約13年の沈黙を破り再始動する、もう一つのロックマンーー『ロックマンX』シリーズの軌跡を辿る

豊富な成長要素とスピーディなアクションが光る新生『ロックマン』

 長らく眠りについていたこともあり、『ロックマンX』というゲームがどのような内容なのかを知らない世代も増えてしまっているだろう。簡単に紹介すると、ステージクリア型の横スクロールアクションゲームだ。八体のボス、そのどこからでも攻略を始められる「ステージセレクト」、ボスを倒すことで得られる「特殊武器」、それを特定のボスに使う事で大きなダメージを与えられる弱点の概念(属性相関)など、基本的な仕組みは本家ロックマンを踏襲している。

 本家ロックマンの詳細は、以下の記事を参照いただきたい。
≫30周年の今こそ『ロックマン』を始めてみよう 初心者にもオススメしたい、シリーズ入門ガイド

 この説明だけでは、登場人物と絵を変えただけのロックマンだが、最大の特色はプレイヤーキャラクターの成長要素。主人公のエックスはステージ内に隠された「パワーアップパーツ」を獲得することで攻撃力、防御力、機動力が強化されるようになっていて、これを手に入れるか手に入れないかで、その後の難易度が著しく変化する構成を持ち味としている。

▲体力の最大値も特定のアイテムを獲得すれば上げることができる。

 スピーディなアクションも魅力だ。パワーアップパーツの一つ、脚部を強化する「フットパーツ」獲得と同時に解禁される「ダッシュ(※初代『ロックマンX』のみ、以降のシリーズでは最初から使える)」を活用することで、華麗な立ち回りを演じていけるようになっている。

 壁に張り付き、そこからジャンプボタンを押すことで駆け上がる「壁蹴り(壁ジャンプ)」も象徴的なアクション。これによってステージ攻略、ボスとの戦闘も本家ロックマン以上にアグレッシブなものになっている。

 ストーリー性も強い。物語のあらましを描くオープニングステージがゲーム開始と同時に差し込まれたり、道中では会話イベントが何度か発生し、時にはライバルキャラクターが行く手を阻むなど、息つく暇をも与えない展開が繰り広げられる。シリーズでは突如、人類に牙を向いた最強のレプリロイドで、主人公エックスとゼロの上司でもあった「シグマ」との死闘が主に描かれるが、それもシリーズを重ねる度に真相に突っ込むようになっていき、次第に本家ロックマンシリーズで大暴れした”あの博士”の影がチラつくようになる。『ロックマンX4』以降にはアニメーションムービー、ボイスも実装され、より派手に描かれるようになっているのも見所だ。

▲櫻井孝宏、置鮎龍太郎、高山みなみ、麦人と言った声優陣が主要キャラクター達を好演。ちなみに主人公のエックスは他に伊藤健太郎(X4)、森久保祥太郎(X5~X7)が演じている。昨今は櫻井氏で固定

 このように土台こそ本家と一緒だが、様々な部分が豪華になっており、多彩な表現が可能になったゲーム機だからこそ生まれたロックマンとも言える作品に仕上がっている。「できることが増えたロックマン」とも言える。

シリーズでも高い人気を誇る『アニバーサリーコレクション1』の4作

 そんなこのシリーズの本編に当たる作品は全部で8作。アニバーサリーコレクションでは1に初代『ロックマンX』から『ロックマンX4』の4作が、2に『ロックマンX5』から『ロックマンX8』の4作が収録されている。

 『アニバーサリーコレクション1』の4作は、シリーズでも取り分け高い人気を誇る。シリーズの礎を作り上げ、今なお色褪せぬ完成度を誇る初代『ロックマンX』、シリーズ屈指の洗練された難易度を特色とする『ロックマンX2』、ゼロがプレイヤーキャラクターとして使えるようになり、成長要素がより細かくなった『ロックマンX3』、そしてムービーとボイスの導入で演出面の強化が図られ、キャラクター描写も深まった『ロックマンX4』。いずれも傑作だ。

 今からロックマンXシリーズを始めるのであれば、これら4作全てが入門編として最適だ。特に初代『ロックマンX』は後のシリーズの礎にもなった要素が豊富に加え、一つのアクションゲームとしても完成度が高い。

 以降のシリーズにも言えるが、ロックマンを名乗るだけあって難易度は高めだ。それは本シリーズにおいても変わらない。しかし、ボス戦では弱点の特殊武器で攻撃することで、相手を仰け反らせ、その後の動きをパターン化させられるようになるなど、本家ロックマン以上に弱点を突いた時に得られる恩恵が大きくなっている。なので、突破口を見出せばテンポ良く進めていける。アニバーサリーコレクションでは「かけだしハンターモード」というサポート機能が搭載されているので、これで気軽に楽しんでみるのも一興だろう。

 他の3作も素晴らしい作品に仕上がっているので、原点を楽しんだ後は流れるようにプレイしてみていただきたい。その中で特にお薦めと言われれば、筆者は2作目の『ロックマンX2』を挙げる。難易度のバランスが非常によい。また、「乱入ボス」なる新要素によって、プレイする度に異なる攻略ルートを辿れるなど、何周でも遊び込める作りになっている。

 シリーズでも人気の高い『ロックマンX4』もお薦めの一本だ。アニメーションムービー、ボイスによって更に力強くなったストーリーと演出はプレイする者を魅了する。ゲームとしてもエックスとゼロ、それぞれを主人公に据えた2部構成、近接攻撃主体で戦うゼロのアクションなど、やり応え十分。今やドラマ、映画、舞台で活躍する実力派女優となった仲間由紀恵がオープニング主題歌、エンディングテーマを歌っているのも、マニアなら要チェックだ。アニバーサリーコレクションにもバッチリ収録されているので、ご安心あれ。

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