「電波少年」「ウルルン」「あいのり」……『TIMESLIP TVer』で平成を彩った人気番組を振り返ってみた

 またそれに加えて今回の「TIMESLIP TVer」で大きな意義を感じたのは、この企画が各テレビ局個別のものではなく、在京の民放キー局5局の共同によるものだという点である。元々TVerが局の垣根を超えたプラットフォームであることが、今回の企画をとても有意義なものにしている。

 具体的には、番組を局単位ではなく横断的に振り返ることができることで、時代とテレビの関わりがよりはっきり見えてくる。先ほど配信されている番組を局ごとではなく、年代順に並べたのは、そのあたりをわかってもらいたかったからである。

 たとえば、局の異なる『ずっとあなたが好きだった』と『進め!電波少年』は、同じ1992年に始まっている。前者はマザコンの夫役の佐野史郎の強烈な演技が評判になって最終回には34.1%(ビデオリサーチ調べ。関東地区)という高視聴率を記録し、後者は「アポなし」ロケで名を馳せ、「猿岩石のユーラシア大陸横断ヒッチハイク企画」で社会現象的ブームを巻き起こした。

 いうまでもなく、両者はドラマとバラエティで、ジャンルも違っている。だが改めて見てみると、それぞれ「なんでもあり」の過激な設定や企画でありながら最後は感動の場面が待っているといったパターンの共通点も浮かび上がる。そこには、昭和が終わって平成に入ったばかりの時代のなかで、それまでのテレビの「お約束」を壊して新しいものを作ろうという、当時のテレビの並々ならぬ意欲と熱気が感じ取れる。

 要するに、ジャンルを問わずテレビ番組は、いまや時代を証言するアーカイブになったと言えるだろう。

 元来、テレビは一度見たらそれっきりで、流れ去るものとしてあった。だがその後家庭用ビデオデッキなどの普及によって個人で番組を録画して所有する時代になり、ドラマだけでなくバラエティもひとつの「作品」として繰り返し鑑賞する傾向が強まった。さらには平成に入ってネットが普及すると、オンデマンドサービスなどを通じて番組は公に共有されるもの、つまりアーカイブとなった。

 そうした歴史の流れの現在地を、今回の「TIMESLIP TVer」は示している。先ほどもふれたように、通常は見逃した番組やもう一度見たい番組を見るためのもので、あくまで地上波テレビのほうがメインだが、「TIMESLIP TVer」の場合は、ネットのほうがメインになっている。SNSを通じて、アーカイブを共有するバーチャルな「お茶の間」が生まれる可能性もあるだろう。今回は期間限定だが、そこには今後進むであろうテレビとネットの共存にとって参考になる部分もあるに違いない。

 いずれにしても、日本のテレビも1953年の本放送開始から65年以上の時を重ね、そろそろ自らの歴史を語るべき段階になった。

 もちろん世の中の最先端を行くのもテレビの変わらない魅力だ。だが、昭和から平成へとその時々の時代の空気を呼吸しながら、テレビは数多くの名作や話題作を生み出してきた。その点、テレビはすでに一種の文化遺産でもある。今回の「TIMESLIP TVer」は、後世に残すべきそうした「テレビ遺産」を真剣に考えるためのきっかけになり得るのではないかと思う。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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