AIから生じた問題はAIが解決する時代ーー脱炭素を巡る“CodeCarbon開発”から考える

AIから生じた問題はAIが解決する時代

 2020年11月、菅義偉の「温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という発言は随所に波紋を呼んだ。その後、欧州をはじめ、世界各地の政府が次々と対応に乗り出すなど、CO2排出量に対する取り組みは急展開を迎えている。

 テクノロジーメディア「ITP.Net」によると、カナダケベック州モントリオールに拠点を置き、AI分野のグローバルリーダーに君臨するMilaを筆頭に、米国の大学やクラウドサービスの企業から成る研究チームが、カーボンフットプリントを追跡可能なオープンソースソフトウェア「CodeCarbon」を開発。ちなみに、「CodeCarbon」はPythonコードベースによるシームレスな接続を可能とする。

 2019年7月、AIを訓練する際に排出されるCO2の量は平均的な自動車の製造から廃車に至るまでに排出される量の5倍という内容の論文をマサチューセッツ大学アマースト校の研究チームが発表し、物議を醸した。対象となったのはTransformer、ELMo、BERT、GPT-2に代表される自然言語処理系のAI。特にニューラル・アーキテクチャ・サーチと呼ばれる分野で、多大な時間と労力と費やすと同時に、尋常でない量の電力を消費していることを明らかにした。研究者らは、より自然な言語理解のために試行錯誤して学習した結果であると結論づけている。AI開発の現場では新しいモデルをゼロから作ったり、既存のモデルに新しいデータを適用させたりといったことが行われているが、ひとつ言えるのは、実際はこれらの工程を通じて、マサチューセッツ大学の研究チームにより報告された数値以上のCO2が排出されているかもしれないという点だ。

 環境への影響が懸念されているとはいえ、世の中はコロナ禍を機にテレワークや遠隔診療の本格稼働に向け動き出しており、AIの使用をとりやめにするという選択肢はあり得ない。そんななか、Milaを筆頭とする研究チームにより開発されたのが「CodeCarbon」である。「CodeCarbon」の追跡メカニズムモジュールはクラウド提供者やデータセンターによる電力使用量データを蓄積しており、ハードウェアに接続される電力系統を統計的に解析しながら、オープンデータを駆使してCO2排出量を概算。AI開発者に対し、どのクラウドインフラを選択すればCO2排出量が少なくて済むかを提示することが可能であるという。ボストンコンサルティンググループの専務取締役、BCG GAMMAのグローバルリーダーを兼任するシルヴァイン・デュラントン氏は、「組織は少ない労力でカーボンフットプリントの増加を確認することができる画期的な方法である」とコメントしている。

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