高齢者の孤立問題解決にゲームが有効? アメリカで実証実験開始へ
コロナ禍によりエンターテイメント業界にも様々な影響が見られるなかで、“STAY HOME”でも手軽に楽しめるものとして再評価を受けているのが、ゲーム/eスポーツ業界だ。そしてゲームは、単に余暇を楽しむ娯楽にとどまらない、社会インフラとしての可能性を秘めているかもしれない。
『ReadingEagle』 によると、米国は日本と同様、高齢化が加速しつつある国のひとつであり、2035年には65歳以上の高齢者が未成年者の人口を上回るとも言われている。また、米国在住の高齢者のうち2.8パーセントが孤独感に苛まされており、特に田舎の地域において顕著である。今回のコロナ禍では、都市部からの移動が制限されたことで、その現状がさらに浮き彫りとなった(参考:https://www.readingeagle.com/living/virtual-gaming-esports-look-to-engage-older-adults/article_9f4c3bb0-a1b8-11ea-9221-139b1b7bbe84.html)。
そんななか、ペンシルベニア州は深刻化する高齢者の社会的孤立や孤独死の問題解決にeスポーツが有用であるという仮説のもと、官民連携プロジェクトの一環として「K.A.R.E.S.」コミュニティーを発足。「K.A.R.E.S.」とは、ペンシルベニア州在住の高齢者がバーチャルなテクノロジーを駆使して、eスポーツやゲーミングを堪能するために確保されたコミュニティーである。
「K.A.R.E.S」の発足に際し多大な尽力を果たしたのが、ペンシルベニア州の住民の健康増進を目的に、30年以上にわたりスポーツ大会を企画・運営してきたキーストーン・ステイト・ゲイムスだ。その他にも、ヘルステックおよびイノベーションのコンサルティングを行うEnableHealthをはじめ、ペンシルベニア州を拠点とする企業や研究所、非営利組織がパートナーとして参与している。
高齢者にとって社会的に孤立した状態が続くと、高血圧、心疾患、肥満、免疫の低下、不安症、うつ病、認知機能の低下、アルツハイマー病を発症するリスクが高まるほか、最悪の場合、死にもつながりえるなど、一大事を招きかねない。今年10月以降、eスポーツやゲーミングが高齢者の社会的孤立の解消に有用であるとする仮説を証明すべく、実証実験へと乗り出す予定であると現地メディアが報じている。
社会的孤立を解消するための方法として一般に馴染み深いのが、地域社会の中で街の清掃など様々な活動に参加したり、合唱や料理などの趣味のサークルに没頭したりといった方法である。スマートフォンがあれば、チャットやLINE、Zoomといったもので寂しさを紛らわすこともできる。しかしながら、地域社会の中で実際に人と交流するなかで、もちろん気の合わない人と接遇することもあろう。そんな時、煩わしさが増し、やがて活動に嫌気がさすようになる。
一方、チャットやLINEの場合、日々の会話の延長線にすぎず、会話を延々と続けているうちに会話のネタが尽き、飽きてしまう可能性が高い。その点、eスポーツやゲームは種類豊富であるがゆえに飽きを感じさせられず、ゲームで目的意識を共有、あるいは画面の先にいる生身のプレイヤーと対戦することで“人との繋がり”が感じられ、深い人間関係を構築するのが煩わしい人も、程よい温度感で包摂される可能性がある。