Instagramが動画配信アプリ『IGTV』をリリース 「縦長」の動画をテレビ感覚で見る新スタイルは定着するか
Instagramは先日、月間アクティブユーザー数が10億人に達したことを発表。同時に動画配信用の単独アプリ『IGTV』をローンチして話題となっている。この動画アプリ、なんと縦長の動画しか投稿できないという大胆な仕様となっている。
写真投稿アプリInstagramに「ストーリー」機能が追加されてから早2年が経った。何気ない日常を最大15秒の縦長動画で気軽に24時間だけシェアできる「ストーリー」は、Instagramに欠かせない大人気サービスとなった。Snapchatやこのストーリー機能のおかげで、ここ数年間でタテ型動画がはトレンドとなり日常にかなり浸透。タテ型動画フォーマットを広告で活用する企業や、縦長の動画で作品を作る映像クリエイターも今では珍しくなくなっている。「動画は横長」という常識がなくなりつつあるのだ。
そんなタテ型動画の流行の一翼を担ったInstagramが今回、タテ型動画専門の動画配信アプリ『IGTV』をリリースした。従来のストーリー機能は15秒までしか載せられなかったが、IGTVは最長60分の動画を投稿することが可能に。長編の動画や番組も配信できるようになったことで、Youtubeに対抗していくプラットフォームを目指しているようだ。チャンネルを作成し、そこに動画を投稿することでフォローしている人々が視聴できるという仕組みもYoutubeと似ている。
しかし、これまでの動画共有サイトと大きく異なる点は、IGTVは目的の動画を検索して見るのではなく、ダラダラとテレビを見るような感覚で動画を次々と楽しめることである。IGTVはアプリを起動すると、まずフォローしているユーザーが投稿した動画が流れ始める。そしてストーリー機能のように横にスワイプしていくと、次々とフォローしているチャンネルの最新動画を見ていくことができるのだ。これはまさにテレビを起動して、見たい番組が見つかるまでチャンネルを切り替える、いわゆるザッピングと同じ感覚である。何か見たい動画があるからアプリを起動するのではなく、何も考えずになんとなくIGTVを開いてスワイプしていれば、動画を楽しめるのだ。この新感覚の視聴方法で、Youtubeなどと差別化されているのがわかる。
「スマートフォンでもっと簡単に動画を探して見ることができるようになる」と、InstagramのCEO、Kevin Systromはサンフランシスコで開催したIGTVの発表イベントで語った。多くの動画共有アプリは、検索をしたり膨大な動画リストから動画を探し出すことを視聴者に要求してくるという。一方でテレビは電源をつければすぐに番組を見始めることができる。その簡単さに注目したようだ。IGTVもアプリを開いた瞬間に動画が流れ始める。くつろぎながら番組を垂れ流しにできる、人々の新しい日常の一部になるアプリとなりそうだ。
はたしてIGTVは狙い通り普及できるのか。最大の特徴である縦長の動画専門という点は、そこまで問題ではないはずだ。チャットアプリの『Snapchat』やライブ配信アプリ『Periscope』の登場で認知され始めたタテ型動画フォーマット。スマートフォンを普段どおり縦に持ったまま全画面表示で動画が見られるのは、理にかなっており、全画面表示のインパクトは写真・映像や広告と相性がいいのは間違いない。Instagramのストーリー機能登場以降も動画アプリ『TikTok』や動画メディア『Lute』など続々とタテ型の動画に焦点を当てた面白いサービスも増えていることから、タテ型で見るプラットフォームは常識になっていくだろう。