『あいのり:African Journey』から感じる、“グループ貧乏旅行”の面白さと“恋リア”の問題点
多少プロレスに詳しい人ならピンと来ると思うが、日本においてミゼットプロレスが衰退したのは、興行を行っていた全日本女子プロレスの経営難や、そしてレスラーの人材不足にもあった。また、こちらの記事(参考:「誰が小人を殺したか?」小人プロレスから見るこの国のかたち)には、テレビ放送においては苦情の投書が予想されたため、自主規制に至ったとある。ミゼットプロレスを日陰に追いやったのが、テレビ業界の自主規制というのは、なんとも皮肉な話ではないだろうか。そのため、「人権団体の批判で壊滅状態」と言い切るのは不適切のように感じる(なお、番組では「壊滅状態」とあるが、現在でも2名のレスラーが現役だ)。
そして、慣れない海外で体調を崩すメンバーが出るのは『あいのり』定番の流れではあるのだが、今回の『あいのり: African Journey』は、まず男性メンバーのはり坊が、過去の交通事故による後遺症、坐骨神経痛に加えて、アメーバ赤痢を発症。ドクターストップを示唆されるもなんとか復帰し、エピソード10にて女性メンバーのすぅすぅとカップル成立して帰国した。なお、お見舞いでのコミュニケーションで恋が進んでいった部分もあるので、結果的にハッピーエンドになったものの、出演者に対するケアに疑問を持ってしまった。
同じく恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』のシーズン3では、泳げないのに沼に飛び込むことを強要されたことで、PTSDになったとSNSで告白する女性参加者もいる。番組の演出とはいえ、出演者の健康に対しての配慮の薄さは取り返しのつかないことにつながるのではないだろうか。
そしてエピソード13では、女性メンバーが全員病に倒れてしまう。為す術もない男性メンバーたちは、ドライバーの案内でアフリカの呪術師の館でお祓いしてもらうことになる。女性メンバーの健康はケアされていることは前提としても(後に看病するエピソードもある)、番組の演出かもしれないが、これには違和感を覚えざるを得ない。Netflixにより世界各国に配信されているのに、アフリカ大陸の根強い呪術信仰に対して、無邪気すぎるオリエンタリズムというか、海外の視聴者への視点が欠けているように思える。
新メンバーのジェノべによってラブワゴン内の恋模様にも新展開があり、ついに1月30日に最終話を迎えた『あいのり: African Journey』。番組の作りの部分でやや不安になった部分もあったが、最後はラブワゴンの恋愛でドキドキハラハラさせてくれた。
■藤谷千明
ライター。81年生。ヴィジュアル系バンドを中心に執筆。最近はyoutubeや恋愛リアリティ番組なども。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(市川哲史氏との共著・シンコーミュージック)。Twitter
■配信情報
『あいのり:African Journey』
Netflix:毎週木曜に新エピソード先行配信
FOD:毎週土曜深夜0時に配信予定
プロデュース・演出:西山仁紫(共同テレビ)
プロデューサー:飯田礼聖(共同テレビ)
エグゼクティブプロデューサー:坂本和隆(NETFLIX)/清水一幸(フジテレビ)/田淵 麻子(フジテレビ)
制作著作: フジテレビ
制作協力: 共同テレビ
『あいのり:African Journey』オフィシャルサイト