東海オンエアはなぜ「じゃんけん」をするのか? 動画にもたらす効果を真面目に考察してみた
愛知県岡崎市を拠点に活動する人気YouTuberグループ・東海オンエアが1月19日、『【負けたら脱退】東海オンエア新メンバー決めじゃんけん大会!!!』と題した動画を公開した。6人のメンバーが「我こそは」という一般参加者に混ざってじゃんけんを行ない、勝ち残った者が「真・東海オンエア」として1本の動画を撮る、という企画だ。
YouTuberに詳しくない方には伝わりづらいところだが、500万人に迫るチャンネル登録者数を誇る東海オンエアは、メンバーがそれぞれに多くのファンを抱え、著名人にも視聴者が多い。視聴者を笑わせ、何より自分たちが楽しむために「体」というより「人生」自体を張り、モザイクまみれの“不健全”な動画も少なくない彼らだが、アイドル的人気と言って差し支えない、熱狂的な支持を受けている。
そんなグループが、一回の企画とはいえ「じゃんけん」でメンバーを入れ替えるというのは、突拍子もないことに思えるかもしれない。ただ、これが「メンバーが変わっちゃうの!?」というファンの不安を煽り、注目を集めるための“釣り”ではないことは、動画を追いかけてきた視聴者ならすぐにわかることだ。じゃんけんにどこまでかけられるか、というのは東海オンエアというグループの本質にかかわるテーマだからだ。
東海オンエアにとってじゃんけんと、その結果の罰ゲームがどんな存在なのか。それは、「東海オンエアはなぜ自らに“十字架”を課し続けるのか? メンバーごとにデータ化&徹底分析」「東海オンエアのサブチャンネル「控え室」はなぜ面白い? 200万人登録達成に寄せて魅力を解説」などの過去記事に詳しい。本稿では、「じゃんけん」が動画にどんな効果を与えているかを考察してみたい。
“おいしいところ”に素早く到達するツール
多くのトップクリエイターが語っているように、「やってみたいけど、普通はなかなかできないこと」を代わりに試して見せてくれるのが、YouTuberが人気を博している要因の一つだ。同様に、「自分でやるのは絶対嫌だが、ちょっと見てみたい」という罰ゲームも、視聴者の関心を呼ぶ。つまり、「誰が罰を受けるかを決めるゲーム/競技」より「罰ゲームそのもの」が強いコンテンツになるケースが少なくないということだ。
その点、あらゆるゲームのなかでもスピーディに「勝負」が決まるじゃんけんは、「動画のおもしろいところ=罰ゲーム」に速やかに到達する手段だと言える。「あいこ」で長引くことがあるとはいえ、決着が一瞬なら、メンバーが「魅力的な(ちょうどよくキツい)罰ゲームを考える」という嫌なクリエイティビティを発揮する時間と、敗者が決定したときのリアクションにフォーカスすることができ、動画は「おいしいところだらけ」になる。東海オンエアのサブチャンネル「控え室」の人気の一端は、そんなじゃんけんの活用法にあるのではないだろうか。
罰ゲームの偏りを排除する公平性
また、ルールがシンプルなゆえに、基本的に能力の差が出づらく、ランダム性が高いのもじゃんけんの特徴だ。東海オンエアのように罰ゲームを乱発するグループで、毎回、それぞれに個性的なメンバーに平等なゲームを設定するのは難しく、例えば知識が問われるクイズ企画であれば、ブレーン的存在である虫眼鏡の勝率が飛び抜けてしまうかもしれない。その虫眼鏡も「東海オンエアにいる以上、時折キツいターンが回ってくるのは仕方がない」と語っており、「6分の1は、ほぼゼロ」という元小学校教員とは思えない理屈で、じゃんけんに飛び込むのだ。
最近では、東海オンエアの“主砲”ことしばゆーが「ファラオの格好をして(服装の限定)、ぷぅぷぅ言いながら(語尾の変更)、ふりかけご飯しか食べられない(食事の限定)」というトリプルプレーを食らっていた時期があり、そうした偏りも視聴者にとっては楽しいものだが、似たテイストの罰ゲームでも受け手が変われば面白さも変わる。その意味でも、じゃんけんによるランダムな決定がドラマを生んできたのは間違いないだろう。