東海オンエアはなぜ500万人を魅了するのか “最強の内輪笑い集団”の魅力を再分析

 人気6人組YouTuber・東海オンエアが、チャンネル登録者数500万人を突破した。先日はテレビ番組『ダウンタウンDX』にも出演し、HIKAKIN、はじめしゃちょー、Fischer’sなどに続いて、俄然YouTuberファン以外からの注目も集めている。

 愛知県岡崎市の地元の友人で集まって、手作りのイカダで地元の川から海に出ようとしていたローカルなチャンネルが、いつのまにか、全国の500万人からほぼ毎日見つめられるスターになった。いったい彼らのどんなポイントが、500万もの視聴者を魅了するのだろうか。このタイミングで、改めて考えてみたい。

なぜか愛着が湧いてしまう「よくわかんないやつら」

 はっきり言って、初見でランダムに選んだ東海オンエアの動画を観て「めちゃくちゃ面白い!」と断言する人はそう多くはないだろう。

 もちろん「2泊3日!寝たら即帰宅の旅」「理系VS文系対決」シリーズなど、観ただけでファンになれそうな魅力的な企画も数多くあることが前提だが、彼らが日々アップする動画の中には「一週間ガチで呪い続けたらメンバーは死ぬのか?」「このゆめまる、なぜ息切れしてるでしょう?」「武器の中で結局『槍』が一番強い説」……など、発想が突飛すぎて我々一般人にとっては理解するのに手間取る企画も多い。

 また、コントに至っては、「カードゲーム」に始まり、「配分逆病」「愛と悲しみの炒飯」「逆田蝉丸(46)」、ここ最近では「樫造 譜面太郎(73)」など、もはや“まるで意味がわからない”領域に達しそうなものばかりだ。

逆田蝉丸(46)

 だが、視聴者はそんな“理解できなさ”、“意味の分からなさ”に強烈に惹かれてしまう。一度彼らが変なことをしている動画を観ると、「何をやっているんだこの人たちは?」という興味で、ふと次の日も観てしまう。そして無意識のうちに、またその次の日も観てしまう。過去の動画も一本また一本と消費し、気づいたときには、既に彼らに“高校のクラスメイト”のような親近感、愛着を抱いているのだ。

 そして、理解できなかったはずの彼らの笑いのセンスに、いつのまにか取り込まれている。

 当初は疑問でいっぱいだったはずの謎の罰ゲームにも「今度はしばゆーがファラオか」「ああ、虫眼鏡語尾変わったのか」「としみつ改名したのか」など、無感情でするりと受け入れるようになってしまうのだ。

ずっと変わらない“究極の内輪ウケ”に引き込まれていく

 こんなにもファンの多い東海オンエアだが、もし、現在の6人で高校のクラスにいたとしたら……彼らはきっとスクールカーストの最上位ではない。Fischer’sが教室の真ん中でバカをやっているグループだとしたら、東海オンエアは、教室の隅、後ろの方のロッカーの前で爆笑しながら「晩ごはんじゃんけん」やら「ジャイアン選手権」やら「工藤新一選手権」やら、さらにタチの悪いバカをやっているグループだ。彼らはこそこそしながらも、なんかずっと楽しそうで、気になってしまうのだ、たぶん。

【カオス再び】第一回! 工藤新一選手権!!!

 本来、私たち外野はそんな6人の“内輪笑い”が気になりながらも、中に入ることはできない。そんな中、そこにあけっぴろげに入れてくれるのがYouTubeチャンネル「東海オンエア」だ。先述したような、「あいつら、なんか面白そうだけどいつも何やってるんだ……?」と、純粋に抱く興味。そして、無意識のうちに抱く「あの輪の中に入ってみたい」という願望。そうした感情を抱かせ、そしてそれらを満たしてくれるからこそ、私たちは彼らの動画に惹かれ、チャンネル登録し、毎日見続けてしまうのだろう。

 “究極の内輪笑い”。そして、それに強引に引き込まれていく感覚。それが、彼らの魅力のひとつと言える。

 それを裏付けているのが、定期的にアップされる東海オンエア恒例の企画だ。

 冒頭に記した「手作りイカダで川下り」もその一つで、隔年で本気で海に出ようとしている(失敗している)。2013年から毎年大みそかにアップされる「20○○年の振り返り&20○○年の抱負」という動画もそうだ。これらの恒例動画で好評なのは、毎回ほぼ変わらない場所、構図、内容でつくられ、同じ編集が施されている点だ。

 「手作りイカダで川下り」の序盤、「東海オンエア」というクレジットから始まるプロローグは、必ず彼らの初期の動画と同じものになっている。imovieなどの無料ソフトに入っているであろうデフォルトのエフェクトで、ライオンの唸り声のような効果音と共にタイトルが出てくる。その後ファミレスを舞台に、一言一句同じ台本でプロローグを実施するのだ。

 また、大みそかの振り返り動画は、2013年の一作目から毎回、てつやがカメラに向かって一人語りする構図で展開される。今年の振り返りと来年へ向けての抱負を語りながら、おもむろに熱湯の入ったコップやお椀をおでこに乗せ、何の説明もなくこぼして熱がるのも、毎年のお決まりの流れだ。

 動画の編集技術も、かけられる費用も初期とは極端に違うだろう。そんな中、初期と同じシンプルなタイトルや構図、内容にすることで「初心を忘れない」スタンスが表明されているように感じ取れる。

手作りイカダで川下り!シーズン4!【前編】

 こうした動画を「またやってるよ」「今年もやるのか」と知った顔をして面白がれるというのも、彼らへの親近感や、“内輪笑い”に入れてもらっている感覚を抱く要因だろう。新しく見始めた視聴者でさえ、コメント欄を見てなんとなく「昔からやっているのか」と察することができる。その“変わらなさ”に、旧知の仲だったかのような親しみをおぼえるのだ。

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