黒田隆憲の楽器・機材キュレーション
ひなっち=日向秀和、今剛、Motörhead レミー、SUGIZO…“憧れの音”試せるエフェクター
ギターやアンプのメーカーとして世界的に知られるフェンダー社が、遂にエフェクトペダル業界に新規参入を果たした。
今回発売されたのは、バッファーペダル「LEVEL SET BUFFER」、コンプレッサーペダル「THE BENDS COMPRESSOR」、チューブオーバードライブサウンドを生成するペダル「SANTA ANA OVERDRIVE」、ディストーションサウンドを生成するペダル「PUGILIST DISTORTION」、リバーブペダル「MARINE LAYER REVERB」、そしてディレイペダル「MIRROR IMAGE DELAY」と、定番エフェクト6種。いずれもフェンダー社におけるサウンドエキスパートであり、今シリーズの製品開発における最高責任者Stan Coteyらにより、独自に設計された回路を搭載している。まずプロトタイプを製作し、多くのアーティストやプレイヤーからフィードバックをもらいながら納得がいくまで微調整を続けて完成させたという。
各ペダルの特徴については割愛するが、例えばインプットとアウトプットの位置を微妙にずらすことにより、エフェクター同士をできる限り密着させられるような工夫が施されていたり(そうすることで、エフェクターボードという限られた空間で省スペース化をはかれる)、ツマミやフットスイッチにはLEDが搭載され、暗いステージでも操作しやすくなっていたり、エフェクターをひっくり返さなくても電池の交換がすばやく簡単に行えるようになっていたりと、使い手の声を反映した“痒い所に手が届く”仕様になっているのだ。
フェンダーは、今後もエフェクターの種類を増やしていくというから、ギターのようにアーティストとコラボした「シグネチャーモデル」の登場にも期待せずにはいられない。というわけで、今回は最近発表されたエフェクターペダルの中から、アーティストの「シグネチャーモデル」を紹介していこう。
先日、通算10枚目のニューアルバム『Future Soundtrack』を発表したばかりのストレイテナーや、Nothing’s Carved In Stoneなどで活躍するベーシスト、“ひなっち”こと日向秀和のシグネチャーエフェクター「BRICK DRIVE BDI-1HH “極”」が、エフェクターやケーブルのメーカーとして知られるProvidenceより今年6月にリリースされる。こちらはベースドライブプリアンプ+VITALIZER B & D.I.「BRICK DRIVE BDI-1」のスペシャルバージョン。白い筐体に日向のトレードマークである「極」の文字を大きく配置し、ツマミの下の文字を赤くした。入出力ジャックは酸化に強い金メッキ接点を採用し、経年による音質変化や劣化を最小限に抑えている。
最大の特徴は、「Vitalizer B」と呼ばれるバッファー回路を搭載していること。これにより、輪郭がぼやけやすい低音の輪郭をしっかりと出し、引き締まったクリアなサウンドを出力する。しかも、VZ THRU アウトジャックにもこの信号が出力されるため、ローインピーダンス化された信号をパラレルアウトし他のペダルやチューナーに送りこむことができるのだ。
また、裏蓋には日向による直筆サインも入っている。彼を目指すベーシストは要チェックだ。
続いて紹介するのは、同じくProvidenceから、ブランド20周年とVLC-1の累計5000台突破を記念して製作された、今剛のシグネチャーエフェクター「VELVET COMP VLC-1」。
今剛といえば、70年代末に和製フュージョンバンドの草分け的存在である、PARACHUTEを林立夫や松原正樹らとともに結成し、現在はスタジオミュージシャンとして数多くのレコーディングに参加するなど、名演を残してきた敏腕ギタリストだ。彼の足下に、必ずと言っていいほど存在し続けるコンプレッサーペダル「VELVET COMP VLC-1」を忠実に再現したのが今モデルである。名前の通り、ベルベットのような滑らかなコンプレッションが特徴で、シグネチャーモデルの開発に立ち合った今本人も、「もともとVLC-1は音がキレイで気に入っているんだけど、このVLC-1TKはさらに音がクリアになったし、本当に生々しいというか、リアルなサウンドがグッと迫ってくる感じが凄くいいね」と太鼓判を押している。
こちらも「BRICK DRIVE BDI-1HH “極”」と同様、本体裏蓋に今剛本人の直筆サイン入りだ。