AIの発展は新たな差別を生み出すか? 『SAOアリシゼーション』で投げかけられた問い

 川原礫原作のライトノベルをアニメ化した『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』の放送が佳境を迎えている。

 『ソードアート・オンライン アリシゼーション(SAOアリシゼーション)』編は、アニメ第3期にあたる。ゲームの中での死が現実の死になるというデスゲームを生き延びた本作の主人公キリトが今回挑むのは、仮想世界の中でAIによって生み出された新しい命をめぐる戦いだ。キリトはある事件に巻き込まれ、意識不明の重体となるが、その意識はアンダーワールドという仮想世界へと送られ、キリトはその仮想世界で生まれたAIたちと過ごすことになる。

 その背後には日本政府が主導する「アリシゼーション計画」なるプロジェクトがあった。それは人間と同等の知能と判断力を有するAIを開発し、軍事転用するもので、キリトはそのプロジェクトに半ば強引に巻き込まれる形でアンダーワールドでの戦いに身を投じることになる。

 この『SAOアリシゼーション』は、人類が未来に直面しうる問題をリアルに描いたものだと言える。なぜなら、本作が描くAI開発のあり方は、現実の議論とも大きくリンクしているからだ。

トップダウン型AIとボトムアップ型AI、2つの開発手法

 『SAOアリシゼーション』は、生命とは何かという問いに、AI開発の視点から迫った物語を言える。

 AI開発は現実世界でもブームとなっている。ディープラーニングという学習方法によってAIの学習速度は飛躍的に高まり、様々な分野での活躍が期待されている。

 しかし、本作で提示されるAI開発のあり方は、現在のディープラーニングなどによる開発とは根本的に異なる。

 第6話「アリシゼーション計画」の中で、AI開発には2種類のアプローチがあると説明されている。トップダウン型とボトムアップ型だ。これはフィクションの想像力ではなく、現実でも同様だ。

 アニメ本編の6話でこの2つのアプローチは以下のように説明される。

「トップダウン型は、プログラムに知識と経験を積ませ、学習によって最終的に本物の知性へと近づけようというものだ。だが、トップダウン型は学習していないことには、適切な反応ができない。つまり、現状では真に知能と言えるレベルには達していないんだ。対して、ボトムアップ型、これは人間の脳、脳細胞が1千億個連結された生体器官の構造そのものを人工的に再現し、そこに知性を発生させようという考え方だ」

 慶応義塾大学理工学部教授の栗原聡氏は、「ほぼすべての工学製品がトップダウン型の設計方法でつくられるのに対し、生物はボトムアップ型の方法で進化してきました」と語る。機械と生物は真逆のアプローチで進化してきたのだ(https://www.data-max.co.jp/article/32873)。

 現在のAIはディープラーニングの登場以降、加速度的な進化を遂げているが、その開発アプローチはほとんどトップダウン型である。その意味で、今のAIが今後どれだけ進化するかはわからないが、それが生物と見なせるような存在になるかは不透明といえる。トップダウン型では学習していないことには的確な判断を下せないからだ。

 対して『SAOアリシゼーション』では、ボトムアップ型のAI開発に成功している。前述の栗原氏は、ボトムアップ型の進化とは、個々のパーツが生き残るために他のパーツと結合し、それを繰り返すことで進化していく過程を指す。確かにAIがそのように進化するとなれば、それは生物の進化と同等のものであると言えるかもしれない。

 その意味で、ディープラーニングによってどれだけ多くのことを学習させたとしても、トップダウン型のAIはどこまでいっても「ものすごく頭の良い機械」でしかないと言えるかもしれない。対して『SAOアリシゼーション』は、新しい人類と呼んでもさしつかえない存在を生み出しているのだ。

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