“あの人のゲームヒストリー”第十五回:宇内梨沙
「勇気はゲームが育んでくれた」 TBS・宇内梨沙アナウンサーが語る“ゲームへの愛情と実況ch開設の経緯”
ルーツにあるのは“自分を飾らない実況動画のDNA”
ーー宇内さんの人生はずっと、ゲームがうまく作用してきたんですね。
宇内:人間関係で悩んでいる時に『ファイナルファンタジー』の素敵な世界に逃避できたことにはすごく感謝しているし、何より人生の節々で自信がつくきっかけになったんですよね。中高の頃はニコニコ動画にもハマって、ガッチマンさんや訛り実況のキリンさん、コジマ店員さん、最終兵器俺達さんなど主にホラーゲームを実況する方たちの動画をよく見ていました。特にコジマ店員さんは印象深くて、最初に「プレイボール!」って掛け声を出して、スポーツ中継みたいに元気よくゲームの様子を実況していくんですよ(笑)。
ーーニコニコ動画にはYouTubeと違ってコメントがリアルタイムで動画に流れていく機能がありますが、コジマ店員さんのゲーム実況も、独特の盛り上がりがありましたよね。
宇内:ゲーム実況者の方とコミュニケーションが取れることにすごく価値があると思います。私にはゲームの話をできる相手が兄ぐらいしかいなくて、ネットはそういう趣味を共有できる数少ない場所だったんですよね。あくまで動画を見る、コメントを書くって間接的なコミュニケーションでしたがとても満たされてたと思います。
ーー宇内さんはラジオでもたくさん人の話を聞かれますし、一方で鋭い質問を時々されて、すごく素直な価値観をお持ちですよね。
宇内:あんまり自分を騙れないのはあるかもしれないです。YouTubeだって先輩に聞かれたらまずいなって口調になっちゃう時もあるし、気づいたらYouTubeで「宇内梨沙」って検索するとその次に「面白い」って来てしまうようになって(笑)。
ーーだってPS5を入手して一番最初に挑戦したゲームが、あの難しいことで有名な『Demon's Souls』ですよね。
宇内:そうですね、死んでしまってほとんど最初まで戻された時は「え? ここまで戻されちゃうの?」ってビックリしました。説明なんかも本当に必要最低限しかなくて、あとはおまかせします、というスタイルがすごく新鮮で。
ーーウェブカメラに映る表情なんかも、すごい真剣で、ただ「かわいい」を前面に出すゲーム実況ではないですよね。
宇内:女性アナウンサーなら他にやり方もあったと思うんですが、やっぱり中高生時代に見ていたゲーム実況が脳裏に焼き付いていて、彼らは喜怒哀楽を前面に出したり、臆面もなく絶叫したり、ああいう自分を飾らない実況動画を面白いと思って見ていたので、そのDNAが脳内にあって。ああいう実況だと一番視聴者の方と一体感を得られると思うので、だから女子アナウンサーらしく振る舞うよりも自分らしく実況することが一番楽しんでいただけるのかなって。
ーー良い意味で宇内さんの実況スタイルは「女子アナ」的な概念から離れていると思うんですが、躊躇いなどありませんでしたか?
宇内:ゲーム実況それ自体が、アナウンサーがするものなのかという疑問もありますよね。こう言うと少し生意気に思われるかもしれませんが、これからはアナウンサーに限らず、肩書よりもその個人に何ができるのかが問われるようになると思うんです。アナウンサーだけではなく、タレントの方がアナウンサーのような仕事を受けたり、アーティストの方がMCをしたり、今も色々な仕事で一種のクロスオーバーが起きています。そういう変化をポジティブに受け入れて、自分も楽しんでいきたいし、見ている方にも喜んでもらえたら勝ちだと思うんです。
ーーそもそも「女子アナ」という概念をどう思っていますか?
宇内:「女子アナ」という言葉自体は嫌いじゃないですよ。ただ言葉に込められたイメージは変わっていくべきだとは思います。でもまさに今が過渡期というか「女子アナ」の型を破っていく女性アナウンサーもたくさんいるじゃないですか。「女子アナなら女子アナらしくあれ」みたいな時代は、もうあと十数年で変わると思います。ただ、そのためにも自分から行動していくことは大事だと思っていて、ニュース読みや進行といったアナウンサーとしての仕事は努めますが、ラジオなどでは特に“女子アナ然“としたものは捨て去っています(笑)。