ディスタンスパンクが生み出す空間移動のノスタルジー:宮本道人氏×松永伸司氏インタビュー(後編)

宮本道人氏×松永伸司氏インタビュー(後編)

ディスタンスパンクという世界観

松永:仮にこういう状況があと数年で終わって元の生活に戻ったとすると、高度に発達したディスタンス社会を描いたフィクションのジャンルが将来登場するかもしれません。「スチームパンク」ならぬ「ディスタンスパンク」みたいな。逆に、コロナ禍が収束せずに何十年と続いていくとしたら、これまでの現実のあり方自体が「古き良き時代」的なレトロ趣味のコンテンツになるかもしれません。いずれにせよ、コロナ禍の状況は、今後の芸術表現の素材のひとつになると思います。

宮本:現状でも職業柄これまでどおり外に出なければならない人たちはいるし、インターネット上でどのくらいつながりを作れるかも人それぞれ。そういった生活環境や主義の違いによって、ディスタンス時代におけるカルチャーは将来的に二極化していくのかもしれません。

松永:確かに職業や雇用形態の違いによって外へ出なければならない頻度が異なるというのは、ディスタンス社会を語る上で重要な論点だと思います。正社員はリモートなのに派遣の人たちは出勤を強いられているという話は、身の回りでも聞いたりします。結果として、「コロナ禍以前/以降」みたいなとらえ方に対する態度にも違いが出てきたりするのかもしれません。

 その態度の違いは、個々人の趣味の問題というよりは、社会階層の問題になるでしょうね。なので、これまで挙げてきたディスタンス時代ならではの文化が、ハイカルチャーというか、外で働かなくても済む「上流」の人々の文化みたいな含みを持つこともありえると思います。その時はディスタンス・アートが階級対立につながるかもしれませんね。

(画像=Pixabayより)

■Ritsuko Kawai / 河合律子
ライター・ジャーナリスト。カナダで青春時代を過ごし、現地の大学で応用数学を専攻。帰国後は塾講師やホステスなど様々な職業を経て、ゲームメディアの編集者を経験。その後、独立して業界やジャンルを問わずフリーランスとして活動。趣味は料理とPCゲーム。ストラテジーゲームとコーヒーが大好き。Twitter

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