『FFXIV』による“世界規模の文化祭”ーーファンフェスのライブを振り返る

『FFXIV』による“世界規模の文化祭”

開発チームが率先して楽しんだ世界規模の文化祭

 DAY 2のスペシャルライブには、祖堅正慶を中心に結成されたFFXIV公式バンド・THE PRIMALSが登場した。2014年に結成されて以降、北米、欧州、韓国で開催されたファンフェスで演奏するなどワールドワイドに活動する彼ら。昨年はコロナ禍の状況で残念ながらライブが中止となったが、久しぶりとなるこのステージでどんな演奏を聴かせるのか期待が高まった。



 「今日はギミックもいっぱいなので、目をかっぽじって、耳をかっぽじって楽しんでください!」という祖堅の言葉通り、冒頭から光の戦士たちを歓喜させた。
 闇の戦士アルバートが登場し「アシエンどもをぶっ倒す準備はできているか? いくぞ!」との一声に、コメント欄が一斉に沸いた。1曲目「貪欲」は、腹の底に響く重いリズム、心をざわつかせるように歪んだギター、そして胸を熱くするJason Charles Millerによるハイトーンのボーカル。体を揺らして黙々と演奏するメンバー。きっと多くの光の戦士たちが、ダンジョンボスとの激しい戦いの記憶をよみがえらせたことだろう。

 原曲はかわいらしい女性ボーカルの曲として知られる楽曲を、THE PRIMALS流にキラキラとしたポップロック調のアレンジした「目覚めの御使い 〜ティターニア討滅戦〜」では、「オジターニャ(おじさんの妖精)の歌はどうでしたか?」と照れくさそうに笑う祖堅に、コメント欄には拍手と「サイコー」との声があふれる。



 また「ロングフォール 〜異界遺構 シルクス・ツイニング〜」では、スクエニ社員によるダンサー4人が登場してライブを盛り上げたほか、「過重圧殺! 〜蛮神タイタン討滅戦〜」では、吉Pことスクエニのプロデューサー吉田直樹が乱入して、激しくまくし立てるようなボーカルを繰り出して見る者を沸かせた。これぞファンフェス。光の戦士たちを楽しませるためには、まずは自ら楽しむ。そんなスクエニの精神性が、このライブには反映されている。

 とはいえ初のデジタル開催ということもあり、本番直前ギリギリまでリハーサルと細かな調整が行われていた。祖堅もライブ中のMCで「8,000席誰もいないのは斬新。でもコメントがいっぱいで、みんないるのが分かる。うれしいなこれは!」と、ステージ下のモニターに映るコメント欄を目に、安堵の表情を見せる場面もあった。


 ラストナンバー「Shadowbringers」は、そうしたガランとした客席の映像で始まった。再度アルバートが登場し「あと一歩進む力があったら、THE PRIMALSをぶちのめせるか?」と語りかける。選択肢が表示され「もちろんだッ!」が選択されると、「なら魂ごと持って行け!」と、世界中の光の戦士にアルバートから力が送られた。ヘヴィーで分厚いラウド系のサウンドと、波打つような躍動感が会場に充満した「Shadowbringers」。メランコリックなギターソロが鳴り響き、それに合わせて映し出されるゲームのシーン。ゲーム音楽を超えた世界標準のエモーショナルなロックサウンドに、世界中の光の戦士たちが胸を熱く焦がした。

 こうして幕を閉じた『FFXIV』の“世界規模の文化祭”。THE PRIMALSは、ARCHITECTSで活躍中のサム・カーターをメインボーカルに迎え、2021年11月23日発売予定の拡張パッケージ『ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ』のメインテーマを担当することも決定している。彼らのもう一つの戦いがここから始まった。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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