『iPhone 11』の価格設定に見え隠れする、Appleの大いなる野心

『iPhone 11』価格設定に見え隠れする“野心”

 Appleは、9月10日にイベントを行い、iPhone 11、Apple Watch、AppleTV +ストリーミングサービス等、一連の新製品を発表した。その中で、特筆すべきは、iPhone 11の価格設定だ。

 日本でも携帯キャリア各社やApple Storeから価格が発表されているが、これはAppleの歴史上、大きなシフトチェンジが起きていることを意味するものになっている。

他社端末凌ぐ低価格、Appleのパラダイムシフト

 『Digital trends』はiPhoneが一気に手の届く所まで来たとして、価格について詳述した(参考:https://www.digitaltrends.com/apple/apple-iphone-11-price-analysis-september-event/)。

 Appleの最新のiPhoneは699米ドルからで、昨年のiPhone XRより50米ドル安い。これは、他のほぼ全てのAndroid主要ブランドの廉価端末よりも少なくとも50米ドル安くなっている。Samsung Galaxy S10eは749米ドル、Google Pixel 3は799米ドル、Huawei P30は900米ドルといったところだ。コストパフォーマンスの高いことで知られるOnePlus 7 Proにも匹敵し、多くの手頃な携帯機種の代替になりうる。

 この動きはAppleのパラダイムシフトを物語っているといえるだろう。世界中のiPhoneの販売数は2018年後半から急落している。2019年の第3四半期のiPhoneの売り上げは、Appleの売り上げの50%を久々に下回った。Appleの最も収益性の高かったビジネスが今日、かつてないほど脆弱になっている。

 iPhone Xの発売から2年が経ち、Appleは、とりわけ手頃な価格の代替品が溢れるインドのような競争の激しいスマートフォン市場では、1000米ドルのiPhoneが思うように売れていないことを認識。アナリストは、今後さらに低価格のiPhoneが登場することが予想されるとしている。

 市場シェア低下の対策として、Appleは2018年に積極的に解決策を模索し始め、iPhone XRでその答えを見つけた。大幅割引により、iPhone XRは2019年前半に世界で好調の売れ行きを見せたのだ。

 iPhone 11の699米ドルととiPhone XRの599米ドルという低価格設定は、Appleの今後へ向けた手がかりを与え、失われた市場シェアを取り戻す構えだ。Appleは価格を下げたわりに、iPhone 11に多くのアップグレードを追加している。

 ただし、これがAppleのスマートフォン市場での優位性を取り戻すかどうかは明らかではない。新しいiPhoneは、いずれも5Gに対応していないため、Appleが2020年に5G端末を発売しない限り、1、2年後に苦戦することになるだろう。

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