「SNS中毒」「スマホ依存」「ゲーム障害」への対策は世界中の課題に デジタルウェルネスの重要性と現状
このような流れの中、今年6月、WHO(世界保健機構)は新たな国際疾病分類(ICD-11)に「ゲーム障害」を加えることを公表した。これはインターネットやスマートフォンの普及で、オンラインゲームなどに依存する問題が全世界で報告されたことから認知された。症状としては「ゲームに対しての抑止力が効かない」「日常生活よりもゲームを優先してしまう」「悪影響が見られるにもかかわらずゲームをやめられない」など。専門家の間でも「ゲーム障害」を疾病とすることには意見が分かれるようだが、WHOは「ギャンブル障害」と同じように、精神および行動の障害として認定する方向だ。
もちろん、「IT中毒」「インターネット依存」「SNS中毒」「スマホ依存」は、日本でも他人事ではない問題である。8月末、厚生労働省研究班の調査によって、「インターネット依存」が疑われる中高生が全国で推計93万人に上ることが報告された。これは前回2012年度に調査報告された51万人から、およそ倍近くに増えたことになる。原因としては、スマートフォンを使ったオンラインゲームやSNSなどの普及が背景にあると考えられている。
現代社会で、これほどまでにITが普及した要因のひとつとして挙げられるのが「便利さ」である。ITの進歩によって、人々は多くの「便利さ」を享受してきた。「IT中毒」「インターネット依存」「SNS中毒」「スマホ依存」などの問題は、その「便利さ」と裏腹の弊害である。IoTやAI、VR、ARといった最先端の技術が、今後さらに日常生活と密接に繋がっていく中、それが人々にどんな健康被害を与えうるのかを考えるのは、IT企業の企業倫理としてますます重要視されることになりそうだ。また、人々がITとの向き合い方を、根本的に見直すべき段階にきているのかもしれない。
■吉川敦
フリーライター。音楽と言葉が大好物。憧れの人物はアインシュタインとエルキュール・ポアロとアンディ・ウォーホル。