広がる“ARスポーツトレーニング”の可能性 ARヘッドセットの普及でスポーツシーンを席巻するか
現在、「ARって何?」と聞かれれば、多くのヒトは『ポケモンGO』のようなスマホを活用した最先端のグラフィック体験のことを思い浮かべるだろう。こうした理解はもちろん正しいのだが、実のところ、専用デバイスを活用したリッチなAR体験も存在するのだ。そして、そんなリッチなAR体験に関するデモ動画が公開された。
軌道がリアルなAR卓球
VRコンテンツ向けにハンド・トラッキング技術を提供する企業Leap Motionは6月20日、同社ブログにおいてARヘッドセット「North Star」の最新デモ動画を公開した。North Starとは、同社が開発中のAR専用デバイスである。ゴーグルのような形状をした同ヘッドセットは、Oculus RiftのようなVRヘッドセットとは異なり、メガネ型ディスプレイは透明なのでリアルな世界を見ることができる(下の画像参照)。このディスプレイにオブジェクトが表示されることによって、リアルな世界のなかでバーチャルなオブジェクトが存在するかのようなAR体験が実現する。
画像出典:Leap Motion「Project North Star is Now Open Source」
公開されたデモ動画は、North Starを使ってAR卓球をプレイする、というものだ(下の動画参照)。ピンポン玉をあてる部分がくり抜かれている卓球のラケットをもったユーザが、ディスプレイに表示されたバーチャルなピンポン玉を打ち返している様子がわかる。
同デモを開発したJohnathon Selstad氏によると、ピンポン玉と相手プレーヤーの動きはAIが物理方程式を使って演算することによって表現されている、とのこと。AIの設定を変えれば、ピンポン玉と相手プレーヤーの動きを変えることが可能である。それゆえ、卓球初心者向けにAIを調整したり、逆に一流卓球選手を超えるスーパー卓球プレイヤーのプレイを実行することもできるのだ。同氏は、AR卓球に使われた技術は未来のスポーツトレーニングにおいて応用されるだろう、とコメントしている。
なお、同ヘッドセットはまだ開発段階であるが、最終的には100ドル(約11,000円)という(ARヘッドセットにしては)破格の値段で販売することが目標となっている。
ARヘッドセット市場の現在地
North StarのようなARヘッドセットには、開発段階のものがほかにも多数ある。そうしたARヘッドセットのなかでもっとも有名なのが、MicrosoftのHoloLensだ。2016年に開発版がリリースされ、現在ではおもに企業が業務目的で試験導入している。YouTubeに公式チャンネルもあり、多数のデモ動画を視聴することができる。また、先週には次期モデルが今年中にリリースされると報じられた。次期モデルは、現行モデルより「大幅に値下げされる」ようだ。ちなみに、現行モデルは3,000ドル(約332,000円)である。
画像出典:HoloLens公式サイト
HoloLensに次いで有名なのが、Magic Leapである。同ヘッドセットは多額の資金調達に成功しながらも、その開発は徹底して秘密にされていたうえに遅延していたことから、リリースが不安視されることもあった。しかし、昨年12月に製品デザインを公開し、今年4月には開発版を一部のパートナーに出荷して、かつての不安を払拭している。今月14日には、ニュージーランド航空が同ヘッドセットを活用してニュージーランドの旅行体験に関する全く新しい体験コンテンツを開発すると発表し、今年後半のリリースを予定している。
画像出典:Magic Leap公式サイト
以上のふたつのARヘッドセットは、North Starとほぼ同様の機構となっている。それゆえ、これらのヘッドセットもARスポーツトレーニングに活用できるだろう。