単なるノスタルジアの枠に収めるのは勿体ない! 今年最高に格好良いゲーム『トニー・ホーク プロスケーター 1+2』
過去から現代までのストリート・クラシックが凝縮された最高のサントラ
本作の素晴らしさを語る上で欠かせないのがサウンドトラックである。そもそも本作が実際のプロスケーターの面々が登場したスケート・カルチャーを体現するものであることを踏まえると、もはや音楽は最重要項目であるといって良いだろう。そこには絶対に大きなラジカセかポータブルスピーカーが必要がなければならないし、ロックやヒップホップが鳴っていなければならないのだから。というわけで、本作のサウンドトラックにはGoldfinger "Superman"やDead Kennedys "Police Truck"、Rage Against The Machine "Guerrilla Radio"といった原作に収録されていたクラシックの数々がほぼ全曲、再収録されており、1999年~2000年当時のストリート・カルチャーの空気を見事に蘇らせている。
さらに嬉しいのは、それらに加えてA Tribe Called Quest "Can I Kick It?"やSublime "Same In The End"などの原作未収録だったストリート・クラシックが多数追加されているということ。そして何より、Skepta "Shutdown"やMachine Gun Kelly "bloody valentine"といった今のストリート・カルチャーを作り上げているミュージシャンたちの楽曲が多数収録されているということである。これもまた、本作を単なるノスタルジアで終わらせない、現代のゲームとして楽しむことができる要因の一つである。
これらの当時から現代に至るまでストリートを彩ってきた楽曲の数々が、プレイ中はおろか、メニュー画面だろうと、ポーズ中だろうと、たとえロード画面だろうと、一切止まることなく再生され続けるのだ。しかも気に入らない楽曲があればいつでもワンボタンでスキップできるし、好きな曲だけをまとめたプレイリストにすることだってできる。心ゆくまで最高に格好良い楽曲に浸りながら、延々とスケートに没頭することができるのである。これが楽しくないわけないだろう。
そもそも、既存の楽曲を取り入れたサウンドトラックを作る場合はライセンスの取得が最大の難関となる。にも関わらずここまで見事なサウンドトラックが完成しているということは、アーティスト側からの本作への信頼の表れであるともいえるだろう。だからこそ、ゲーム好きだけではなく、音楽好きにも本作を是非プレイしていただきたいと強く思う。
実際のストリート・カルチャーにも影響を与えてきた『トニー・ホーク』
さて、現時点で筆者は当面の目的だった「スケートツアー」モードを100%クリアし、メイン・キャラクターとして使っていたトニー・ホークの強化も最大まで完了済みだ。ゲーム側が用意している一旦の流れは完了したといって良いだろう。しかし、アンロックしていない隠し要素もあるし、世界中のプレイヤーとスコアを競い合うマルチプレイヤーモードもあるし、自分でステージを作ったり他の人が作ったステージを遊べるモードも存在していて、いくらでも遊び続けることができる。
そして、何よりここまで触っていて楽しい、もっと上手くなりたいと思えるゲームはなかなか存在しない。というわけで今でも毎日のように本作を起動しては、ニューヨークのストリートや学校でスケートを楽しんでいる。また、本作に登場するスケーターにも改めて興味を抱き、『X GAMES』などの実際のスケートの映像を見て楽しむようにもなった。もしかしたら、実際にボードを購入してしまう日もそう遠くはないかもしれない。そして、本作のファンコミュニティを覗いてみると、原作をプレイしていた人々の多くが、当時、私と同じような行動に至っていたと語っている。それくらい、本作にはストリート・カルチャーの格好良いところがふんだんに詰まっているし、だからこそ大きな影響力を持っていたのだろう。本作を単なる「リマスター=当時のファンがノスタルジアに浸るためのもの」という枠に入れて片付けてしまうのはあまりにも勿体ない。2020年においてトップクラスに面白い、そして最高に格好良いゲームがここにある。
■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura
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