誰でも“可愛い声”のVTuberに? ボイストランスフォーマー「VT-4」実機レビュー
VT-4の登場とレビュー
彼がよく使用していたボイストランスフォーマー「VT-3」の後継機、「VT-4」がRolandから発売された。価格は26,000円で、「恋声」などのフリーソフトに比べるとその値段に足踏みしてしまうかもしれないが、マグロナ氏にRolandから実機が貸し出されていたり、明らかにバーチャルYouTuberを意識した売り方だった為に注文が殺到。現在品薄で中々手に入れることができず、場所によっては7万円ほどで出品されているので、26,000円で買えるなら安いだろう。なお7万円での取引は明らかに異常なので、時間がかかっても定価で手に入れることをオススメする。
こちらがVT-4の箱。「ボイストランスフォーマー」という肩書きで、本来は声を色々と加工して音楽に乗せ、独特なサウンドを手に入れる為のもの。
箱から取り出した実機。かなりコンパクトで、片手で掴める程度のサイズである。
実機を拡大した写真。
裏側には単3電池を格納できるボックスがある。VT-3は別に電源を用意しなければ使えなかったが、VT-4からは電池さえあればどこでも電源を入れられるようになった。マグロナ氏いわく「これのおかげで誰でも手軽にボイチェンカラオケができる」とのこと。
ツマミが見えるように撮影したもの。簡単に解説する。
・VOLUME:ボリューム。出力される音声の大きさを調整する。
・MIC SENS:マイク感度。感度を高くすれば小さな声も拾うようになる。(その分環境音も拾う可能性があるので注意)
・PEAK:ピーク。これがしばしば点灯していると入力音声が大きすぎるということ。
・ROBOT:声のピッチ(音程)が強制的に均一にされ、ロボットのようになる。
・MEGAPHONE:そのまんま、メガフォンのような声になる。
・KEY:AUTO PITCHのキーを設定する。例えばこれを「C」にしてAUTO PITCHのツマミを右に回せば、Cキーのスケールに合わせて音程が補正される。
・MANUAL:押すと現在のスライダーやAUTO PITCHのつまみ設定が反映される。
・BYPASS:押すとエフェクトが強制的に無効になる。
・PITCH:声のピッチが変わる。上下、プラスマイナス1のオクターブまで変化させることができる。
・FORMANT:声のフォルマントを変更する。+にするほど男性の声に、-にするほど女性の声になる。
・VOCODER:押すとボコーダーエフェクトがかかる。かなりホラーな感じ。
・HARMONY:押すと声にハーモニーが重なる。
・AUTO PITCH:「KEY」ツマミで設定したキーに音程を補正する際の強弱を調整する。強くすればするほど補正された声は正しい音程になるが、ケロケロとした声になるので注意。逆に狙ってケロケロした声にする場合はこのツマミを強くする。
・BALANCE:入力した音声(普通の声)と加工した音声のバランスを調整する。マックスにすると加工された音のみになる。
・REVERB:残響音を加える。
・MEMORY:上にある数字のボタン。ここに自分の設定を保存することができる。
側面その1。左に電源、その隣にUSB端子があり、A to BのUSBを使ってPCに接続すればオーディオインターフェースとして使うことができる(ドライバは接続すれば自動的にインストールされる)。、VT-4からはPCへの入力音声(もしくはVT-4からの出力音声)をオーディオデバイス上で「DRY」「MIX」「WET」から選べるようになるなど、指定しておけば加工された音声のみがPCに入力される。
その隣がMIDI端子とマイク端子、LINE出力端子。PCに接続しない場合は、マイク端子(キャノン)から入力された音声をLINE出力端子からミキサーやアンプに流し込む。それぞれで使うケーブルが違うので買ってすぐに使いたい場合はケーブルも最低限揃えておきたい。MIDI端子はあまり使わないと思うが、一応説明しておくと、MIDIキーボードなどのMIDI入力機器を接続してMIDI情報を入力すると、それに合わせて声が変化する。
側面その2。PHONESにヘッドホンやイヤホンを接続すると、マイクから入力して加工された音を聴くことができる。またPCに接続してオーディオインターフェースとして設定すればPCの音もここから聴くことができる。ただし3.5mm端子で、ヘッドホンは端子を変換しなければならない場合もあるので注意。隣は同じく3.5mmのマイク入力端子。LINE OUTの設定ツマミは、出力される音声をステレオかモノラルのどちらかに切り替えることができる。
たとえばLINE OUTの設定ツマミをステレオにしておけば音声はステレオで出力されるが、モノにするとLINE OUTの「R」からはエフェクトのかかってない音(BYPASS)が、「L」からはエフェクトのかかった音がそれぞれ出力される。リバーブなどのエフェクトを使うのであればステレオで、純粋に加工された声のみを使う場合はモノに設定して「L/MONO」から出力する。
