サバイバルRPG『ザンキゼロ』制作陣が明かす“語りすぎない美学” 寺澤善徳&菅原隆行インタビュー

『ザンキゼロ』寺澤氏&菅原氏インタビュー

 “死ぬことがサバイバルにつながる”という斬新なゲーム性と、それぞれに重たい過去を抱えた個性的なキャラクター、深みのあるストーリーで、発売から話題になっているスパイク・チュンソフトの完全新作RPG『ザンキゼロ』。この8月には無料体験版の配信、またシビアなゲーム性を緩和&より快適なプレイを実現するアップデートも行い、さらに遊びやすくなっている。

 今回は、本作のプロデュースを手掛けた寺澤善徳氏、ゲームデザインを担当した菅原隆行氏という、『ダンガンロンパ』シリーズでも知られるキーパーソンふたりへのインタビューを敢行。本作が誕生した経緯から、ゲーム作りへのこだわり、続編の可能性も含めた今後の展望まで、じっくり話を聞いた。

【インタビューの最後に『ザンキゼロ』オリジナルグッズプレゼント企画あり】

左から菅原隆行氏・寺澤善徳氏

大人たちのドラマにしたかった

ーー「死を繰り返すことで生き残っていく」という斬新なゲームシステムで話題の『ザンキゼロ』ですが、お二人が携わっていた『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(2010年)の直後には企画が持ち上がっていたと聞きました。当時、どこまで構想されていたのでしょうか。

菅原隆行(以下、菅原):世界観としては“廃墟”と“サバイバル”という要素だけあって、プリミティブなゲームシステム中心の企画書でしたね。“クローン人間”のような要素はまだありませんでした。企画を練る間もなく、『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』のプロジェクトが立ち上がったので、会議にも通さず、そのままだいぶ寝かせていました(笑)。

寺澤善徳(以下、寺澤):本格的に企画書を作り直して、タイミングとしては『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』の制作と同じようなタイミングで、プロジェクトの承認が下りたのかな。

ーーその段階では、ストーリーもだいたい決まっていたのでしょうか?

菅原:そうですね。キャラクターの設定などは全然決まっていませんでしたが、「8人登場人物がいて、クローン人間で、廃墟の島で暮らしていて、マスコットキャラクターがいて」ということは話し合っていました。

ーーそこからキャラクターが練り上げられていったわけですね。七つの大罪になぞらえて、それぞれが罪やトラウマを抱えた個性的な面々です。

菅原:七つの大罪は裏テーマにしようかと思っていたんですが、結果的にはストーリーに絡めて出すことになりました。最初の段階で、高校生が主役になる『ダンガンロンパ』シリーズと違って、大人たちのドラマにしたいと考えたんですよね。主要キャラクターたちを25歳に設定したのも、ちょうど社会人生活に慣れてきて、ベテラン風を吹かせ始める頃かなと(笑)。そこから、サラリーマンがいて、お医者さんがいて……と、ゲーム的な面白みも含めて職業を考えて、そこから、七つの大罪になぞらえた過去の傷を考え、キャラクターを作り上げていったという感じです。

寺澤:キャラクターありきで、ストーリーからゲームシステムを構想した『ダンガンロンパ』とは、まったく逆のアプローチですね。『ザンキゼロ』はゲームシステムが先にあって、そこからキャラクターや世界観を構築していった作品なので。

ーーゲームシステムですが、何度死んでも生まれ変わる「エクステンド」、そして死の状況に応じてキャラクターが強化される「シガバネ」が鍵になりますね。スパイク・チュンソフトさんの作品だと『風来のシレン』に“死に方実績”のようなお楽しみ要素がありますが、本来プレイヤーにとって心理的にも、また攻略の面でも負荷になる「キャラクターの死」が戦略に幅を与える、というのが新鮮でした。

菅原:どんなRPGにも戦闘不能や死亡があって、それが魔法や教会でよみがえったりするのですが、その際にはただのマイナス要因でしかありません。『風来のシレン』は、ゲームオーバーを繰り返すなかでプレイヤーが成長していく作品。そうやって次に繋げられるものを、もう少しゲームの側で用意できないかと考えたんです。失敗しても、前に進めるように、という発想でできたのが、「シガバネ」システムですね。

ーーゲームをうまく進めるためには、“キャラクターに計画的に死んでもらう”必要性も生じます。しかし、“死”に慣れて麻痺してくると、物語上、“死とはどんなものなのか”ということがリマインドされ、我に返るような感覚もあって。プレイヤーの心理をどう動かすか、ということも重要だったのでは?

菅原:そうですね。やはり制作サイドとしては、最初は“死ぬのは嫌だな”と思ってほしくて、その後に“死を活かす”方法を模索してもらい、ゲーム終盤であらためて、死について考え直すような気持ちになってほしいと考えました。死を重ねながらも、キャラクターに愛着を持ってほしいと。

“ストレス”をゲームとして楽しむ

ーー「排泄が必要で、トイレが汚いとストレスが溜まる」というシステムが象徴的ですが、手間がかかるぶん、愛着がわきますね。賛否分かれるところかもしれませんが、プレイヤーに負荷がかかり、作業化しにくいゲームだと思いました。

菅原:サバイバルにはさまざまなストレスがありますよね。それとどう付き合っていくか、ということをゲームの面白さのひとつにしたい、と思って入れた要素なのですが、ぶっちゃけ、面倒くさいという人もいます。でも、僕は面倒だとは思わなくて、情緒として楽しんでしまっている。そこは、本当にひとそれぞれですね。楽しめる人も入れば、ゲームの中でまでトイレに行きたくないよ、という人もいると思うので(笑)。

寺澤;万人に合うシステムだとは思っていなくて、“合う人だったらすごく楽しめるだろうな”という認識でやっています。とはいえ、発売前後から、キャラクターが「漏らす」ということが非常にバズって、みんな喜んでくれましたね。実際プレイすると「面倒くさい」ということになるかもしれませんが、好きなキャラクターが“生きている感じ”というのは、魅力的じゃないですか。

ーー確かに、キャラクターたちがより生々しい存在になりますね。

寺澤:それで言うと、キャラクターの“老化”も、よりそこで生きているという感覚を強く感じてもらえる、いいシステムだったんじゃないかと思います。

菅原:細かい部分ですけど、ゲーム画面上のコックピットのキャラの顔も、あえて瞬きするようにしていたり。この手のゲームではあまりないことですが、これも生きている感を出したいなと思って実装したんです。

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