Post Malone ×『ポケモン』バーチャルライブから探る、現代ヒップホップとゲームの関係性

Post Malone ×『ポケモン』バーチャルライブを見た

 加えて、興味深いのが今年1月にガーディアン誌が公開した「テレビゲームが音楽にとって変わる若者文化になりつつある」という趣旨のコラムだ。同コラムでは、現代の若者の社交場が以前からSNSなどオンラインに移行していることに着目。それがコロナ禍をきっかけに、近年のテレビゲームがソーシャルな体験として設計されている要素も相まって、元々ゲーマーだったかどうかにかかわらず、最近では若者の間でゲームへの関心が高まり、彼らの交流の場が以前よりも増してテレビゲームの世界に移ってきていることを指摘している。

 バーチャルの世界で行われるライブでは、これまでにTravis Scottが『Fortnite』、乃木坂46が『荒野行動』といったオープンワールド型ゲームプラットフォームを利用していることが例として挙げられる。この種のバーチャルライブでは、プラットフォームが持つメタバース的な社会性によって生まれるコミュニケーションが、ユーザーの"現実の追体験"要素を高める一因になってきた。一方、先述の『New ポケモンスナップ』も最新情報によると、世界中の人とスコアを競い合えるランキングシステムや、写真の共有などのオンライン機能が搭載されていることからオンライン・コミュニケーションツールとしても機能する社会性を備えていると言える。

 "オンラインでのコミュニケーション"という点にフォーカスすると、オンラインでユーザー同士がゲームを通じて交流を楽しめるテレビゲームと、今やビートの売り買い、コラボの打診、ライブ配信までもがオンラインで成立するヒップホップは、"現代の若者文化におけるインタラクティブなコミュニケーションを生み出すもの"という点で共通する。そう考えると、ポケモンとPost Maloneのコラボレーションは違和感がなく、むしろ"ラッパー"と"シンガー"の垣根を越えてきたPost Maloneほど、それらの垣根を取り払う人物として的確なアーティストはいないはずだ。その意味では今回のバーチャルライブは、アニバーサリーにかこつけて、ただポケモンが好きなラッパーの知名度を活かし、集客するという以上の価値を踏まえた上で実施されたものと捉えることができそうだ。

 なお、「P25 Music」では、現行ポップカルチャーにおけるアイコンの1人・Katy Perryがプロジェクトのアンバサダーを務め、今後もポケモンの25周年を記念したファン参加型のアニバーサリー企画が展開されていく予定だ。また、今回のライブ終了後には、Post Malone、Katy Perryに加えてJ Balvinが、今秋リリースされるこのプロジェクトのコンピレーションアルバムに参加することも発表されている。それだけに、今後も参加アーティストとポケモンのコラボから目が離せなくなりそうだ。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

〈Source〉
https://www.nme.com/en_au/news/music/watch-a-cgi-post-malone-headline-the-pokemon-25th-anniversary-concert-2890798?amp
https://www.udiscovermusic.jp/news/post-malone-only-wanna-be-with-you
https://hiphopdna.jp/news/14405
https://www.complex.com/pop-culture/2011/11/25-games-featuring-hip-hop-stars-as-playable-characters/5
https://www.thegamer.com/kanye-west-video-game-update/
https://umusic.digital/trippiereddrunner/
https://theguardian.com/commentisfree/2021/jan/11/video-games-music-youth-culture

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