ネットの企画を「テレビみたい」と言うのはさみしい。『勇者ああああ』とアルコ&ピースが目指す“笑い”のかたち

『勇者ああああ』とアルピーの現在

キャスティングは「お金を払わないと観れない人」が基準に

――アルコ&ピースのおふたりは、『勇者ああああ』以外にもさまざまな番組に出演されているじゃないですか。それらの現場と比較するとどんな違いを感じましたか?

平子:準備の有無ですね。事前情報を入れておくとか、立ち回りを意識するとか、そういったことがまったくない番組でした。あとは、ゲストが本当の意味でほかで見かけない人ばかりでした。中野の地下の劇場行かないと会えないような連中とか、「これが初テレビです」って人もいたりとか。

酒井:中野の地下では実際、「『勇者ああああ』が突破口だ」みたいにざわついてたみたいですよ。

――実際のところ、板川さんがキャスティングをされる際に意識しているポイントはあるんですか?

板川:冗談で「低予算だから安く呼べる人」とは言ってましたけど、実際は「お金を払わないと観れない人」を意識しています。

 「お金を払わないと観れない人」って2種類いて。ひとつは、表立った露出は少ないけど劇場などの出演がメインで人気がある人たち。もうひとつは、単純にほとんど露出場所がなくて中野の地下の劇場にいるような人たち。圧倒的な大スターとかなってくると、意外とお金払わなくても観れる場面が多いんですよね。

 だから中野の地下劇場に足を運んでいるようなコアなお笑い好きが番組を応援したくなるようなシステムにしたくて、そういう人たちに喜んでもらえそうなゲストを呼んできたんです。「今ここで応援してあげないと、この人当分テレビ出れないだろうな」って感じの人を呼ぶのは、なんとなくひとつの指標としてありました。スター発掘というよりも、「こういう面白い人がいるんですよ」とお見せしたい気持ちで。

――深夜はそういう感覚が合っていたと思うんですけど、プライム帯に上がるとまた考え方も変えなければならなかったんじゃないですか?新規の視聴者を獲得しつつ、既存の視聴者にも満足してもらえるものを考えると。

板川:一応、ゲストのアシスタントやリアクターとして売れている人を起用したりはしてました。数字に影響があったかと言えばそこまででもないですけど。企画自体は面白い自信があったんですけどね。たまに売れてる人が出ると「なんか変わりましたね」とか言われたんですけど、あれは言いたいだけでしょ。

平子:そうだね、あれは言いたいだけだよね。やってることは地獄のように変わってなかったからね。

板川:変わるわけがないですからね。スタッフも演者も変わってないんですから。そもそも、変えたとて、じゃないですか。これまでの蓄積があって時間帯が上がったんだから。だから番組のお笑いの基本軸は同じでした。

――芸人さん以外のキャスティングはどう考えてたんですか?

板川:「会ってみたい」か「いま何してるんだろう」とか、ちょっと興味がある人ですね。326さんとかまさにそう。僕が小学生、中学生くらいのとき、クラスの女子がみんな326さんのグッズを持っていて。調べてみたら、どうやらタイタンに所属しているらしいぞと。会ってみたらすごく不思議な人でした。

平子:326さんは、九州でしか売ってない醤油を毎回差し入れしてくれて、それがすごくいいんですよ。いろいろ探したんですけど、東京には売っていなくて。

板川:九州行って毎回持ってきてくれるんですよね。

平子:あれはいい醤油ですよ。あれのためにまた会いたいもん。

酒井:あと、ボードゲーム作ってるんですよね。

板川:そうそう。326さんはボードゲームメーカーとして相当忙しい人なんです。本来、あまりイジるような人でもない。

――そういう人たちが、何をしてくれるんだろう?という興味ですか。

板川:ひとつ思うのは、ネットニュースが身近になった人たちがディレクターになって、「イジる対象」が変わってきた気がするんです。

 たとえば「飯田圭織バスツアー」ってネット住人からすれば当たり前の話だと思うんですけど、それをテレビでイジると結構まだウケたりして。ネット上のゴシップやスラングが「あるあるネタ」として伝わる時代になってきたのかなとは思います。逆にテレビの中で何度もこすってきた大昔の有名人ゴシップとかはあまりウケない。インターネットが流行ってきてから話題になった、どうでもいい芸能ゴシップとかが意外にウケたり。

――たしかにゲームの懐かしさと、そういったネタの相性は良さそうですね。

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