『news zero』制作陣に聞く、ネット生番組『Update the world』に込めた思い 「ニュースを“じぶんごと”にするきっかけに」
ネットコンテンツに必要なのは“奥深さ” わかりやすさとの両立を目指す
ーー“コンダクター=旗振り役”には、『news zero』水曜パートナーの辻愛沙子さんを起用しました。その経緯についても聞かせてください。
白川:辻さんは『zero』でご一緒しているパートナーの中で最年少なんですが、彼女と打ち合わせで話していると、25歳の彼女が見ているリアルな社会が浮かび上がってきて、学ぶことが多いんです。その学びの中から『Update the world』のコンセプトが生まれた部分がありますので、自然と辻さんを中心にした番組づくりをイメージしていました。
辻さんって、『zero』では自分の考えをコンパクトに整理してお話しいただいているんですが、本当は伝えたいことがもっとたくさんある人で、打ち合わせには放送で話す時間の何十倍もの時間がかかっているんです。放送ではお伝えしきれない辻さんのものの見方や、彼女と同世代のリアリティをお届けしたいとは以前から思っていました。
ーー井上さんから見て、辻さんはどんな方ですか?
井上:とてもクリエイティブで、発信者でありながら話を引き出す能力も一流ですね。会社を経営しながら常にいろんなことを考えていて、24時間頭が休んでいないように見えます。
以前大坂なおみさんにインタビューをした際も、もちろん英語は話せますし、ジェンダーや人種差別問題への理解、そして聞く力がずば抜けていました。情報発信力と、話を引き出す力、どちらもあるのはすごいことです。
ーー『zero』は、20〜30代の人に刺さるキャスティングやカルチャー面での企画の発信をされていますよね。配信で若い世代に情報を届けるにあたって、エンタメ的な切り口やキャッチーさ、わかりやすさは意識しましたか?
白川:若い方向けだからわかりやすくしよう、という考えはないですね。地上波のニュース番組はあらゆる世代に見ていただくからこそ、よりわかりやすさが重要になってきますから。
ネット配信のテレビと違うところは、積極的に見たい人だけが見にきてくれることです。能動的に見にきていただかないといけないので、わかりやすいことはもちろん、ある程度掘り下げた奥深さや、おもしろさが必要になってくると思います。ネットコンテンツで必要とされる専門性と、地上波テレビが得意とするわかりやすさを両立する方法を模索しているところです。
ーーより易しいレベルに落とすのではなく、むしろ深く掘り下げることが必要なんですね。
白川:わかりやすさは地上波テレビが一番得意としていることなので、その良さを残したまま、ネットのコンテンツを作っていきたいです。
ーー第1回の放送時間を日曜のお昼に選んだのはなぜなのでしょうか?
白川:初めての挑戦なのでいろんな時間で試してみたくて、初回はあえて『zero』と真逆の日曜のお昼を選びました。第2回、3回は違う時間帯で配信する予定です。
井上:できることなら1時間全て通して見ていただきたいので、視聴者が見やすい時間を考えています。ここは実験的にそれぞれの枠で挑戦して、今後について考えていきたいと思います。
取材やVTRは全て封印 トークに徹する1時間に
ーー我々ネットメディアが思う配信と、テレビ局の方が思う配信はそれぞれ違うと思うのですが、お2人にとってネット配信ならではの強みはどんなところですか?
井上:ネット配信の良さは、視聴者を巻き込んでいけることだと考えています。『zero』は「ニュースをじぶんごとに」というコンセプトのもと、有働(由美子)さん、櫻井(翔)さんのトークやVTRを通じて考えるきっかけを提供しているのですが、1時間という制限もあって、じぶんごとにしてもらうための消化する時間までは用意できていないんです。そこで、ネットで1時間にわたってトークすることで『zero』でやっていることの延長線ができるんじゃないかと考えました。
『Update the world』では、Twitter上で視聴者に質問を投稿してもらって、それに答えながら番組を進行していきます。ゲストのパンサー向井(慧)さんには、視聴者に一番近い立ち位置で、皆さんと一緒にアップデートしていく存在になっていただきたいと思っています。地上波では視聴者との繋がりを持つことができにくかったので、コミュニケーションの場がもてることにすごくドキドキしています。そこに活路を見出して、次世代のテレビ局のあり方が模索できればいいですね。
白川:井上の意見と同じで、やはりじっくり話ができるのが良いところですね。地上波で一つのテーマについて10分喋るとなると、すごく長く感じると思うんです。地上波のテンポ感ってかなり特殊で、情報をぎゅっと圧縮して、濃度の高いジュースを提供しているイメージです。濃度の高いものだけが必ずしもおいしいわけではないので、じっくりお話できるネット番組に挑戦してみました。我々が得意としている、取材をしてVTRを作ってお伝えするという手法は全てやめて「60分ただトークする」という振り切った構成になっています。ネットならではの地上波でできていないことに挑戦していきたいですね。
ーーこれは個人的な印象ですが、『zero』は夜のニュース番組として、Twitterを使ったリアルタイムでのコミュニケーションをいち早く取り入れていたように思います。
井上:Twitterは、今や『zero』と一体化したツールとなっていますね。コロナ禍で立ち上がった「感染したから伝えたい」というコーナーがすごく良い例です。Twitterにハッシュタグ「#感染したから伝えたい」をつけて投稿してくださいと呼びかけると、多くの感染した人が自分の経験を書き込んでくださいました。その中の一部の方に追加取材をさせていただいて地上波で放映するという良いサイクルもできています。偽情報の確認はもちろん必要ですが、Twitterはすでに『zero』の一部ですね。
白川:僕も同じ考えで、Twitterはなくてはならないツールですね。視聴者の方が当たり前に利用しているのだから、僕ら番組サイドもそうあるべきだと思うんです。視聴者との新たな繋がりが生まれるものであれば、使わない手はないですね。昔だと自分の番組の評価や視聴者のリアクションは、電話や寄せられた一部のものからでしかわからなかったのですが、今って検索するだけで感想が見られますからね。手厳しい意見も含めて、皆さんの声を知ることができるのはとてもありがたいです。
ーー『zero』は双方向のコミュニケーションが盛んなので、「番組の一部」という表現がとてもしっくりきました。
井上:『zero』は、社会をより良くする原動力やプラットフォームでありたいと本気で思っています。他のスタッフもみんな熱い人たちばかりで、“夢見がちな大人”が集まって1つの番組を作りあげています。
■『Update the world』番組概要
『news zero presents Update the world』
初回配信日時:1月31日(日)ひる12時~13時ごろ
※第2回配信予定 2月26日(金)よる
※第3回配信予定 3月27日(土)夕方
形式:インターネット生配信+アーカイブ再生
媒体: TVer/Twitter による動画配信
出演者:辻愛沙子(news zero水曜パートナー・クリエイティブディレクター)
岩本乃蒼(日本テレビアナウンサー)
<ゲスト>
向井慧(お笑いトリオ「パンサー」)
松岡宗嗣(ライター/fair代表理事・ゲイ公表)
岡部鈴(「電通東日本」経営企画部長・トランスジェンダー公表)
チーフプロデューサー:遠藤正累
プロデューサー:井上幸昌、渡邉真誉
企画演出:白川大介
総合デスク:大井秀一
製作著作:日本テレビ
番組公式HP:https://www.ntv.co.jp/utw/
番組公式Twitter:https://twitter.com/updatetheworld4