PHANTOM(ファンタム)は、「ファンタム電源を必要とするマイク」を使用する場合のみオンにする。主にコンデンサーマイクはファンタム電源供給が必要な場合が多いので忘れないように。
実際に接続して電源を起動した図。
電源をオンにするとボタンが緑色に輝くのがわかる。
実際に可愛い声に挑戦してみる
で、筆者が軽く(丸2日間)いじってみた結果がこれである。
昨日のアタクシ(バチクソキモいので自己責任で視聴してください) pic.twitter.com/Uc6cubpW4A
— じーえふ (@grapefruit_uhr) November 21, 2018
……いかがだろうか。今この記事を読んでいるあなたが筆者の地声を知らないことを祈るばかりである。23歳の独身男性が自宅でこれをやっているのだから、まさに「地獄」と呼ぶには相応しい。声優を志している方などは失礼に感じる言い方もしれないが、別に筆者は声優を目指しているわけではない。女の子になろうとしているのだ。
設定はこんな感じ。と言っても、ピッチとフォルマントを少し上げただけだが。歌わないのでAUTO PITCHは切ってある。
使用感
やはり「Rovee」、「恋声」などPCのソフトウェアと違って圧倒的な点は「低遅延」だろう。PCのソフトの場合、PCスペックによっては処理が追いつかず声が出力されるまでにラグが生じる。実際に経験すればわかるのだが(筆者は以前Roveeを使っていた)、出力される音声にラグがあると実に喋りづらい。その点「VT-4」は外部機器であり、処理はこの機器の中で高速で処理されるため、どのような環境であってもパフォーマンスを保つことができる。また「VT-4」からローカットフィルター、ノイズゲートやエキサイターなどの音質補正エフェクトがデフォルトで実装された為、「VT-3」よりも綺麗な声を簡単に出すことができる、という印象だ(「VT-3」は別でエフェクトをかけて調整する必要性があった)。
しかしながら「女の子の声を出す」という点においては、やはりまだまだ簡単とはいかない。フォルマントを上げすぎると事件現場に居合わせた人の証言VTRのような音声になるし、かといって下げすぎると「声が高い男の人」ぐらいにしかならない。ここに関しては「声の出し方」を変えつつ、と「ピッチ及びフォルマント」が絶妙にマッチするポイントを地道に探っていくしかない。実際、上に貼った音声も「ボイスチェンジャー」感の抜けない声になってしまっている。しかしながら、「Rovee」などで調整した時よりは多少可愛い声が出せた気がする。気がするだけだが。
マグロナ氏は何故可愛い声になるのか
これに関しては諸説あるが、彼の地声がそもそも「ボイスチェンジャー」と相性が良い、というのが大きな要素としてある。そしてさらに可愛くなるよう声の出し方を変えている。ちなみに筆者の体感では、普段と違う声の出し方で普段と同じ喋りをするのは困難を極める。かなりの練習が必要なものらしい。
そして何より彼は加工された声をさらに聴きやすくする為、さまざまなエフェクトを用いて調整、及び研究を続けているらしい。無論先に書いた通りボイスチェンジャーとの相性(ボイチェン適正とも言われる)も大事だが、マグロナ氏の声は一朝一夕のものではない。それを裏付ける努力が確かにある。ここについては彼の配信などで語られていることが多いので、可愛い声が出したい人は研究するべきだろう。
「VT-4」は買いか、否か
筆者の独断で言うならば、買いだ。ボイスチェンジャーで可愛い声を出すのは、難しい。しかし、繰り返しになるが、「できないことはない」のだ。そこにわずかながらでも可能性があるなら、努力の価値は確かにあるだろう。「VT-4」を使って誰でも簡単に可愛い声になることはできないかもしれないが、ボイスチェンジャーとしての質は間違なく高い。挑戦の投資として26,000円は安いものだろう。マグロナ氏だけでなく、バーチャルYouTuberの「オニャンコポン」氏も恐ろしく可愛い声を出す。ここにはちゃんと夢がある。
一応最後にもう一度だけ注釈を入れておくが、「VT-4」はバーチャルYouTuberの為に作られたものではないし、そもそも可愛い女の子の声を出すためのものでもない。しかしその商品名がバーチャルYouTuberの略称である「VT」の字を持っている、ということに、不思議な因果を感じざるを得ないのも、また事実だ。
■じーえふ
1995年生まれ。大学中退フリーター。バーチャルYouTuberに真剣。
ボイス・トランスフォーマー『VT-4』
発売:2018年10月19日(金)
価格:オープンプライス、税込市場想定売価\26,000円前後
ニュースリリース:https://www.roland.com/jp/news/0813/
製品ページ:https://www.roland.com/jp/products/vt-4/