約13年の沈黙を破り再始動する、もう一つのロックマンーー『ロックマンX』シリーズの軌跡を辿る

変革に挑んだ『アニバーサリーコレクション2』の4作

　対照的に『アニバーサリーコレクション2』の4作は賛否の分かれる作品揃い。この頃のシリーズの特徴が、ゲーム全体の変革に挑戦していることだ。象徴的なものを取り上げると、『ロックマンX5』では時間制限によるストーリー＆エンディング分岐の導入と身を低くしてその場に留まる「しゃがみ」のアクション、『ロックマンX6』は「ナイトメアウィルス」なる存在による大規模なステージ地形の変化とロールプレイングゲーム色の強い難易度への刷新、『ロックマンX7』では二人一組でステージを攻略するタッグ兼キャラクターチェンジシステムと3Dステージの実装、そして『ロックマンX8』では「クラッキング」なる相手の防御を崩すアクションの導入などなど。いずれも正統進化に徹した『アニバーサリーコレクション1』の4作とは真逆だ。

　『ロックマンX7』より、「アクセル」という第三のイレギュラーハンターがプレイヤーキャラクターとして参戦しているのも最大の見所である。そんな作りをしているのもあって、プレイヤーによっては拒否反応も出易いのだが、裏を返せば、いずれも独特の遊び心地を持つ作品に完成されている。

　特に『ロックマンX8』は、この四作の中では素直にお薦めできる作品だ。難易度がシリーズでも1、2を争うほど高く、ステージもかなり起伏が激しくなっているので、プレイするなら他のシリーズ作で肩慣らししてからが推奨されるのだが、先の通り、アニバーサリーコレクションには「かけだしハンターモード」がある。また、作中に「メタル」と呼ばれる換金アイテムが用意されていて、これを集めることで「ラボラトリー」と呼ばれる場所でステージ攻略のお供になってくれるサポートアイテムを買えるほか、エックスたちのステータス強化まで図ることができる。

　他にも「Janne Da Arc」による熱い主題歌、昨今では『ポプテピピック』、『ニンジャバットマン』で名を馳せる「神風動画」制作によるアニメーションムービー（※『ロックマンX7』でもムービーを担当している）、そしてシリーズのお約束を打ち破る驚愕の展開が用意されたストーリーと見所満載。『アニバーサリーコレクション1』の4作とは趣の異なる作りだが、「これはおもしろい！」と言える良作に仕上がっているので、是非、遊んでみていただきたい。

　他の3作も本家ロックマンシリーズとの繋がりにより迫るストーリー、素晴らしい音楽、過去4作とは異なる手触りに満ちたプレイスタイルと言った魅力がある。

　また『ロックマンX7』は、今回の『アニバーサリーコレクション2』で初の復刻を遂げる作品。オリジナル版の難点だったロード時間が大幅に短縮され、フレームレートも60で安定化するようになって遊び心地が大きく変わっているので、要チェックだ。

さらなるシリーズ作と豊富な関連グッズ

　駆け足で『アニバーサリーコレクション』に収録された8作の概要と魅力を紹介してきたが、シリーズはこれだけに留まらない。初代『ロックマンX』のリメイク兼リブート作の『イレギュラーハンターX』、ゲームボーイ向けに展開された外伝作『ロックマンX サイバーミッション』と『ロックマンX2 ソウルイレイザー』、そしてシリーズの中でも取り分け異質なロールプレイングゲームの『ロックマンX コマンドミッション』といった作品が存在する。

　これらの内、コマンドミッションは現在も復刻されていないが、サイバーミッションとソウルイレイザーはニンテンドー3DSのバーチャルコンソールで、イレギュラーハンターXはダウンロード版が今なお、PlayStation Storeで販売中。特にイレギュラーハンターXはオリジナル版にない「もしも」のシナリオを追体験できるなど、非常に手の込んだ傑作に仕上がっている。

　グッズも豊富で、特にバンダイ（現：バンダイナムコエンターテインメント）より販売されたカードシリーズ『ロックマンX メガミッション』は近年、「セレクションボックス」と称した復刻版がプレミアムバンダイにて商品化。ゲーム側のストーリーも強い影響を与えた岩本佳浩氏による漫画『ロックマンX』シリーズも、今なお復刻版を購入できる。作中で語られるのは『ロックマンX4』までの四作だが、原作以上にハードなストーリー、強く印象に残る漫画オリジナルのキャラクターたち（特に人魚のマーティ）、そしてクリスマスにちなんだ”とあるネタ”は、今なお色褪せぬ魅力が詰まっている。

　25周年を迎える今年、再始動を果たす『ロックマンX』。今回のアニバーサリーコレクションをきっかけに、今なお人気が絶えることのない、もう一つのロックマンの世界に触れてみよう。

■シェループ
新旧構わず、色んなゲームに手を伸ばしては積みゲーを増やし続ける人。コソコソとゲームライターとしても活動し始めた。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションが大好物。最近、『スプラトゥーン』のジャッジくんが気になって仕方がない。
Twitterアカウント（@shelloop）

■ロックマンX アニバーサリー コレクション 1+2 
7月25日 発売（PC版）
7月26日 発売（PS4/Nintendo Switch/Xbox One版）
価格：
PS4/Nintendo Switch 3,300円（税別、パッケージ版）
PS4/Nintendo Switch/PC 3,056円（税別、ダウンロード版）
Xbox One 3,080円（税別、ダウンロード版）
CEROレーティング：B（12才以上対象）
公式サイト：http://www.capcom.co.jp/rxac/