山田健人が水カン×yahyelコラボMVをスマホ一台で全編撮影 “デバイスとクリエイティブ”の関係性を聞く
「一つひとつの動きに大きな可能性を感じる」
ーー携帯電話としてのGoogle Pixel 3に関しては、どういう印象を持ちましたか?
山田:単純に、画質が良いことにすごく驚きました。ぱっと見の画像だけだとプロユースのカメラとそこまで差がないように見えてしまうくらいの良さでした。あと、端末自体も薄くてコンパクトな上、画面自体もキメが細かくて綺麗だなという印象です。
ーー今回Google Pixel 3で撮ってみて「こういう映像を撮りたいな」という次のアイディアは生まれましたか?
山田:ありますよ。軽い・小さいというのは大きな強みなので、三脚もつけず、普通のカメラではありえないような低いアングルから撮ることもできるでしょうし、人の頭の周りを張り付くように一周することも普通のカメラにはできない細かな動きだなと思います。そういう一つひとつの動きに大きな可能性を感じるんです。普通のカメラで撮ってた映像が、いつの間にかGoogle Pixel 3の映像に切り替わっていて、とんでもない動きをする、みたいなのも面白そうですね。
ーーおお、すごく面白そうです。今回使用されたGoogle Pixel 3はレンズの力だけでなく、AIを使って綺麗な写真や動画を撮影できるカメラが搭載されているようですね。まだまだスマートフォンは進化していくでしょうから、そのうえでクリエイターがどう使うかはやはり重要になってきそうです。
山田:端末の進化に関しては、スマートフォンって今の形でのゴールがもう見えてきている気がするんです。これぐらいのサイズ感でこういう硬いもので、これくらい画質が良くて、みたいな。ここからさらに進化するとなると、形状が大きく変わる必要があるのかもしれません。体に埋め込んだりするところまで、一気に進化する可能性は感じます。一方で、4Kや8Kを撮れる、というような綺麗な映像も、どこかで頭打ちが来るような予感がしていて。もちろん綺麗な映像の良さもわかるんですけど、ただ綺麗なことに人は驚かないじゃないですか。綺麗なことが当たり前になってしまうことで、受け手がそれに見慣れてしまう怖さもあると思います。
ーー作家性が問われる、ということになってくるのかもしれません。余談ですが、以前インタビューした直後にガラケーに変えていましたよね?
山田:そうなんです(笑)。ちょっとSNS疲れをしたというか、現代人の手癖で、何もなくてもSNSを触ったりしちゃうじゃないですか。何もないのにスクロールしてるみたいな。そういう環境から一度離れてみようと思ったのがきっかけですね。いざ手放してみたらすごく生活しやすいですし、電池も全然減らなくて(笑)。ただ、海外で撮影する機会が続いたときに、地図も見れないしカメラもロケハンに使えるものではないし、と不便な出来事が続いたのでまたスマートフォンに戻しました。
ーープライベートは充実したけど、仕事上は不便だったわけですね(笑)。
山田:つかの間の休息だったということで(笑)。自分の表現としても、便利になったのは良いことだけど、それで失っているものはないのかと疑って、回帰していくということを続けている部分があるので、当然の流れではあったと思うんです。
ーー「便利になったぶん、何をするか」を自分に問いかけ続けているところがあると。
山田:携帯だろうとなんだろうと撮ってInstagramやYouTubeに動画をアップロードすれば、もうそれは映像監督ともいえる侮れない時代になってるので、本当に人の心を揺さぶるものが価値になる前提で、だからこそ自分が何をするべきか、というのはすごく考えます。Google Pixel 3のような端末が出てきたことで、全然映像を勉強したことないけどセンスはある、みたいなクリエイターが突然出てくるかも、なんて怖さもありますからね。
(取材・文=中村拓海)