日本在住・外国人YouTuberの僕が、新型コロナへの日本政府の対応に思うこと

外国人Youtuberの僕の新型コロナウイルスに対する思い

日本に住む外国人から見た、日本のコロナ対策

 日本に住む外国人として、新型コロナウイルスと日本の対応をみると、色々なことが後手に回っているような気がしないでもありません。

 僕の立場からひとつ言うならば、初期の対策で打ち出した、日本に住む外国人が国外に出たら再入国できない、という規定はまずかったのではと思います。私たちは外国人ではありますが、この国と文化を愛し、税金を払って、ここを拠点に仕事をして、生活しています。つまり、日本社会の一部である自負がある。再入国を禁じられると言うことは、もし私とTokyo Creativeのスタッフがロンドンで仕事をしたとして、日本に戻ってこられるのは日本人スタッフだけで、私はロンドンにとどまらなければいけなくなります。昨年、イギリスに住む私の父が心臓のことで病院に運ばれましたが、駆けつければ最後、日本にアパートと仕事を残し、家賃やその他の支払いを続けるにもかかわらず、私は戻ってこられなくなるわけです。

 感染予防の観点で、新たに外国人を日本に入国させないことは理解できます。しかし、既に日本に拠点を置いている外国人を、外国人という括りで入国させないことは良い対応だとは思えません。日本に住む外国人は、日本政府から「お前たちは重要ではない」と言われたようで、非常に悲しかったです。

 コロナ流行の前までは日本政府は外国人に日本の素晴らしさを宣伝し、多くの外国人を日本に呼びたがっていたはず。在日外国人を再び国内に入れないという対策は、残念ながら外国人に対して真逆のアピールになりました。

 僕は仙台を拠点にしていますが、地方都市のため感染拡大の影響を受け、未だに感染者数が増減する日々が続いています。しかし、コロナ流行初期から感染数に限らず、仙台から少し離れた東北の地方では日本人はマスクの着用、レストランや施設でのアルコール消毒や体温検査が徹底して行われていました。僕たち日本を愛する在日外国人にとって、許しがたい対応があったのは事実ですが、その点を除いては、トイレットペーパーがなくなる以外のパニックやカオスもなく、日本人の方たちの状況に対する適応力が高いようにも感じることも多かったです。それも、今となってはコロナ流行初期当時の話になってしまい、現時点では国内外からコロナ対応への批判があるのは否定できない事態となってしまっているのが残念です。

いま「Abroad in Japan」ができること 

 もちろん、新型コロナウイルスに比較的うまく対応できているからといって、問題が出ていないというわけではありません。私の友人のビジネスは大打撃を受けていますし、接客業は窮地に立たされています。

 私の親友、NATSUKIのヘアサロンは、2020年4月、5月と2ヶ月も客足が途絶えました。寿司レストランや和牛レストランを経営している友人も、売り上げが落ちていると嘆いている。田舎も東京も、観光業は逼迫しています。観光客で賑わっていた築地マーケットの多くの店舗が閉めることとなりました。

 日本の観光業はインバウンドで急成長しましたが、あっという間に急落しました。オリンピックのために町中に新しいホテルを作りましたが、空室が目立ちます。状況は悲惨で、楽観的になどなれません。私は、新型コロナウイルスよりも、この先数年の日本の経済の方が心配です。

 だから、私はビジネスや人に焦点を当てた動画を作りたいのです。再び気兼ねなく観光できるようになった暁には、多くの人に仙台の寿司レストランや和牛レストランに足を運んでもらいたい。クリエイターとしての立場を活かし、魅力的な動画を作ることで、友人や困っている人たちを助けたいのです。それが義務だと思っています。

 例えば、NATSUKIとともに「Abroad in Japan」のライブ動画配信を行ったこともあります。ライブ中に“投げ銭”ができるシステムがあり、視聴者の皆さんにいただいた投げ銭の半分をNATSUKIに渡しました。彼は苦境に立たされていたので、とても喜んでくれました。

 Ryotaroに対してもそうです。彼が友人と共同経営している仙台外れのレストランを撮影し、再び活気が戻ることを願って、彼のYouTubeチャンネル「Ryotaro’s Japan」に投稿しました。

 「Abroad in Japan」には、中小企業からの問い合わせも多く寄せられます。視聴者が200万人もいれば、何かしら伝えることができると思います。微力だとしても、変化をもたらせるでしょう。他のYouTuberも同様の活動をすることを望みます。YouTuberが町や店、エリアを取り上げて配信すれば、きっと経済を助けられる。

 事態が収束したら、新型コロナウイルスが私たちの生活をどう変化させたか、ということに焦点をあてた動画を作るつもりでいます。しかし、今は人を楽しませることと、少しでも人の助けになることに注力していきたい。そうしなければ、私の技術が宝の持ち腐れになってしまうと思うのです。

■Chris Broad(クリス・ブロード)
30歳、イギリス出身。YouTubeチャンネル「Abroad in Japan」を運営。登録者数250万人。日本を拠点に活動するトップ外国人YouTubeクリエーターとして200以上の動画を制作。東北地方太平洋沖地震に関するドキュメンタリーや、L’Arc-en-Cielのボーカルとして世界中にファンを持つHYDEのソロ活動密着動画など動画のジャンルは多岐にわたり、訪日インバウンド集客から実行まで行うTokyo Creativeと共に、日本各地の自治体や企業向けのコンテンツも制作している。2012年にALTとしてJETプログラムに参加し、英語教師として2,000時間以上を費やした後にフルタイムの動画クリエーターへ。夢はプロのフィルムメーカーになり、チョコレートでできた家を建てること。

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