特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」(Vol.4)

ポリゴン・ピクチュアズ 塩田周三代表に聞く、コロナ時代の新しいワークフローとアニメ業界の今後

オフィスとリモートの併用で新たなワークフローの確立を目指す

ーーリモートワークについて、アーティストの方々のリアクションはどんなものがありますか。

塩田:千差万別で、すごく喜んでいる人もいれば、家では作業に集中できないという人もいますね。ネット環境の問題でオフィスの方が良いという人もいるし、細かい色管理をしないといけないとか、タブレットで細かいモデリングをする場合などはリモートではやりにくいようです。

 ですが、面白いことにオフィス作業の時には遅刻が多かったのにリモートになった途端、びしっと仕事するようになった人もいるんです。通勤がストレスだったようですね。

 しかし、通勤時間がなくなった分、余計に仕事をする人が増えたので、4月の残業時間はいつもより多くなりました。我々は勤務時間をきちんと管理することを大切にしていますが、オフィスの束縛がなくなったために、勤務時間を制御しづらくなっているようです。

ーーポリゴン・ピクチュアズは、制作工程をきっちりと管理していくことで作品の質を高めていくというコンセプトをお持ちだと思うのですが、新しいワークフローが作品の質に反映されていくことを目指していくのですか。

塩田:中長期的にはそれが実現してほしいですね。働き方の物理的束縛が減ることで個々のアーティストがよりハッピーに効率的に働けるようになるのが望ましいですし、それが最終的な成果物にも反映されてくると思いますので。

ーー東京でも緊急事態宣言の解除が発表されましたが、6月以降はどのような勤務体制になるのでしょうか。

塩田:端的にお答えすると、オフィス勤務とリモートの併用ということになります。こういうことは事態が起きてから反応していては遅すぎると思っていて、4月8日からの全社一斉のリモートワーク期間についても、緊急事態宣言の発令前から世間の状況を見つつ準備をしていたんです。今回も5月21日から、全体の10%程度ですが部分的にオフィスでの勤務を解禁しています。そして、6月1日から中旬にかけて、リモートの方が力を出せる人以外は順次オフィス勤務に戻るように段取りしています。

ーーオフィスワークとリモートワークの併用にあたって、今後の課題はありますか。例えばコミュニケーションの問題ですとか。 

塩田:全員がリモートワークであれば条件が一緒ですから、コミュニケーションも取りやすいんですよね。今後併用していくことで、物理的に顔を合わせて作業している人たちと、リモートの人たちが出てきた時、会議1つとってもコミュニケーションの取り方が変わってくるでしょうから、新しい取り決めも必要になってくると思います。

ーー新入社員の方々とオンライン飲み会をされていたとツイートされているのを拝見しました。新入社員の方々は今年の4月に入社でいきなりリモートワークだったわけですね。

塩田:そうです。物理的に出勤したのは数日だけでした。 

ーーリモートワークで新人の方とのコミュニケーションを取るのはなかなか難しそうですね。

塩田:元々、最初の2ヶ月近くは研修期間で、リモートでも研修はできるだけ従来と同じようにやろうと心がけていました。先週、ようやく本格的に配属になったのですが、わからない事があってもすぐに先輩に質問できる環境じゃないから大変だと思います。そこはできるだけフォローしようと心がけていますが、なにせ初めての状況ですから難しい面はありますね。

 やはり、リモートになっても機能するのは、一定期間同じ空間を過ごした人たちがワークフローや振る舞いを互いに理解しているからなんですよね。見知らぬ者同士だとこれほど上手くはいかないので、仮にいきなりオンラインで参加するアーティストが増えた時、僕らのワークフローについてどう教育するかというのも課題になると思います。

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