AppleがVR企業を買収 VR・AR兼用Apple Glassリリースの布石か?
今年3月にLiDARスキャナを搭載した最新のiPad Proを発表したことからわかるように、Appleは「AR推し」の企業である。そんな同社がVR企業を買収した。この買収には、同社が開発中と噂されているあのウェアラブル製品が関係しているようだ。
VRストリーミングを強みと企業を買収
Apple製品専門ニュースメディア『9to5Mac』は14日、AppleがVR企業であるNextVRを買収したことを報じた。買収額は1億ドル(約107億円)と見られている。NextVRはスポーツやエンターテインメントのVRライブストリーミング配信を基幹業務にしている企業であり、過去10年間にわたってPSVR、Oculus等にVRコンテンツを提供してきた。NBAやFox Sports、ウインブルドンといった大手スポーツ団体とスポーツチャンネルと提携していることでも知られている。
NextVRは、VRコンテンツ配信事業のほかにも動画ストリーミングに関する特許技術を保有している。そうした特許技術は高品質なVR動画制作に関係するものだが、今後はAppleが保有することになるだろう。
NextVRの公式サイトには、現在メッセージだけが表示されている(トップ画像参照)。具体的には「NextVRは新しい方向に向かっています。バーチャルリアリティでのスポーツ、音楽、エンターテインメント体験のためのこの素晴らしいプラットフォームを構築する上で果たした役割について、世界中のパートナーとファンに感謝します」とある。
9to5Macは、AppleとNextVRに対してコメントを求めた。しかし、両社からコメントは得られなかった。
ARが成熟までVRで待つ
ところで、今回の意外とも言えるAppleによるVR企業の買収にはどのような理由が考えられるのだろうか。US版Tech Crunchは、15日に公開した記事でこうした疑問に答えよとしている。その記事によると、今回の買収は、昨年から話題になるようになった「AppleはARとVRの両方に使える製品を開発している」という噂と関係している。この噂が意味しているのは、AppleはVRにまったく関心がなかったわけではないこと、そして開発が噂されるARメガネ(「Apple Glass」と呼ばれることが多い)にはVR機能も実装されるかも知れない、ということだ。
Appleは、周知の通り、iPhoneとiPadで利用可能なARアプリを普及させようとしている。しかし、今までのところ、iPhoneユーザなら1度はインストールするような大ヒットした同社製ARアプリはまだ存在しない。こうした現状でApple Glassをリリースすると、ARメガネ市場が成熟するまで、同社は大きな負担を強いられるだろう。
もしApple GlassがVRにも対応していたら、同メガネに最適化された大ヒットARアプリが登場するまでのあいだ、AppleはVRコンテンツを提供することで消費者の関心をつなぎ止めることができるだろう。VRコンテンツの配信にあたっては、NextVRを買収したことで得た知的財産が役立つに違いない。
以上を簡潔にまとめると、今回の買収はApple Glassを真に成功させるための布石、と言えるだろう。