Netflix『クィア・アイ』はリアリティー番組への偏見を覆す 全世界に配信されたメッセージを読む

 オリジナル版は米ケーブル局Bravoで放送されていたが、現在進行形で、社会で起きていることをダイレクトに反映する内容と作り手のメッセージ性は、まさに配信向きと言えるだろう。クリエイティビティの自由度が高いことはいうまでもないが、Netflixのグローバル作品のように、全世界同時配信でタイムラグなく、世界各国の視聴者が本作を共有できることは番組にとって非常に重要だ。今の時代に社会問題や世界情勢を色濃く反映するアメリカのエンタメにおいて、本国とのタイムラグは、著しくその作品の価値を損なう行為と言っても過言ではない。

 そんなにややこしく考えずとも、ファブ5が賑やかしく楽しげにしている姿を眺めるだけでも十分に楽しい番組だ。何より各回のヒーローたちは、みんなファブ5と時間を過ごす中で、実にいい笑顔を見せてくれる。もう、それだけで胸がいっぱいになるし、こんなにも人は人に優しくされたり、褒められたり、存在を認めてもらえたり、そしてハグしてもらったりしたら嬉しい生き物なんだなあと、つくづく思う。日本には残念ながらハグという習慣はないけれど、ハグするような気持ちで他者に接することなら、今日からでもできるんじゃないのか。それだけで、いつもの日常と自分を取り巻く世界が、少しだけ変わるかもしれないと思わせてくれる力が『クィア・アイ』にはあるのだ。

■今 祥枝
映画・海外ドラマライター。「BAILA」「日経エンタテインメント!」「エクラ」「MY STAR CLUB」「シネマトゥデイ」など雑誌・ウェブで連載。ほかプレス作成、劇場用パンフレットにも寄稿。時々ラジオ、映像のお仕事。著書に「海外ドラマ10年史」(日経BP社)。Twitter

■関連情報
Netflixオリジナル作品『クィア・アイ』シーズン2
全世界同時オンラインストリーミング中

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