横浜の脱走ニシキヘビを見つけるのが難しい理由を、パイソン属大発生問題から考えてみた

横浜の脱走ヘビ、なぜ見つからない?

積極的にハンティング。免許は必要なし

 こうしたことから、フロリダではビルマニシキヘビの飼育を2012年以降禁止していますし(それ以前に飼い始めたものは維持可能)、Florida Fish and Wildlife Conservation Commissionは、数を減らすために私有地にいるビルマニシキヘビは積極的に人道的な方法で殺処分することを推奨しています。

 ビルマニシキヘビのハンティングを行う上で厳しいルールはなく、私有地の所有者の許可があれば、免許や許可証などは必要ありません。

 前置きが長くなりましたが、ここでアミメニシキヘビと同じパイソン属であるビルマニシキヘビはどれくらい速く動けるのかを見ていきましょう。VICEが投稿した動画をご覧ください。(ヘビの動きは3分30秒くらいから)

 飼育下のおっとりとリラックスしている時からは想像がつかない速さではないでしょうか。捕獲に躊躇していれば、見失ってしまいそうです。

 サンディエゴ動物園の説明によると、ニシキヘビ属は時速1/6kmほどといわれていますが、攻撃する時は、光の速さだそう。

 しかし、危険を察知した時にも全身筋肉であるボディをくねらせてスピードを出すことができるようですね。

 この動画に登場するビルマニシキヘビハンターは、Tom Rahill氏率いる「Swamp Apes」というグループです。2008年から活動開始し、すでに400体も駆除したのだそう。

 Rahill氏は、普段コンピューター関係の仕事に就いており、副業としてスネークハンターをしており、愛用の道具は、巣穴や隠れ場所の様子を伺うカメラとナイフ、そして素手。

 この日は、脱皮した皮を見つけたことがきっかけでヘビに辿り着いたようです。脱皮は頭から尻尾の順番で行われるため、尻尾の位置からヘビが向かった方向が推測されるのですね。

 捉えられたビルマニシキヘビは、人道的な方法で安楽死させられ、体長と体重を計測されます。今回の個体は卵を持っていたため、その数も確認。お腹には61個入っていたので、将来的に増える個体と母体を含めて62体のビルマニシキヘビを排除することができた計算になります。

 ちなみに、処分したビルマニシキヘビの皮は所有したり売ったりすることができるそうですが、フロリダで育った個体の肉には高濃度の水銀が含まれていることがわかっているため、食用には適さないそう(ニシキヘビは鶏肉みたいな味で結構美味しいんですが…)。

 横浜のアミメニシキヘビがどのような状態にあり、どんな場所にいるのかは未だにわかりません。ヘビが隠れるのにピッタリな場所が数多く存在することと、活動を抑制してしまう気温の低さ、コンパクトになる体や、移動に適した川、さらに巨体に反して俊敏な動きにより、捜索が困難になっているのは間違いありません。

 ただ、これは2014年にエバーグレーズのビルマニシキヘビを使った実験でわかったことですが、大蛇には帰省本能があるらしいのです。GPSをつけて20〜36km離れた場所に移動させた6匹のうち、実に5匹が元いた場所の5km圏内に戻ってきたそう。

 もちろん、飼育下にいた場合と、5km圏内という大雑把すぎる範囲では比較にならないかもしれませんが、たとえ移動していたとしても、やはり近くにいる可能性は高いと推測されるのでは。

 なんにせよ、一刻も早い捕獲を祈りたいです。

■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter

〈Source〉
https://myfwc.com/wildlifehabitats/nonnatives/python/fast-facts
https://myfwc.com/wildlifehabitats/nonnatives/python/removing/
https://animals.sandiegozoo.org/animals/python
https://www.bbc.com/news/science-environment-26635939

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