でやってるアーティストはまだどこにもいないかもしれないけど、やれるなら挑戦してみたいとメンバーやスタッフに話して始まった」と『SHIN SEKAI』誕生のきっかけを明かした。

桑原彰(RADWIMPS)
桑原彰(RADWIMPS)

 桑原は実際にプレイしてみた感想を「自分がアバター化するのは初めてだったので、客観的に見ても面白いなと思いました。大きくなったり、3Dの中でしかできない演出ができたり、こんなことが可能なんだと思ったし、いろんな人に広まればいいなと思いました」と語った。

武田祐介(RADWIMPS)
武田祐介(RADWIMPS)

 武田は、「全世界が同じ世界を共有できるんですよね。去年やったときにSNSの反応を見たらみんな楽しんでくれているみたいで、海外のファンとコミュニケーションを取れたという声も見かけました。普通、日本のライブ会場は日本人が多いけど、日本にいながら違うところでライブができているような、新しい場が提供できたなと思いました」と昨年の『SHIN SEKAI』を振り返った。

 また、トークセッションの最後に野田は「この技術がこの先どんなふうに進化していくのか楽しみですし、すごいものの入り口に立ったんじゃないかという嬉しい思いがあります。これからは実際のライブとの融合とかいろんな可能性を秘めているなと思います」とコメント。

 「これだけ楽しめるコンテンツができたのは僕らにとっても喜びです。多くの人たちに体験してもらいたいと心から思っています。今回は3日間というところでひと区切りですが、もっと可能性を広げていけたら」と続いて武田。桑原も「僕たちも新たなライブの可能性を見せられた気がしますし、携われて楽しかったです。いろんな形でこの技術がほかのアーティストさんにも伝わって対バンができたり、フェスができたりしたら面白いなと思います」と3人がそれぞれ今後のバーチャルライブの可能性についても語った。

 『SHIN SEKAI “nowhere”』では、無料参加形式からアプリ内で購入できる有料チケット制への移行や4種類の有料のアバターのほか、エモートが追加されるなど、昨年開催時との変更も見られた。しかし、ロールプレイングミュージック体験自体も格段にアップデートされており、より没入感があり、かつ、自由度が高いバーチャルライブとなっていた。

 そんな『SHIN SEKAI “nowhere”』でまず、注目したいのはイベントのステイトメントにある”SHIN SEKAIの最終章”という文言だ。前回のプロローグ版では、バーチャルライブ終了後にワールド内に掲げられたモニター”UPDATES IN 2021 See you again soon!”の文字が映し出されていたことを記憶しているファンは多いはず。その言葉どおり、アップデートが図られた今回は、前回のライブ終盤で登場したRADWIMPSメンバーのアバターをユーザーが自分のアバターとして購入できるほか、序盤から前回同様3Dモデリング・モーションキャプチャーにより、メンバーの演奏する姿をトレースした巨大アバターがワールド内をエネルギッシュに動き回る様子が見られるなど、新旧のSHIN SEKAIをシームレスに繋ぐ試みが行われていた。

 また、開演時間直後から体験用のアプリをインストールしたスマホのプレイ画面に野田の顔が大写しになり、桑原、武田とともに楽器を鳴らし始める実写シーンが見られた。「ようこそ、SHIN SEKAIへ」という野田の言葉とともに1曲目となる「前前前世」がスタートすると、そこからはバーチャル世界での体験が開始され、現実世界からRPGの世界へ転生するかのようなバーチャルライブの没入感を高める仕掛けが印象的だった。

 バーチャルライブの会場となるワールドもより洗練された作りになり、光を始めとしたFX効果も前回より格段に凄みを増していた。さらにバーチャルライブならではの現実ではありえない表現も一層の進化を遂げており、特に前回も見られた空中、宇宙といった空間移動のバリエーション増加は特筆するべき点だ。空中、宇宙、水中、異空間などを目まぐるしく移動していくジェットコースター的な空間の移動からはSHIN SEKAI空間の自由度の発展を強く感じた。

 空間の自由度という意味ではワールド内に設けられたワープポイントも注目すべきポイントだ。バーチャルライブのワープポイントといえば、今年5月に行われたPorter Robinson主催のバーチャルフェス『SECRET SKY MUSIC FESTIVAL』が思い出される。同フェスでもワールド内に設けられたワープポイントをくぐることで、別の空間に移動できたが、『SHIN SEKAI “nowhere”』でもユーザーがアバターを操作して自らの意思でワープポイントをくぐることで起こる空間移動は、バンドの演奏にあわせてアバターを操作して行う従来のエモート、ジャンプに続く、自発的なリアクションであり、この機能が今回のインタラクティヴ性を高める大きな要因のひとつになっていた。

 『SECRET SKY MUSIC FESTIVAL』との比較でいえば、バーチャルライブにおける没入感の作り方の違いも挙げられる。『SECRET SKY MUSIC FESTIVAL』は、PC、スマホでもアクセス可能だったが、VRデバイスとの連携が大きな特徴になっていた。一方、『SHIN SEKAI “nowhere”』は、前回同様スマホでの体験を念頭に置いた設計になっている。

 空間的な没入感という意味ではVR世界に浸れる前者に軍配が上がる。しかし、ライブ映像自体はワールド内に設置された巨大なモニター越しから見るだけに留まっていたため、言うなればそれはVR世界の中での行われる映画館でのライブビューイングに近いもののように思えた。

 一方、『SHIN SEKAI “nowhere”』の場合は、トークセッションで梶原氏がプラットフォームがスマホになった理由について、「みんなが持っている環境でライブを届けることが大切で、モバイルでできる限界ギリギリを狙っている」と語っていたようにスマホファーストで没入感をいかに得られるかが考えられた設計になっていることが特徴だ。いかにして、スマホで体験するバーチャルライブの没入感を高めるか。その答えとして示されたのが先述のアバター操作や空間の自由度の向上だったように感じている。



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