要所に詰め込まれた競馬へのリスペクト ゲーム『ウマ娘』は競馬ブーム再燃の起爆剤に?
『ウマ娘 プリティーダービー』成功の先にある、競馬人気・再燃の可能性
また、実在の競走馬を女の子へと擬人化するゲームデザインから“イロモノ”と見なされやすい『ウマ娘 プリティーダービー』だが、各競走馬の史実に対し、忠実に作られている点も見逃してはならない。
たとえば、メインストーリー第1章の主人公として登場するメジロマックイーンは、名家の期待を背負い、天皇賞春での優勝を大目標に掲げるキャラクターとして描かれている。現実の同馬は、かつての名門・メジロ牧場の生産馬で、祖父・父ともに天皇賞(※)を優勝。そうした血統的背景から長距離(天皇賞春は国内のG1で最長距離となる3,200m)での活躍を期待され、実際に91、92年に同レースを連覇する偉業を成し遂げた。
※当時の天皇賞は、春秋ともに3,200mで開催されていた。メジロマックイーンの祖父・メジロアサマと、父・メジロティターンが勝利したのは天皇賞秋。
このメジロマックイーンのエピソードは一例であり、同タイトルでは、すべてのウマ娘のシナリオ・設定が史実に基づいて構成されている。かねてより競馬ファンだったプレイヤーのなかには、第2章・ライスシャワーのシナリオのその先を想像し、特別に感情移入してしまった人も多くいたに違いない。
こうした現実の競馬文化に対するリスペクトは、往年のファンの心に訴えかけるだけのものではない。『ウマ娘 プリティーダービー』で同文化に足を踏み入れたプレイヤーが、そのロマンへと没頭するきっかけともなるものだ。
これまで、スターホースやアイドルジョッキーの登場などによって盛り上がってきた競馬文化。『ウマ娘 プリティーダービー』はスマホゲームのカルチャーから同文化を盛り上げていく、異質の存在となるのかもしれない。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro