2021年の公演も決定! “舞台”に立つ勇気伝えた『初音ミクシンフォニー2020』横浜公演レポート

『初音ミクシンフォニー2020』横浜公演レポ

 「ボーカロイド」と「フルオーケストラ」という異なる音楽ジャンルを結び、多くの観客を魅了してきた『初音ミクシンフォニー』。その5周年を記念した『初音ミクシンフォニー2020 ~5th Anniversary~』が、11月27日の大阪公演で幕を閉じた。セットリストのネタバレも含め、パシフィコ横浜国立大ホールで開催された横浜公演の模様を振り返りたい。


 2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、延期や中止という判断を迫られた音楽イベントは数知れず、『初音ミクシンフォニー』も例外ではなかった。万全の対策を整え、9月21日に開催された東京・サントリーホールでの公演は、“オーケストラコンサート”の概念をいい意味で覆してきた、これまでの賑やかなステージとは違い、「歓声」を控えた静謐なムードに。華やかな照明や映像も、ボーカロイドによる歌唱もなく、史上初となる全編フルオーケストラのみの公演はしかし、万雷のスタンディングオベーションが送られる印象深いものになった。

 そして迎えた横浜公演は、スクリーンに映し出された初音ミクの「ずっと、待ってたよ」という一言からスタート。オープニングを飾ったのは、サントリーホールで初披露となった、ジミーサムPの書き下ろしによる『初音ミクシンフォニー』5周年のテーマソング「舞台」だ。

 前向きなイメージを広げる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏に合わせて、初音ミクが歌う。テーマソングにふさわしいアンセムだが、観客が声を合わせることができないいま、その歌詞は“舞台に立つ者の覚悟”を伝える独白にも聴こえてくる。<ここは舞台だ。><胸を打つ準備を。>――コンサートが本当に開催できるのか。先行きが不透明ななか、新規楽曲も完全な形で仕上げて”舞台”に立った音楽家たちの姿に、早くも胸が熱くなる。

 ボカロファンの誰もが知る「メルト」(ryo(supercell))から、「白い雪のプリンセスは」(のぼる↑)、「深海少女」(ゆうゆ)と、優しく切ない物語を紡ぐように名演が続く。かと思えば、鏡音リン・鏡音レンが登場し、「メランコリック」(Junky)、「劣等上等」(Giga)と、キュート&刺激的な楽曲を呼び込む。尖った個性を持った楽曲が揃い、ジェットコースターのように心を揺さぶり続けるのが、『初音ミクシンフォニー』の大きな魅力だと再認識させられるセットリストだ。


 テーマパークのように楽しく、ジャズバーのように粋な時間は続く。サントリーホール公演でも大好評だった「Alicei in Musicland」(OSTER project)から、2021年でデビュー15周年を迎えるKAITOをフィーチャーした「ドクター=ファンクビート」(nyanyannya)、「番凩」(仕事してP)、「千年の独奏歌」(yanagi)のメドレーへ。いずれもジャズアレンジが施され、無意識にリズムを取ってしまう。

 巡音ルカをフィーチャーした「No Logic」(ジミーサムP)、そして何度聴いてもオーケストラでの再現に驚く「初音ミクの消失」(cosMo@暴走P)で盛り上がり、さらに、Giga × Mitchie Mという豪華な座組みで今年8月に公開された「ワーワーワールド」、DECO*27が12月16日にリリースする7thアルバム『アンデッドアリス』に収録される「依存香炉」と、新しい楽曲が盛り込まれたのもシーンを追いかけてきたファンにとってうれしいことだった。


 おそらく、多くのファンがかろうじて涙腺を緩めずに済んだのはここまでだろう。昼公演では、いつでも音楽に対する純粋な思いを伝えてくれる「ハジメテノオト」(malo)、夜公演では星空に思いを叫びたくなる「SPiCa」(とくP)。それに続く本編最終曲は、美しいメロディと叙情的な歌詞で、締め付けるような切なさを湛えた人気曲「glow」(keeno)だった。<夕暮れの涙が出そうな赤 私の中の君を溶かしてしまえ>――ミクの歌唱はなかったが、印象的なサビのフレーズが深い余韻となって心に響く。

 さらに、アンコールとして披露されたのは、前に進む強い意志を伝え、観客を鼓舞する「ブラック★ロックシューター」(ryo(supercell))、そして、悲しみもよろこびも超越する、優しさを湛えた「Last Night、Good Night」(kz(livetune))と、いまのような時期だからこそ、そのメッセージが増幅して伝わる2つの名曲で、公演は幕を下ろした。


 ブラボーの声も、指笛の音もなく、ただホールに響くのは鳴り止まない拍手の音。気兼ねなく歓声を送ることができるようになる日が待ち遠しいが、さまざまな制限のなかでも、楽曲に込めたクリエイターの思いが届き、生き生きとしたボーカロイドたちの姿が想像される、心に残るコンサートだった。

 そして本日の大阪公演で、『初音ミクシンフォニー2021』の開催決定が発表された。新型コロナウイルスの猛威がいつ収束するか、まだ先の読めないところだが、どんな状況でも、ホールに足を運べばボーカロイドたちと卓越したオーケストラが、観客の心を踊らせてくれる。そんな確信を胸に、詳細の発表を待ちたい。

「初音ミクシンフォニー2019」の「Dolby Atmos®」音源がリリース!

・タイトル
Hatsune Miku Symphony ~5th Anniversary Dolby Atmos Edition~

・リリース日
2020年11月27日(金)

・収録曲
(初音ミクシンフォニー2019音源)
1.1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク
2.メモリ feat.巡音ルカ
3.ねぇ、どろどろさん feat. 鏡音リン
4.on the rocks
5.ピアノ×フォルテ×スキャンダル feat. MEIKO
6.ピアノ五重奏・名曲メドレー(トルコ行進曲 - オワタ\(^o^)/、嗚呼、素晴らしきニャン生)
7.Catch the Wave
8.たいせつなこと feat. 初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO、重音テト
9.カンタレラ
10.SPiCa feat. 初音ミク

・配信リンク
https://WarnerMusicJapan.lnk.to/hms2019daPu
※「ドルビーアトモス」音源をお楽しみ頂くには、Echo Studioが必要です。

「初音ミクシンフォニー2020~5th Anniversary~」横浜公演のBlu-ray&CD発売決定


『初音ミクシンフォニー ~Miku Symphony2020 オーケストラライブBlu-ray』
・価格
¥6,000+税
・品番
WPXL-90246
※数量限定5周年記念ホログラム仕様缶バッジ封(7種ランダム)

『初音ミクシンフォニー~Miku Symphony2020 オーケストラライブCD』
・価格
¥3,000+税
・品番
WPCL-13266/7

関連リンク

【初音ミクシンフォニー5周年テーマ曲】舞台【初音ミクオリジナル曲】
https://youtu.be/Oh7oLGK6ORc
Hatsune Miku Symphony 2020~5th Anniversary~2020.09.21 at SUNTORY HALL
https://youtu.be/4J5KJpvgLAU
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルサイト
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルツイッター
https://twitter.com/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー2019】1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク【オーケストラ ライブCD】
https://youtu.be/CdRig4N6qrk
【初音ミクシンフォニー2019】横浜公演ダイジェスト映像【オーケストラ ライブCD】
https://youtu.be/59VcXf8Ek3U

© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

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