「バーチャルジャニーズ」盛り上がりの背景は? SHOWROOM前田裕二に訊く

前田裕二が語る「バーチャルジャニーズ」

「ジャニーさんの『Show Must Go On』という意味も少しずつ理解できてきている」

――あすかなの活動は序盤から拝見していたのですが、確かに、それぞれのコミュニケーション能力の高さに新たな可能性を感じました。

前田:ありがとうございます! とはいえ、序盤は本当にハラハラで(笑)、2人が配信に慣れるまでは、配信が終わった後に僕が電話で作戦会議を続けていました。

――2人の成長過程を見ていても、それが藤原さん&大橋さんの成長なのか、あすかなの成長なのか、いい意味でわからなくなる感覚が不思議で。今までのバーチャルタレントさんと、全く別の視点で見ることができました。

前田:飛鳥と星空はもう別のキャラクターとして、完全に”生きてる”というのが伝わっていて嬉しいです。

――「弱虫たちの世界征服」はHoneyWorksがプロデュースを手掛けた楽曲ですが、今回のような座組みで楽曲を作る際、バーチャル的な文脈でいくのか、ジャニーズ的な文脈にするのか、という点で悩んだりしませんでしたか?

前田:そこは特に悩まなかったです。僕自身、ハニワがすごく好きで、ハニワの登場人物や世界観もジャニーズっぽいなと思っていたんです。線が細い感じとか、中性的な男の子のビジュアルとか、キャラの立ち具合とか……。それを、ジャニーズの世界と接続したらどんな化学反応が起きるのだろう、という好奇心は持っていました。

――たしかに、二次元的・三次元的な見せ方の巧さという意味でリンクするところもありますね。ビジュアルプロデュースはHoneyWorksのヤマコさんが手掛けていますが、こちらもまた大きな反響がありました。

前田:ヤマコさんの2人に対する愛情がとにかくすごくて、僕らがオーダーした枚数の数倍、候補をお送りいただいたんです。ヤマコさんはどうやらすべての配信を見てらっしゃるそうなのですが、確かに、そうじゃないと分からないような小ネタも散りばめられていて。それを見たファンの方々が、Twitter上でそれぞれ考察をしてくれていたり。

――YouTubeのコメント欄でも、ハニワのファンとバーチャルジャニーズのファンが褒め合う、美しいコミュニケーションが生まれていました。

前田:僕も今、暇さえあれば、このコメント欄を見ています。「なにわ男子のことも全然知らなかったけど」とか「HoneyWorksもほとんど知らなかったけど」と、新しくここから聴き始めた人も結構いらっしゃって、そういう人たちに刺さってるのも嬉しいですし、やはり音楽という表現形態は素晴らしいなと思いました。

――他に、曲にこだわりはありますか?

前田:タイトルですかね。「劇団ひとり」さんや「短い永遠」、など、人の頭に残るような、「弱虫」と「世界征服」という一見矛盾する言葉の組み合わせがとても良いと思っています。

――ファーストインプレッションとして「何なんだろう?」と食いついちゃいますよね。しかも「弱虫『たちの』」とすることで、聴き手も巻き込んでいるような表現にしていて。

前田:そうですね。「たち」が漢字じゃないのも大事で、身近に感じてもらえるように、あえてひらがなにしています。あと、この言葉自体、SHOWROOMそのものを表しているとも思っていて。SHOWROOMは、”甲子園2.0”と表現されたりもしますが、「未完成品が完成品に至るまでの過程」をコンテンツにしているメディアであり、リアリティショーの場なんです。弱者なんだけど一生懸命強くなろう、みんなを笑顔にするために頑張ろう、としていく過程で感動が生まれるという、バーチャルジャニーズプロジェクトの本質の部分も凝縮された言葉です。二人の代表曲になると思っています。

――音楽というのは、前田さんの人生を語る上でも欠かせない要素ですよね。そういう意味でも、彼らの音楽も含めてSHOWROOMがバックアップするというのは、すごく意義のあることだと感じました。

前田:今回のプロジェクトでは「日常と作品」をセットで提供していきたいと考えていて。日々の配信は近さを感じる「日常」で、音楽などの「作品」は、非日常であり遠さを感じる部分で。個人的にはその2つが混在しているコンテンツに人は惹かれると思っているんです。人気のタレントにも、そういう人が多いと思います。バラエティを通して自分の友達なんじゃないかというくらいの親しみやすさを感じて錯覚を覚えるけど、ひとたびライブやドラマに場面が切り替わると、圧倒的な偶像性を持つという。その二面性があるからこそ、両面の魅力がどんどんスパークしていくはずなので、しっかり「作品」を作り続けたいです。

――そうやって「作品」を作らないと届かない射程距離の方もいますし。

前田:そうなんです! 作品になると、それをフックに入ってきてくれる人がいる。そしてその人たちが次のステップとして、「近さ」を感じるライブ配信やSNSのようなコンテンツにも回遊してくれる。ゆくゆく、アニメ化などの展開を考えたときにもそうですが、二人のどの活動にも今後、音楽は必ず紐づけていきたいと考えています。楽曲こそ、あすかなの魅力が一番ダイレクトに、そして広く伝わる最適な「作品」の形式だと思うからです。

 僕自身、ジャニーズのコンサートやコンテンツに触れるようになってから、「音楽やショー」にかける思いは一層強くなりました。以前も嵐さんのライブを見て、20年間応援していたわけじゃないのに、自分が20年追いかけてきたような錯覚に陥って「エンターテインメントの最高峰ってこういうことなんだ」と感じましたし、ジャニーさんの「Show Must Go On(何があってもショーは続けなければならない)」という意味も、少しずつですが、皮膚感覚で理解できてきているような気がします。

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