『オオカミ』シリーズが大人の女性をも“泣かせる”理由ーー単なる恋リアに終わらない魅力を分析

『オオカミ』シリーズが大人女性を“泣かせる”理由

 10代の女子中高生から火が付き、いまや大人女性の間でもハマる人続出中のABEMA(アベマ)発オリジナル番組『オオカミ』シリーズ。8月から待望の新シリーズ『オオカミくんには騙されない』が放送開始となった。

 本気で恋をしたい10人の男女の中に、好きでもないのに好きなフリをする男子=オオカミくんが1名以上含まれているという他の恋リアにはない特異なシチュエーション。アプローチしてくる男性に対して、その気持ちを試したくなるのは世の女子の常だが、この番組ではそれ以外に「相手がオオカミくんじゃないかどうか」の見極めも必要になってくる。

 また、番組を盛り上げる起爆剤として、視聴者参加型の「オオカミくん投票」なるものが設けられている。視聴者投票でオオカミくんだと予想された投票数が最も多い男性が途中脱落となってしまうのだが、救済措置として「落ちないで投票」というものも用意されており、脱落者が復活できるかどうかを決める投票も行われる。「オオカミくん投票」の数よりも、こちらの票数が上回れば途中で復活できるというものだ。参加者メンバーの恋の矢印だけでなく、誰がオオカミくんか予想しながら楽しめるのは新しく、相手の心理を読む「人狼」的な側面もある。

 これまでもこの「オオカミ」の存在があったからこそ、生まれた神回が多数あった。

 オオカミくんが本当に恋をしてしまい、好意を寄せる相手に自らオオカミと名乗るピュアさゆえの御法度を犯したり。オオカミくんではなかったけれど投票で脱落してしまった男子メンバーからの手紙を読んだ女子メンバーが号泣するシーンなど、様々な恋愛模様や人間ドラマに、観る者も涙を誘われる。オオカミくん側の苦悩ーー自身の本音にフィルターをかけて見られてしまう男子メンバー側の苦悩も、また切ない要素になり得る。「恋愛に障害は付き物」「ハードルがある恋の方が燃える」と言われるが、自身の力ではどうしようもない運命に翻弄されながら、だからこそ生まれる一期一会や刹那的瞬間に立ち会うことができ、視聴者側まで心揺さぶられる。

 また、『オオカミ』シリーズの独自ルールとして「太陽LINE」と「月LINE」なるものが存在する。どちらも1人1回のみ送信可能なメッセージだが、 送信者、受信者、内容が全員に共有される「太陽LINE」に対して、内容は送信者と受信者間でしかわからず“誰が使ったか”だけが明かされる個人LINEが「月LINE」。太陽LINEでのデートのお誘いには誰でも参加が可能だ。このLINEがまた波乱を呼ぶのだ。意外な人が予想外な相手を誘っていたり、割り込み参加可能なため、直接的なお誘いだけでなく、便乗参加でその中にいる誰かに好意があることを意思表示できる。(この参加意思が見えないと、またそれはそれで様々な憶測を呼び妄想が止まらない)

 女子メンバーが「この人は本当に信じていいの?」「オオカミくんじゃないかな?」という疑いを持ちながらも、「そうじゃなければいいな」「オオカミくんでもいいや」と恋に踏み出していく姿が本当にいじらしい。大人になればなるほど「条件」や相手の「本気度」を値踏みしてしまいがちな恋愛が増えるからこそ、本来恋愛にブレーキをかける必要のない女子たちが、相手の様子を窺ったり自身の気持ちに向き合ったりする姿がじれったくもあり「飛び込んじゃいなよ、好きなんでしょ」と彼女らの背中を目一杯押したくなるが、それはそっくりそのまま、もしかすると普段自分自身に対して言いたい(誰かに言ってほしい)言葉なのかもしれない。

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