恋愛リアリティ番組の“誹謗中傷問題”にどう向き合うべきか 木村花さん逝去と『テラハ』制作中止を機に考える
恋愛リアリティ番組と、SNSと相性がいい。しかしながら、少しでも風向きが変われば、それが諸刃の剣となる。しかも直接的なバッシングが、番組ではなく出演者に寄せられてしまう。今回は『TERRACE HOUSE』だったが、どの番組でも起こりうるリスクだ。いち視聴者から見る限り、SNSまわりの対策はどの番組でも、あまりとられていないように感じる(『TERRACE HOUSE』に関しては、新型コロナウイルス問題で撮影が中断するなど、スタッフ間でも予想外のことが続き、さまざまなことが手薄になっていたのかもしれない)。
リアリティ番組は、多少の演出はあるにせよ、番組内容と出演者の「リアル」は地続きであることは動かせない。番組の造り手には、どうか出演者を守る方法を模索してほしい。
そして、「観ているだけ」だった私たちには、ただ「反省」をSNS上で表明すればよいのだろうか。これまで楽しんでいた自分たちの「うしろめたさ」は、それで洗い流せるかもしれない。それでも私たちの「欲望」そのものは消えることはなし、「自分は冷静に見ている、自分の欲望だけは別」と線引きするのも傲慢だ(繰り返すが、当然メディアも例外ではない)。
「恋愛リアリティ番組」がなくなったとて、生身の人間をキャラクターとして扱うエンターテイメントが存在し、SNSやインターネットを通して直接悪意をぶつける構造が続くのであれば、ユーチューバーやインフルエンサーが的となるだけだ(現にプライバシーを侵害される人気YouTuberは多い)。激増している芸能人YouTubeチャンネルも、今後さらに競争過多になれば、視聴者の望むままに私生活を晒す者が出てくる可能性もはらんでいる。
とはいえ、この構造から降りることも難しい。『TERRACE HOUSE』の制作中止が発表されたが、夏にはアマゾンプライム・ビデオの『バチェロレッテ・ジャパン』の配信が決定しているし、AbemaTVの恋愛リアリティ番組の新作だって把握できないほど配信されている。今も世界中で作られている恋愛リアリティ番組が、「全て終了する」ことは現実的ではないだろう。
私たちは「おかしい」と感じたことに対して、制作側に疑問を呈するなど、地道な議論を重ねていくしかないのだ。
■藤谷千明
ライター。81年生。ヴィジュアル系バンドを中心に執筆。最近はYouTubeや恋愛リアリティ番組なども。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(市川哲史氏との共著・シンコーミュージック)。Twitter。