糸田屯が選ぶ、2020年のゲーム音楽配信リリース作品10選
連載第2回では、2020年のまとめとして、今年発表されたゲームサウンドトラックから、配信リリース作品を中心に、個人的なお気に入りを10タイトル選んだ。
『パズル探偵スカウト 失われたデータの陰謀』
1990年代のロサンゼルスを舞台とした、日英合作(開発はMediatonic)のパズル&ミステリーアドベンチャー『パズル探偵スカウト 失われたデータの陰謀』。ディレクターの熱烈なラブコールにより、音楽は初代『逆転裁判』や『ゴーストトリック』などを手掛ける杉森雅和が担当。ハートウォーミングなエレクトロポップやミステリアスなピアノスコア、ジャズ/フュージョンのスパイスが盛り込まれ、「スタイリッシュ」と「メロディアス」をしっかりと両立させる杉森の持ち味が発揮された充実度の高い内容になっている。サントラはSteamにて、アートブックとのセットでダウンロード販売されている。
『深世海 Into the Depths』
Apple Arcadeでの配信を経てNintendo Switch版が発売された、カプコン開発の潜水探検アクション『深世海 Into the Depths』。“水中感”を追求した音響・効果音のこだわりもさることながら、音楽面ではベルリンを拠点に活動するドラマー/コンポーザーの青島主税(あおしま・ちから)を起用。ミニマル、アンビエント、エレクトロニカ、プログレの要素が多彩なリズムパターンのもとに絡み合い、環境音楽に強くアプローチしたゲーム音楽としてみても興味深い。マスタリングは名手・オノセイゲンによるもの。
『One Step From Eden』
Thomas Moon Kang開発による、スピード感あふれるデッキ構築型ローグライクアクション『One Step From Eden』の音楽は、FMサウンド、ピアノ、シンフォニック要素を絡めたレトロモダンなシンセフュージョンが炸裂する。メインコンポーザーの「はがね」こと早瀬圭佑は、コナミの『SOUND VOLTEX』やRayArkの『VOEZ』など、国内外の音楽ゲームへの楽曲提供でキャリアをスタートさせ、同人音楽シーンでも精力的に活動する人物。今後も要注目だ。
『Horizon Vanguard』
レトロモダンな味わいというところでは、『バーニングフォース』『ボーダーダウン』『ダライアスバースト』からインスピレーションを得た、David "Tain" Williams開発によるVRシューティングアクションHorizon Vanguard』もオススメしたい。アレンジャーとしても幅広く活躍する「coda」ことケン・スナイダー(Ken Snyder)が、往年のナムコやコナミのアーケードタイトルを想起させる、爽やかで抜けのよいシンセフュージョンだ。
『VirtuaVerse』
Theta Division開発の『VirtuaVerse』は、ヘヴィ・メタル/シンセウェイヴ系アーティストを擁するフィンランドのレーベル〈Blood Music〉がパブリッシャーとして関わり、イタリアのユニット、MASTER BOOT RECORDが音楽のみならず原案やストーリーも担当した一作。メロディアスなFMサウンドとダークなインダストリアルメタルが交錯し、ピクセル描写のサイバーパンクアドベンチャーを印象づける。MASTER BOOT RECORDはゲームに先駆けアメリカの老舗ヘヴィ・メタル・レーベル〈Metal Blade〉と契約を交わし、アルバム『FLOPPY DISK OVERDRIVE』で3月にメジャーデビューも果たした。