『Fall Guys』のサントラからたどる、Jukio Kallioの多彩な音世界

『Fall Guys』のサントラを紐解く

 2020年8月にリリースされるやいなや、世界中でブームを巻き起こした、Mediatonic開発による大規模オンラインスポーツアクションゲーム『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)。カラフル&コミカルなゲーム性もさることながら、にぎやかなコーラスやファンキーなスラップベース、そして転調が随所に盛り込まれたシンセポップサウンドに、やみつきになってしまった人も多いだろう。

 『Fall Guys』の音楽を創りあげたのは、日本で生まれ育ち、フィンランドを拠点に活動するコンポーザー/シンガーソングライターのユキオ・カーリオ(Jukio Kallio)と、フィンランドを代表する音楽スタジオ、Finnvox Studiosのマスタリングエンジニアであるダニエル・ハグストロム(Daniel Hagström)。bandwagonbandcamp dailyのインタビューによると、当初の音楽的なアイデアには「1970~1980年代のスポーツ番組のテーマ」があり、様々なオモチャや家庭用品を使って数々のオーディオサンプルの録音に励んでいたという。他の制作メンバーとのアイデアのすり合わせを経て、最終的に音楽はシンセサイザーをメインとしたよりモダンな方向性に行きついたわけだが、彼らの遊び心あふれる姿勢を伝えるエピソードとして興味深い。

 ユキオと古くからの友人であり、フィンランドのトップアーティストの作品も数多く手がける敏腕エンジニアのダニエルは、多くの時間を費やしてあらゆる音の細部に気を配り、ユキオの楽曲のポップな純度をより高めることに貢献している。エネルギッシュでポジティヴかつ、繰り返し耳にしても聴き疲れしないサウンドは、2人の才人の共同作業の賜物なのだ。10月8日よりスタートしたシーズン2「Medieval Knockout」では、中世ヨーロッパのテーマにちなんでフォーキー/クラシカルなエッセンスを散りばめたメインテーマ「Everybody Falls」の新アレンジを筆頭に、4つの新曲が制作された。ハロルド・フォルターメイヤーの名シンセテーマ「Axel F」へのオマージュも感じさせる「Beans of the Round Table」に思わずニヤリとしてしまう。配信を予定しているシーズン3「Winter Knockout」ではどのような楽曲が飛び出すか、心待ちにしたい。

Beans of the Round Table
 

 ここからは、幅広い音楽性をフレキシブルに展開するユキオのこれまでの活動、ディスコグラフィについて大まかに紹介していきたい。2011年に音楽活動を開始した彼は、ほどなくしてオランダのインディーゲームスタジオ、Vlambeerのタイトルに関わるようになる。『Yeti Hunter』(2012)ではアンビエント、『GUN GODZ』(2012)ではエレクトロ・ヒップホップ、『LUFTRAUSERS』(2014)ではチップチューン&ミリタリー、『Nuclear Throne』(2015)ではブルース、カントリー、オルタナティヴ・ロック、シンフォニックサウンドのミクスチャーを聴かせる。エンニオ・モリコーネのマカロニ・ウエスタン音楽から大きなインスピレーションを得て、全面的にアコースティックギターとハーモニカをフィーチャーした『Nuclear Throne』のダークな哀愁の音楽は、彼の作風に一つの転機をもたらした重要作だ。

Jukio Kallio, Music Composer Showreel 2017

 同時期に発表した『Scuber』(2015)は、架空のアクションゲームのサントラ、という変わり種だ。日本語ボーカルのエレクトロボサノバソングがクセになる。Studio Bean開発の『Choice Chamber』(2015)のサントラは、往年の日本のRPGからのインスピレーションを柔和なシンセサウンドで表現したフォークトロニカ。Neople開発のアプリゲーム『Evil Factory』(2017)ではバウンシーなチップチューン/エレクトロサウンドを聴かせ、『BLEED 2』(2017)ではスーパーファミコン時代へのリスペクトを込めたシンセロックで突き抜ける。ユキオを含めわずか4人のメンバーで開発された『Minit』(2018)では華やかで切ないローファイサウンドが、幾度となく繰り返される一分間の冒険に寄り添い、Q-Games開発の『PixelJunk Monsters 2』(2018)ではアンビエントポップで穏やかな空気を醸しだす。

 ユキオはゲーム音楽と並行してオリジナル楽曲をコンスタントなペースで発表している。デビューから2015年までは〈Kozilek〉の名義を使用しており、SoundCloudで発表したダンスポップ/アンビエント曲からセレクトされた『From SoundCloud Vol​.​1』をまずは聴いてみるといいだろう。その後、ユキオ自身の心境の変化にともなって2016年に〈Kuabee〉に名義を変更し、同年10月にEP「So It Has Come to This」、2019年にアルバム『Kuabee Music』を発表。マルチリンガルなシンガーソングライターとしても非凡な才能を開花させていく。今年6月には、久しぶりに再会した友人たちと制作した日本語ソングを収めたEP「Natsukashii」、10月にはユキオ・カーリオ名義では2作目となるアルバム『Kuvankaunis』を発表。艶やかなミニマルドリームポップで、ユキオ独自のハートウォーミングな世界を確立させている。彼がたゆまず育み続けた歌心が、多くの人の耳に届くことを願ってやまない。

Jukio Kallio – Sä Oot Olemassa (Official Music Video)

■糸田 屯(いとだ・とん)
ライター/ゲーム音楽ディガー。執筆参加『ゲーム音楽ディスクガイド Diggin’ In The Discs』『ゲーム音楽ディスクガイド2 Diggin’ Beyond The Discs』(ele-king books)、『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)。「ミステリマガジン」(早川書房)にてコラム「ミステリ・ディスク道を往く」連載中。



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