東海オンエアはなぜ500万人を魅了するのか “最強の内輪笑い集団”の魅力を再分析
“ちゃんとしない”をちゃんとやる男たち
同規模の人気を誇るYouTuberコンビ・水溜りボンドは、テレビ番組にたとえるなら『ロンドンハーツ』や『世界の果てまでイッテQ!』、『いきなり!黄金伝説』など、キー局で放送されるゴールデンタイムのバラエティ番組だ。対して東海オンエアは『月曜から夜更かし』……いや、『ゴッドタン』『タモリ倶楽部』、あるいはもっとローカルな、地方局の深夜番組かもしれない。強烈な下ネタやメンバー同士でつく悪態、品のない悪ふざけ。彼らの動画では、物議を醸しそうな姿勢や内容も頻繁にみられる。本当のところ、東海オンエアのメンバーは十二分に常識的な人々であるにも関わらず、だ。
トークに歌にモノマネに実に芸達者なメンバーたちは、それだけで頭の回転が速いように見受けられるし、特に虫眼鏡はかつて小学校の教員として、りょうも近年まで建設会社の社員として働きながら活動していた。2人を筆頭に、メンバーは全員、社会一般に言う“大人らしさ”のようなものを理解しているはずなのだ。彼らなら、そんなもんクソくらえだ、とでも言いそうだが。
これは多くのYouTuberに言えることだが、就職していく周囲の友人たちを見ながら、あるいは自分自身も就職していながら、不必要な焦りを感じず、周りに迎合せず、尖った部分を削らずに、非凡な職業を続けられること自体が才能だ。そんな中で東海オンエアはさらに、“大人らしさ”のない企画をずっと続けている。彼らがあえて“ちゃんとしない”ことを選び、丁寧に続けているということは、大手プロダクションUUUMに加入するときの動画のオチを観れば一目瞭然だろう。
こうした、社会に迎合せずに一貫して尖り続け、やりたいことをやる、YouTuberの象徴ともいえるスタンスが、人々を魅了している。
終始一貫した内輪ウケ、変わらない企画、ちゃんとしないスタンスーー。非凡な6人組が下品にふざけ倒すのを、日本中で500万人が見守っている。いい意味で変わらぬまま、彼らがどこまで突っ走っていくのか。今後の活躍にも大いに期待しながら、今日も明日も、勝手に友達気分で楽しませてもらいたい。
■桂木きえ
東大卒YouTubeコラムニスト。92年東京生まれ。会社員ながらもYouTuberが好きすぎて副業ライターとして執筆。YouTube、Tik Tokなどの動画メディアとインフルエンサーについて考察する。Twitter/note