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ときど『情熱大陸』&梅原大吾『プロフェッショナル』 2番組を比較して見えた、プロゲーマーの真実

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 8月12日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』(TBS系)に、東大卒プロゲーマーの「ときど」が登場した。3月に放送された、梅原大吾出演の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)と合わせて考えると、より立体的なドラマが浮かび上がってくる内容だった。

 番組は昨年行われた世界最大級の格闘ゲーム大会「EVO2017」(8月・ラスベガス)、そのメインイベントである『ストリートファイターⅤ』部門でときどが優勝を飾ったシーンから始まる。その後も、「RAGEストリートファイターⅤ 白虎杯」、「Thaiger Uppercut 2018」、「Norcal Regionals 2018」、「Battle Arena Melbourne 10」と、大規模な大会で優勝を重ねる快進撃。そのなかで大きく取り上げられたのが、今年3月に行われた、プロゲーマーのパイオニア・梅原主催による格闘ゲームイベント『獣道弐』における、ときど VS 梅原の“因縁の対決”だった。時系列としては、『プロフェッショナル』の後日談である。

 ファンですし詰め状態のゲームセンター「デイトナ志木」での熱戦は、10試合先取の長期戦。梅原の姿に憧れ、後を追うようにしてプロになったときどは、5対10で敗北する。梅原側から見れば、ときどに負けを重ねてきたなかで、対策を行ないようやく掴んだ会心の勝利でもあった。これに対して、取材を行なった番組スタッフは「“たかがゲーム”と笑える空気ではなかった」と回顧しているが、ときどは悔しさに震え、涙さえ流していた。この試合に賞金はなかったが、ときどにとってはより切実で、大きなものがかかっていたのだ。

 番組では、ときどの「また出直してきます」というコメントが流れた。しかし、本当はこの前に「ゲームのなかでくらいは勝ちたかったんですけど」の一言があった。試合後に行われた、映画『リビング ザ ゲーム』の公開記念インタビューで、ときどは「僕のなかでは、一番大きい大会で優勝したとしても、そのプレイヤーが一番強いとは思わない。やはりどこまでいっても、最強は梅原大吾だろうな、と思ってしまう」と語っている。梅原がプロゲーマーという道を切り拓いてきた歴史、格闘ゲームに向き合ってきた膨大な時間と、苦悩や喜び、そして孤独ーーそれをおそらく、本人以外の誰よりも正確に知るときどは、だからこそ「ゲームのなかでくらいは勝ちたかった」のだ。裏を返せば、第一線のプロゲーマーたちは「ゲームで勝つ」以上の価値を求めて戦い続けているのだということがわかる。

 番組ではときどが「格闘技や武道から、格闘ゲームのヒントが得られるのではないか」と空手の稽古に通う様子、周辺視野を鍛える科学トレーニングにジム通いと、ストイックに自分を追い込む姿も伝えられる。33歳、一人暮らしの部屋には、寝具以外、ほとんど何もないーー。そうまでして、ときどはプレイヤーとしての自分を高め続ける。『プロフェッショナル』で描かれた梅原の姿にも言えることだが、プロゲーマーに対して「ゲームが上手いだけで、楽な道を歩いている」というイメージを持つ視聴者がいたとすれば、認識をあらためたに違いない。

 お祭り騒ぎのようにも見える、昨今の「eスポーツ」というムーブメント。しかし、その中心にいるときどは「プレイヤーたちは、自分たちが社会においてはマイノリティだってわかっている。勝手に持ち上げられている感が、僕の中ではすごい」と語る。「それだと、たぶんブームはすぐ去ってしまう。そうさせないために、僕らがやっているものが奥深いもので、歴史があって、すごい真剣にプレイしている変な人たちがいるんだな、ということは伝えていきたい」と、力を込めるのだ。

 さて、格ゲーファンが知るときどは基本的に、とても陽気で、前向きなパワーのある、楽しい存在だ。しかし同時に、常にシリアスな印象もつきまとう。海外で「マーダーフェイス」との異名が定着しているときどが、殺気を感じさせるほど真剣な表情で戦っているのは、対戦相手となる強豪プレイヤーであり、自分自身であり、それ以上に「世間の目」だということが、番組からも伝わってきた。取材スタッフから、「幾度となく繰り返されてきた質問だと思うが」との前置きのあと、「なぜ東大を出て、プロゲーマーになったのか」という質問を受けたときどは、やはりほんの少しだけ、苛立っているように見えた。「いや、順序が逆なんですよ。僕はもともとゲームが好きで、ゲームをやるために勉強しなければいけなかったので」というのが、彼の答えだ。

 梅原もときども、「たかがゲーム」という世間のイメージを乗り越えてきた。梅原はかつて、17歳にして格闘ゲーム世界一に輝いたことを、「恥ずかしい」とすら思っていたと言う。ときども同様に、「ゲームがいいものだと思えなくて、大会で優勝しても“褒めてくれるな”という思いがあった」と明かしている。プロとして業界を背負い、「ゲーマー」の地位を向上させてきた彼らの道は、これまでも、そして現在も、平坦とはほど遠い“獣道”だ。それでも、人生をかけるだけの悪魔的な魅力があるのが、対戦ゲームなのだろう。ときどの「東大卒」という肩書きが、一般にもわかりやすく、その確信を深めてくれる。期待値の高い安定を取ることもできたなかで、暗闇に飛び込むだけの引力がある世界なのだと。

      

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